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第四十四話:歪んだ視線

午後の授業。

教室は静かだった。

先生の声だけが黒板の前から聞こえる。

学生たちはノートを取り、時々小さくあくびをする。

いつも通りの授業。

いつも通りの時間。

でも。

人の視線というものは――

気づかないうちに。

少しずつ変わっていく。

ラフリはノートを書いていた。

黒板の数式を写している。

でも。

意識の一部は教室の中に向いていた。

ユナは隣で真剣にノートを取っている。

その姿を見て。

ラフリは少し安心した。

その時。

後ろの席で椅子の音がした。

ナカムラが立ち上がる。

「先生」

「消しゴム落としました」

先生は頷く。

「拾っていいぞ」

ナカムラは前へ歩く。

ラフリの席の横を通る。

そして。

ユナの机の横でしゃがんだ。

消しゴムを拾う。

ただそれだけ。

普通の動き。

でも。

ラフリの視線が鋭くなる。

近い。

ユナとの距離。

腕の動き。

全部が見える。

その時。

ナカムラの手が少し机に触れた。

ユナのノートが少しずれる。

ラフリの体が先に動いた。

「触るな」

小さな声。

でも。

教室の静けさの中では。

はっきり聞こえた。

ナカムラが驚いて顔を上げる。

「え?」

ラフリはナカムラを見ていた。

視線が鋭い。

ナカムラは困った顔をする。

「いや、ノートずれただけだろ」

周りの学生が少し振り向いた。

ミサキ。

ユイ。

ナツキ。

みんな見ている。

ユナは少し驚いた顔でラフリを見る。

「ラフリ?」

ラフリは気づいた。

教室の視線。

先生もこちらを見ている。

ラフリは小さく息を吐いた。

「……悪い」

ナカムラは首をかいた。

「別にいいけど」

でも。

教室の空気は少し変わっていた。

ナカムラが席へ戻る。

ミサキが小さく言う。

「今の見た?」

ユイが頷く。

「うん」

ナツキが小さく呟く。

「やっぱり」

「ちょっと変だよね」

その会話は。

とても小さい。

でも。

確実に広がる。

その頃。

ローズは窓際の席でノートを見ていた。

そして静かに言う。

「ラフリは」

近くのサクラが聞く。

「ん?」

ローズは少し悲しそうに笑った。

「最近」

「少し余裕がないのかもしれませんね」

サクラは頷いた。

「確かに」

「さっき怖かった」

ローズは首を振る。

「きっと」

「誰かを守ろうとしてるんですよ」

その言葉は。

とても優しく聞こえる。

でも。

同時に。

ラフリの印象を作っていく。

危うい人。

その頃。

ラフリはノートを閉じていた。

胸の奥が重い。

周りの視線。

さっきの空気。

全部が頭の中に残っている。

その時。

耳の奥で。

残響。

『……見てる』

ラフリの目が動く。

『全員』

『敵になる』

声は消えた。

ラフリはゆっくり教室を見渡す。

タカハシ。

ミサキ。

ナツキ。

ナカムラ。

みんな普通に座っている。

でも。

ラフリの心の中では。

疑いが少しずつ広がっていた。

授業が終わる。

学生たちは教室を出ていく。

廊下。

ミサキが言う。

「さっきのラフリさ」

ユイが頷く。

「ナカムラに怒ってたやつ?」

ナツキが小さく言う。

「ちょっと怖かった」

サクラも言う。

「ユナ大丈夫かな」

その会話を。

少し離れた場所で。

ローズが聞いていた。

彼女は静かに微笑む。

「いい流れですね」

視線はラフリへ。

「もう少しで」

「誰もあなたを信じなくなります」

遠くの屋上。

ミヤコが空を見上げていた。

空のヒビは。

また少し広がっている。

ミヤコは楽しそうに言う。

「ラフリ」

「壊れる準備は」

「できてる?」

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