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第四十話: 仕組まれた偶然

午後。

学院の廊下は少し静かだった。

授業の合間。

学生たちは次の教室へ移動している。

普通の時間。

普通の景色。

でも。

その中に一つだけ――

仕組まれた「偶然」が混ざっていた。

ラフリは廊下を歩いていた。

ユナは隣にいる。

二人は次の授業の教室へ向かっていた。

「さっきの授業さ」

ユナが小さく笑う。

「先生ちょっと怒ってたよね」

ラフリは肩をすくめた。

「まあ……あのクラス騒がしいし」

普通の会話。

普通の時間。

でも。

ラフリの視線は周囲を見ていた。

無意識に。

何かを警戒している。

その時。

耳の奥で。

小さな残響。

『……左……』

ラフリの目が動く。

廊下の角。

男子生徒が走ってきている。

手には大量の資料。

高く積まれている。

前はほとんど見えていない。

そして。

床。

誰かがこぼした水。

小さな水たまり。

男子生徒はそれに気付かない。

次の瞬間。

足が滑った。

体が大きく前に倒れる。

資料が空中に散らばる。

そして。

倒れる方向は――

ユナ。

ラフリの体が先に動いた。

ユナの腕を引く。

強く。

「危ない!」

男子生徒は床に倒れた。

資料が廊下に散乱する。

周囲の学生が驚く。

「おい大丈夫か?」

「すごい転び方したな……」

ユナは少し驚いた顔でラフリを見た。

「ラフリ?」

「そんなに引っ張らなくても……」

ラフリは周囲を見ていた。

水たまり。

倒れた男子生徒。

散らばった資料。

全部。

偶然に見える。

でも。

胸の奥の違和感。

消えない。

男子生徒は頭を掻いた。

「ご、ごめん!」

「前見えてなくて!」

ユナは笑った。

「大丈夫だよ」

ラフリは黙っていた。

その時。

遠く。

廊下の端。

ローズが立っていた。

静かに。

この光景を見ている。

ローズは小さく呟いた。

「二回目」

「やっぱり来ましたね」

近くにいた女子生徒に優しく声をかける。

「大丈夫?」

「今すごい音しましたよね」

その女子生徒は答える。

「うん、なんかあの男子が転んで……」

そして。

少しだけ首を傾げた。

「でもさ」

「ラフリって最近変じゃない?」

ローズは驚いたふりをした。

「え?」

女子生徒は小声で言う。

「なんかユナに近づく人、すぐ警戒してる感じ」

「ちょっと怖いかも」

ローズは少し黙る。

そして。

小さく微笑んだ。

「……そうなんですね」

視線は遠く。

ラフリへ向いている。

「でも」

「きっと」

「心配してるだけですよ」

そう言いながら。

ローズの目は冷たかった。

放課後。

学院の門の前。

ラフリはユナと別れた。

「じゃあまた明日」

ユナは手を振る。

ラフリは頷いた。

「気をつけて帰れよ」

ユナは笑った。

「大丈夫だよ」

ユナは歩き去る。

ラフリはその背中を見ていた。


その姿を――

何度も失ってきたことを思い出しながら。

その時。

耳の奥で。

また残響。

今度は。

少し楽しそうな声。

『二回目成功』

ラフリの眉が動く。

遠く。

校舎の屋上。

黒と桃色の髪の少女が座っていた。

ミヤコ。

彼女は足を揺らしながら言う。

「ローズ」

「結構本気だね」

空を見上げる。

そこには。

また小さなヒビ。

ミヤコは小さく笑った。

「でも」

「ラフリ」

「君の壊れ方は」

「まだこんなものじゃない」

そして。

遠くの闇の中。

もう一つの存在が目を開く。

それは。

すべての感情から生まれた存在。

セラ。

彼女は静かに呟いた。

「悲しみは」

「まだ足りない」

世界の残響は。

少しずつ強くなっていく。

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