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第四十九話:取り返せない瞬間

放課後。

授業が終わったばかりの教室。

学生たちは帰る準備をしていた。

椅子の音。

鞄のチャック。

小さな会話。

いつも通りの放課後。

でも。

その中に――

取り返せない瞬間が混ざっていた。

ラフリは席に座っていた。

窓の外を見ている。

夕方の光が教室に差し込んでいた。

ユナは前の席で鞄をまとめている。

ミサキたちは後ろで話している。

ナカムラは少し離れた席で立っていた。

彼の手には――

一本のペン。

ユナのものだった。

ナカムラは小さく息を吐く。

「……やばい」

数日前。

授業中にユナから借りたペン。

そのまま忘れてしまっていた。

今日返そうと思っていた。

でも。

タイミングを逃した。

ナカムラは頭をかく。

「なんで今まで忘れてたんだ俺……」

周りを見る。

ラフリは窓の外を見ている。

ミサキたちは話している。

ユナはもう帰る準備をしている。

ナカムラは少し迷う。

「……今しかないよな」

彼はユナの方へ歩いた。

ユナは気づいて振り向く。

「ナカムラ?」

ナカムラは少し照れたように笑う。

「これ」

ペンを差し出す。

「前借りたやつ」

ユナは少し驚く。

「あ、そうだ」

「ありがとう」

ユナはペンを受け取ろうとした。

その時。

ナカムラの足が机にぶつかった。

小さく体勢が崩れる。

ユナの腕に触れる。

ユナの体が少し後ろへよろける。

バッグが机から落ちる。

ガタン。

その瞬間。

ラフリの目が動いた。

見えたのは――

ナカムラの手。

ユナの腕。

よろける体。

頭の中で一つの言葉が浮かぶ。

攻撃。

耳の奥で残響。

『……また』

『守れ』

ラフリは立ち上がった。

椅子が大きな音を立てる。

ガタン!!

教室の空気が止まる。

ナカムラが振り向く。

「ラフリ?」

その瞬間。

ラフリの手が机の上の物を掴んだ。

金属の定規。

次の瞬間。

ラフリは走っていた。

「触るな!!!」

ナカムラの目が見開く。

「え?」

振り下ろされた。

ゴンッ!!

鈍い音。

教室が凍る。

ナカムラの体が大きく揺れた。

ミサキが叫ぶ。

「え……?」

ラフリは止まらない。

もう一度。

ガンッ!!

ナカムラが倒れる。

床に落ちる。

ユナが叫ぶ。

「ラフリ!!」

でも。

ラフリの耳には届かない。

ラフリの目には――

別の光景が見えていた。

血。

悲鳴。

壊れた世界。

頭の中の残響。

『守れ』

『守れ』

『守れ』

ラフリの手が震える。

定規が床に落ちた。

カラン。

教室は静まり返っていた。

ナカムラは動かない。

ミサキが後ろに下がる。

ユイが震える声で言う。

「ラフリ……?」

ナツキは泣き始めた。

「なに……これ……」

ユナは立ち尽くしていた。

信じられない目で。

ラフリを見ている。

ラフリは周りを見た。

全員が。

自分を見ている。

恐怖の目。

その時。

ラフリはやっと気づいた。

床。

ナカムラ。

動かない体。

ラフリの手。

血。

ラフリの呼吸が止まる。

「……え」

声が震える。

「なんで」

ユナの声。

震えている。

「ラフリ……」

ラフリはユナを見る。

ユナの目には――

恐怖。

ラフリの心が崩れる音がした。

教室の後ろ。

ローズは静かに立っていた。

その光景を見ている。

誰も彼女を見ていない。

ローズは小さく呟く。

「終わりましたね」

教室は混乱している。

泣き声。

叫び声。

足音。

でも。

ローズだけが静かだった。

「人は」

小さく笑う。

「簡単に壊れる」

視線はラフリへ。

「あと一つ」

「最後の一歩」

遠くの屋上。

ミヤコは空を見ていた。

空のヒビは。

大きく広がっていた。

ミヤコは楽しそうに言う。

「ラフリ」

「次は君の番だよ」。

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