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第四十二話:見えない距離

昼休み。

教室はいつもより少し静かだった。

学生たちはそれぞれグループを作り、昼食を食べている。

笑い声もある。

会話もある。

でも。

ラフリには――

少しだけ違って見えた。

ラフリは席に座りながらパンを食べていた。

隣ではユナが弁当を開いている。

「ラフリ」

ユナが言う。

「今日の授業さ」

「歴史、眠くなかった?」

ラフリは小さく笑った。

「少しな」

ユナも笑う。

「やっぱり」

その時。

教室の反対側。

数人の学生が話していた。

ミサキ。

ユイ。

ナツキ。

三人は小さな声で会話している。

「ねえ」

ナツキが言う。

「最近ラフリってさ」

ミサキが続ける。

「ユナの近くにずっといるよね」

ユイは肩をすくめる。

「まあ仲いいんじゃない?」

ナツキは少し首を傾げた。

「でもさ」

「さっきも廊下で」

「タカハシがユナに話しかけた時」

ミサキが言う。

「あー」

「ラフリ、すぐ間に入ったよね」

三人は少し黙る。

それは小さな出来事。

でも。

印象として残る。

ユイが小さく言う。

「……ちょっと怖いかも」

その会話を。

少し離れた席で。

ローズが聞いていた。

彼女は本を読みながら言う。

「ラフリは」

三人が振り向く。

ローズは優しく笑った。

「きっと心配してるだけですよ」

ミサキが聞く。

「心配?」

ローズは頷く。

「ユナは優しいですから」

「色んな人が話しかけますし」

「守りたくなる気持ちも分かります」

その言葉は。

否定でもない。

肯定でもない。

でも。

三人の頭の中で。

一つのイメージができ始める。

ラフリはユナを守ろうとしている。

でもそれは同時に――

ユナを縛っているかもしれない。

その頃。

ラフリはパンを食べながら周囲を見ていた。

教室。

窓。

廊下。

誰がどこにいるのか。

自然と確認してしまう。

その時。

タカハシがユナに近づいた。

「ユナ」

「次の物理のノート見せてくれない?」

ユナは笑う。

「あ、いいよ」

でも。

その瞬間。

ラフリの体が少し動いた。

視線が鋭くなる。

タカハシの動き。

距離。

全部を見ている。

タカハシは気づいていない。

でも。

近くの席の学生は見ていた。

「……まただ」

小さな声。

誰かが言った。

その言葉は。

すぐに消える。

でも。

空気には残る。

ユナはノートを渡した。

「はい」

タカハシは笑う。

「助かった」

ラフリは黙っていた。

でも。

胸の奥で。

小さな違和感が広がる。

本当にただの会話か?

その時。

耳の奥で。

また残響。

『……疑え』

ラフリの指が止まる。

『全部』

声はすぐに消えた。

ラフリは顔を上げる。

教室の後ろ。

ローズがこちらを見ていた。

そして。

優しく笑う。

ラフリは視線を逸らした。

でも。

心の奥で。

一つの考えが浮かぶ。

この教室は――安全なのか?

放課後。

教室は少し静かになっていた。

学生たちは帰る準備をしている。

その中で。

ミサキが小さく言った。

「ラフリってさ」

「ユナのこと好きなのかな」

ユイが答える。

「まあそうかもね」

ナツキは少し考える。

「でもさ」

「ちょっと……」

言葉を探す。

「重くない?」

三人は少し笑った。

ただの雑談。

ただの感想。

でも。

その言葉は。

少しずつ形を変えながら。

教室の中に広がっていく。

窓の近く。

ローズはそれを聞いていた。

小さく呟く。

「順調ですね」

彼女の視線はラフリへ向いている。

「もう少しで」

「壊れます」

そして。

遠くの屋上。

ミヤコがその様子を見て笑った。

「ローズ」

「本当に上手だね」

空のヒビは。

また少しだけ――

広がっていた。

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