表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/9

末っ子の一声

 どこかの国の言葉に、「孤食」というという言葉があるらしい。意味は、「孤独な、食事」。

 まさに今の私だろう。


 入れ違いすれ違い。


 夜も各々の部屋の明かりはついている。だが、部屋の主人同士が話すことはない。


 無論、家の雰囲気は張り詰める一方だった。

 とある休日、朝食でミリーが叫んだ。


「今日は、全員私と遊んで!!」


 カイトが困った顔をした。


「ミリー、兄さん今日勉強しようと思ってたんだけど…」

「いつもでしょ!!!!」


 絶句する兄さんに構わずミリーが言い募る。


「お父様もお母様もいつもお仕事!!リゼ姉様はお稽古!!遊んでくれるのはルイ兄だけ!でもルイ兄も寂しそう!!」

「ミリー、俺寂しくないよ」

「うそよ!!!」


 顔色を悪くしたお父様が口を開いた。


「すまないミリー、仕事が、」

「前も言ってた!!ねぇ、いつ?お仕事、いつ終わるの?」


 うっと両親が言葉に詰まる。ぼろぼろとミリーが泣き出した。


「お父さん!遊んで!今日くらい、ミリーと遊んで!」


 この子はまだ6歳だ。遊びたい盛りなのに。いっぱい遊んでいたのに。


「父さん、母さん」


 そう声をかけるとびくりと肩を震わせた。

 久々に、顔をまじまじと見たかもしれない。2人とも随分とやつれていた。


「…悪かった」

「えぇ。悪かったわね」


「カイ。今日は休め。クマが酷いぞ。リゼもだ。父さんから先生に頼んでおく」


 え。


「……寂しい思いをさせて、悪かった」


 父さん。

 隣のルイスが俯いて震え出した。


 がたっっ!!


「ふっ、ふっざけんなよクソ親父!寂しくなんて、ない、し!」


 ぼろぼろとルイスが泣き出した。兄さんが便乗する。


「そうだぞーークソ親父!説明もそこそこにこんな状態にしやがって!!在学中に平民から貴族とかどんだけ大変だと思ってんだよ!!人間関係作り直しじゃねえかふざけんな!!平民のやつは線引いてくるし貴族のやつは見下してくる。俺は見せ物でも人形でもない!責任取りやがれ!」


 カイト兄さんの視線が私に向く。


「おいリゼ。今のうちに言っとけ!!」


 ぐっと手を握った。


「……教育」


「え?」


「淑女教育!!!なんですかあれ。突然明日からやるとか言い出して!受けるのは私です。勝手に決めないでください!」


 濁流のように言葉が溢れてくる。


「大体、なんで親だからって様付けしないといけないのよ!様付けされる立場ならもっと、」


 言葉が詰まる。


「もっと!ちゃんと周りを見てください!」


 父から目線を外し、母を見る。


「母さんも!いつもは一緒にお茶していたのに最近は一度もしてくださらない!!」


 母の目が見開かれる。


「悪、」


「悪いと思うなら今流行りのお菓子を大量に買ってきてください!それから本もたくさん欲しいです。ミリーに絵本も読んであげてくださいね」


 にっこりと微笑む。母の顔が崩れた。


「えぇ、えぇ。そうね。そうしましょう」


 もう一度父を見る。


「父さん!淑女教育は控えめに言ってクソです。面白くないわけではありません。強制されるのが嫌なのです!今後も続けはしますが、他は私の好きなようにいたします。黙っててください」


 ぜいぜいと息をする。

 ポツリと父がつぶやいた。


「大きく、なったな」


 涙目の母がこくりと頷いた。


⭐︎


 その夜、トントンと部屋の扉が叩かれた。


「どうぞ」


 ミリーがひょっこりと顔を出した。


「あらどうしたの?」

「これ読んでほしいの」

「トルム物語…」


 懐かしい。王子と姫の恋物語だ。


「リゼ姉様」

「なぁに?」

「こんやく?するんでしょ?」

「えぇ」

「どんな人かな、王子様みたいな人かな!」

「さぁ。ねぇミリー。私を好きになってくれる人なんているのかしら」

「姉様は素敵よ?きらきらして、頑張ってるもん。こんにゃくしゃさまも、めろめろになっちゃうかも!」

「婚約者、ね」


 そんな物語みたいなこと起こらないわ、と思ったが胸に留めた。せっかくだし試してみるのもいいかもしれない。


「えぇ、そうね。私を見てくれる人だと、いいな」


⭐︎


 数日後、グランデン家から顔合わせの日取りを決める手紙が届いた。

読んでいただきありがとうございました!

ブックマーク、評価、感想等、大変励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ