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逢魔が時の約束〜約束の続きを、夏の終わりに〜  作者: PeDaLu


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【第五話】買い物

「うーん」

 僕はテーブルにさっき文香が持ってきた封筒を置いて唸っていた。開けるなと言われると気になる。見なくても良い、と言うのは別にみても構わない、なのか?逆にこうして気になるように仕向けているのか?

「見たくないといえば嘘になるが。でも中身は見なくても良い。なんだろう」

 そのうち、文香からあの時の封筒を開けてみて、とか言われるのだろうか。迷ったけども、その日は開けずに眠りについた。


 翌朝、テーブルを見ると昨日の封筒が置いてあって、夢じゃないと確認できた。ということは、僕の家に真冬が来ていた、というのを知っているという事でもある。

「言い訳……」

 とここまで言ってからため息を吐いた。

「まぁ、することもないか。真冬も一生懸命って事で」

 その一生懸命に応える事が出来るのか分からんが。と、例の三ヶ月というのは文香も聞いているのだろうか。文香のことだから三ヶ月の期間限定であれば譲るとか言い始めそうだ。でもそうなると僕の意思とは、となるしな。僕は頭を掻いてから大学に行く準備を進めた。


「あれ」

「ああ、健斗。今日も真冬ちゃんに会いに来たの?」

「そういう訳じゃ……。いや、そうだな。ちょっと心配になってな」

「何か心配な事なんてあるの?」

 三ヶ月。期限を切っていることについてマスターは知っているのか。短期間だから契約解除なんて言われないだろうか。そんなことを考えてしまったのだ。しかし、文香も居るこの場でその話をするのはあまりよろしくはない。

「いや、ちゃんと働いてるかなって思ってさ」

「大丈夫だと思うわよ」

 そう言ってカウンター席から店の中に目を移すと、結構な客が入っているのが見えた。いつもは来なさそうな一団も居る。真冬に話しかけたりしてるから、あれは真冬目当てだな。と一目で分かったり。

「真冬ちゃん、人気だよな。保護者としては心配か?」

「マスター、僕は保護者じゃないですよ」

「でもこっちにいる間はそうなんだろ?」

 間、今マスターはそう言った。期間限定と聞いているのだろうか。


「あれ?健斗」

「ああ。今日は何時までだ?」

「十五時まで入って貰ってるよ」

 真冬に聞いたのだがマスターから返事が帰ってきた。

「その後に嫁と買い物の予定だ」

「そうなの?」

「うん。こっちで暮らすものが何も無いから」

「そうだな」

 マスターの奥さんと一緒なら安心かな。と、返事をしたら文香からこんな一言が。

「じゃあ、私は健斗とデートに行こうかな」

「なんでそうなるんだよ」

「冗談よ。ちょっと買い物に付き合って欲しいだけかな」

 何の買い物か分からなかったけど、いつものことだし断る理由も無いので了承したのだが……。


「なんでこんなところに来るんだよ」

 連れて来られたのは下着売り場。まさか真冬に買って帰るとかそういうのではないだろうな。この前に買ってたし間に合っているのでは。

「別に」

 何故かと問いただしでも帰ってくるのはその言葉。仕方ないので店の外で待っていたら、店の中から文香に手招きされた。来いと言うことなんだろうけど、男が女性ものの下着売り場に入るのはどうなんだ、と思っていたら他のカップルが入って行ったのを見て、今なら行けるか?と手招きの方向に歩いて行った。

「ね、これ似合うと思う?」

「分からん。そもそも下着に似合うとかあるのか?」

「もう。味気ないんだから。可愛いとかそういうのはあるでしょ。ね、こっちのフリルついてるのと、こっちのシンプルなやつ、どっちが良いと思う?」

 これは決めないと解放して貰えないな、と感じて直感的にフリルの付いた方が指差した。すると文香は満足したのか店の中に戻っていった。


「お待たせ」

「ああ。でもなんで僕に選ばせたんだ?最後の決め手みたいなやつ?」

「そんな感じ。下着って適当になっちゃうと買ってから可愛くないなぁ、ってなりがちだから。第三者の意見って大事」

「お店の人には聞かなかったの?」

「あー……。聞きはしたんだけど、値段の高いものを勧められて、なんか違うなぁって」

 値段の高い方か。いくら位なのか気になったけども、それを聞くのは無粋というもの。そして文香に他になにか買い物はあるのかを聞いてみた。

「次は健斗の下着かな」

「ええ……。なんでそうなるの……」

「この前に家に行った時に干してたでしょ。あんなヨレヨレのやつ、買い替えなよ」

 細かいところまで見てるんだな……。確かにヨレヨレなのは間違いない。でも女子に下着を選んで貰うのはどうなんだ。と、思いながらもユニフロに足を運んで下着コーナーへ。男性下着のコーナーは女性も違和感なく入れる気がする。旦那の下着を奥さんが買う的な感じなんだろうか。

「健斗はブリーフ、ボクサー、トランクスのどれ派?」

「パンツに派閥なんてあるのか。個人的にはトランクスだな」

「そう?たまにはボクサーなんてどう?」

 そう言ってボクサーパンツを棚のフックから取り出す。まぁ、悪くはないんだけど、トランクスの開放感の方が好みなんだよな。なんて思っていたけども、確かに食わず嫌いはどうなのか、ということもあって文香が選んだボクサーパンツも買ってみた。


「買い物ってここまでなのか?」

 下着を買いに来ただけ。何か味気ないというかなんというか。

「ううん。もうちょっと。あー。でもなぁ……。うーん……。やっぱりいいや。私だけで選ぶわ」

「そうか?」

 普通の服なら一緒に選んでも良いと思っていたから少々拍子抜けしたが、文香が別れの言葉を口にしたので、それに従って解散となった。


「今日の買い物はなんだったんだ……」

 家に買ってからボクサーパンツを開けながら呟く。そしてAIにその心情について聞いてみたらなんか恥ずかしくなってしまった。

「私はあなたのものだから、か」

 それからとりあえずお風呂に入って買ってきたボクサーパンツを早速履いてみたのだが、ちょっと窮屈に感じた。が、何が都は言わないが固定されて動きやすい気もしないではない。運動するときはこっちの方が良いかもしれないな、などと冷静に考えてしまった。

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