第四十七話:守るという檻
放課後。
教室にはまだ何人かの学生が残っていた。
窓の外は少し暗くなり始めている。
いつもの帰りの時間。
でも。
ラフリの胸の奥では――
落ち着かない感覚が広がっていた。
ラフリは教室の窓際に立っていた。
外を見ている。
校庭には学生たちが歩いている。
笑い声も聞こえる。
でも。
ラフリの視線はその中の一人に向いていた。
ユナ。
ユナは教室の入り口でミサキたちと話している。
ミサキ。
ユイ。
ナツキ。
三人は楽しそうに笑っている。
ユナも笑っている。
その光景を見て。
ラフリの胸の奥がざわついた。
その時。
耳の奥で残響。
『……近すぎる』
ラフリの目が細くなる。
『危ない』
声はすぐ消えた。
でも。
その感覚は残る。
ユナがミサキたちと別れ、ラフリの方へ歩いてきた。
「ラフリ」
ユナは少し疲れたように笑う。
「帰ろうか」
ラフリは数秒黙っていた。
そして言った。
「ユナ」
ユナは首を傾げる。
「なに?」
ラフリは教室の後ろを見る。
ミサキたちがまだ話している。
そして言う。
「もうあいつらと関わるな」
ユナは一瞬意味が分からなかった。
「……え?」
ラフリは続ける。
「ミサキも」
「ナカムラも」
「タカハシも」
「全員だ」
ユナの表情が固まる。
「どうして?」
ラフリの声は低い。
「危ない」
ユナは困った顔をする。
「何が?」
ラフリは答えない。
ただ言う。
「近づくな」
ユナは少し強い声になる。
「ラフリ」
ラフリは続ける。
「放課後も」
「一人で行動するな」
「俺と一緒にいろ」
ユナは黙った。
数秒。
静かな空気。
そしてユナは言う。
「それって」
少し悲しそうな声。
「守ってるつもり?」
ラフリはすぐ答える。
「ああ」
ユナはゆっくり首を振った。
「違うよ」
ラフリの眉が動く。
ユナは言う。
「それは」
少し間を置く。
「私のためじゃない」
ラフリの胸が止まる。
ユナは続ける。
「ラフリのためだよ」
沈黙。
ラフリは言葉を失う。
ユナは小さく言う。
「私は大丈夫」
「そんなに心配しなくても」
ラフリの手が少し震える。
耳の奥で。
残響。
『……否定された』
ラフリはユナを見る。
でも。
言葉が出ない。
ユナは静かに言った。
「ラフリ」
「少し落ち着いた方がいいよ」
そして。
教室を出ていった。
ラフリはその背中を見ていた。
胸の奥が重い。
苦しい。
頭の中で言葉が響く。
ラフリのため。
その言葉が何度も繰り返される。
夕方。
教室にはもう誰もいない。
ラフリは一人で座っていた。
机を見つめている。
その時。
廊下から声が聞こえた。
「最近ラフリ怖いよね」
ミサキの声。
「うん」
ユイが答える。
「ユナ大丈夫かな」
足音が遠ざかる。
ラフリは動かなかった。
その時。
教室のドアの外。
ローズが静かに立っていた。
そして小さく呟く。
「綺麗ですね」
視線は教室の中。
ラフリへ。
「守ろうとするほど」
「孤独になる」
ローズは静かに笑った。
遠くの屋上。
ミヤコが空を見ている。
空のヒビは。
また少し広がっていた。
ミヤコは楽しそうに言う。
「ラフリ」
「あと三話」
「君の世界は壊れる」。




