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第五十一話:壊れかけた朝

すべてが壊れたはずの世界。

それでも――朝は、来る。

これは、ラフリが“二度目の世界”で最初に迎える朝。

そして、彼が初めて「一人ではない」と知る物語。

“……ッ”

ラフリは目を覚ました。

息が荒い。

喉が焼けるように痛い。

胸が締め付けられる。

「……はぁ……はぁ……」

視界に映るのは、見慣れた天井。

自分の部屋。

朝の光。

――戻ってきた。

その事実を理解するより先に。

“あの光景”が、脳裏を焼いた。

ナカムラ。

倒れる音。

鈍い衝撃。

赤。

広がる血。

クラスメイトの視線。

恐怖。

拒絶。

そして――

ユナ。

震える目。

自分を見るその表情。

恐怖。

「……やめろ……」

ラフリは頭を押さえた。

「……思い出すな……」

でも。

止まらない。

――ローズ。

廊下の奥。

静かに立っていた。

そして。

ほんのわずかに。

笑った。

まるで。

「成功した」とでも言うように。

「……あいつ……」

ラフリの指が震える。

「危ない……」

喉が乾く。

心臓がうるさい。

呼吸が浅い。

「……これは……夢じゃない」

小さく呟く。

「夢なんかじゃ……ない」

コンコン。

ドアが叩かれる。

ラフリの体がビクッと震えた。

「Furi oniichan?」

柔らかい声。

聞き慣れた声。

「……ユメ」

ドアが開く。

小さな足音。

部屋に入ってくる少女。

ユメ。

「大丈夫?」

ラフリを見て、少し心配そうに首を傾げる。

ラフリはしばらく言葉を失った。

(……どうする)

(話すか……?)

(でも……)

「……夢を見た」

ラフリは口を開いた。

ユメは瞬きをする。

「夢?」

「……俺が」

一瞬、言葉が詰まる。

「……人を殺す夢」

ユメは少し考えて――

「え?」

間。

「Furi oniichan……」

「ついに悪役デビュー?」

「違う!!」

思わず声が大きくなる。

「そういうのじゃない!」

ユメは少し驚いた顔をして。

そして、くすっと笑った。

「ごめんごめん」

「でも、Furi oniichanなら似合うかも」

「似合わないから!」

少しだけ。

空気が緩む。

でも。

ラフリの表情は、すぐに沈んだ。

「……冗談じゃないんだ」

小さく呟く。

「……あまりにも、リアルすぎる」

「……痛みも、匂いも、全部」

ユメの表情が変わる。

「……そっか」

ゆっくり近づく。

ラフリの隣に座る。

「……怖かった?」

ラフリは少しだけ迷って。

小さく頷いた。

「……ユナが」

声が震える。

「……俺を怖がってた」

沈黙。

ユメは何も言わない。

ただ――

そっと、ラフリの手を握った。

「……あったかい」

ラフリが小さく呟く。

ユメは少しだけ笑った。

「でしょ」

「Furi oniichan」

優しく言う。

「それ、ただの夢じゃないかもしれないよ」

ラフリの目が動く。

「……どういう意味だ」

ユメは少し考えて。

「うーん……」

「うまく言えないけど」

「たぶんそれ」

「一人で抱えたらダメなやつ」

「……は?」

ラフリは少し間の抜けた声を出す。

ユメは真面目な顔で言う。

「だって」

「Furi oniichan、顔すごいことになってる」

「どんな顔だよ」

「壊れそうな顔」

「それはちょっと傷つく」

ユメは少しだけ笑って。

でも、すぐに真剣な目に戻る。

「ねえ」

「なんでも一人でやろうとしてない?」

ラフリは言葉を失う。

(……一人で)

(そうだ)

(ずっと……一人でやろうとしてた)

「……でも」

ラフリは小さく言う。

「俺がやらないと」

ユメは首を横に振る。

「違う」

「一人じゃ無理なこともあるよ」

静かな声。

でも。

確かに響いた。

「Furi oniichanは」

「ヒーローじゃない」

「……」

「でも」

少しだけ笑う。

「お兄ちゃん」

ラフリは少し目を逸らした。

「……それ、どういうフォローだよ」

「ちゃんとしたフォロー」

「むしろ格上げ」

「そうか?」

「うん」

少しだけ。

空気が軽くなる。

ユメはラフリの手をぎゅっと握る。

「だから」

「頼っていいよ」

ラフリは黙る。

(……頼る)

(俺が……?)

ゆっくり。

息を吐く。

「……もし」

ラフリは言う。

「……また同じことが起きるなら」

「俺、一人じゃ無理だ」

ユメはすぐに頷いた。

「うん」

「だから」

ラフリは小さく言う。

「……手伝ってくれ」

ユメは笑った。

明るく。

まっすぐに。

「もちろん」

「Furi oniichan」

「私、結構頼りになるよ?」

「……ちょっと不安だな」

「ひどい!」

二人の間に、小さな笑いが生まれる。

でも。

その裏で。

ラフリの目は、まだ揺れていた。

(……ローズ)

(あいつは、また動く)

その夜。

学院の校舎。

誰もいない廊下。

一人の少女が立っていた。

ローズ。

「……おかしいですね」

小さく呟く。

思い出す。

夢。

何度も見た光景。

ラフリが壊れる未来。

ユナが離れていく未来。

「でも――」

目を細める。

「今回のラフリは……違う」

わずかなズレ。

違和感。

普通なら見逃す。

でも。

彼女は見逃さない。

「まるで……未来を知っているみたい」

自分で言って。

小さく笑う。

「……ありえない」

でも。

その目は笑っていなかった。

「ですが」

一歩踏み出す。

「確認する価値はありますね」

視線は――

ラフリの教室へ。

「ラフリ」

優しく名前を呼ぶ。

「あなたは」

「どこまで知っているんでしょう?」

夜空に。

小さなヒビが走った。

「……次は」

ローズは微笑む。

「少しだけ、試してみましょうか」

静かに。

笑った。

ここから物語は、二度目の世界へと進んでいきます。

ラフリは初めて「誰かに頼る」という選択をしました。

ですが――

世界はそれを許すほど、優しくはありません。

もしよければ、

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・考察

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などで応援していただけると嬉しいです。

次回更新は、

毎日19:00〜19:10ごろを予定しています。

また、あなたに会えるのを楽しみにしています。

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