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第35話 残響

朝の教室。

窓から柔らかな光が差し込んでいた。

いつもの日常。

いつもの空気。

でも――

ラフリだけが、落ち着かなかった。

胸の奥。

何かが引っかかっている。

理由は分からない。

「……」

ラフリは窓の外を見た。

青い空。

雲がゆっくり流れている。

平和な景色。

なのに。

胸が痛む。

まるで――

この空を、何度も見ているような感覚。

授業中。

教師が黒板に文字を書いている。

チョークの音が教室に響く。

その時。

突然。

ラフリの耳に声が届いた。

『……何度でもいい……』

「……?」

ラフリは顔を上げた。

誰も喋っていない。

教室は静かだ。

でも。

確かに聞こえた。

『世界が壊れても……』

その瞬間。

ラフリの視界が揺れた。

黒板。

机。

教室。

すべてが一瞬だけ――

崩れる光景に変わった。

炎。

瓦礫。

崩壊した学院。

そして。

誰かの声。

『それでも俺は、お前を救う……』

「っ!」

ラフリは机を強く掴んだ。

呼吸が乱れる。

「ラフリ?」

隣の生徒が声をかける。

「顔色悪いぞ」

「……いや」

ラフリは首を振った。

でも。

心臓はまだ激しく鼓動している。

(……今のは何だ)

夢じゃない。

幻覚でもない。

むしろ。

記憶に近い。

でも。

そんな出来事。

覚えていない。

昼休み。

ラフリは一人で屋上に来ていた。

風が強い。

街が遠くに見える。

ラフリはフェンスに手をかけた。

その時。

また。

声が聞こえた。

『……ユナを――』

ラフリの呼吸が止まる。

次の言葉。

それは。

はっきり聞こえた。

『俺に救わせてくれ』

「……」

ラフリの体が震える。

その言葉を。

自分が言った気がする。

でも。

いつ?

どこで?

どうして?

分からない。

その時。

屋上のドアが開いた。

「ラフリ?」

ユナだった。

「ここにいたんだ」

いつもの笑顔。

その瞬間。

ラフリの頭の中で――

何かが砕けた。

視界が赤く染まる。

雨。

炎。

そして。

倒れているユナ。

「……っ!!」

ラフリは思わずユナの肩を掴んだ。

「え?」

ユナが驚く。

「どうしたの?」

ラフリは答えない。

答えられない。

ただ。

震える声で言った。

「……今日は」

「絶対に一人になるな」

「え?」

ユナは困った顔をする。

「どうして?」

ラフリは黙った。

理由は言えない。

自分でも分からない。

でも。

胸の奥が叫んでいる。

守れ。

守れ。

守れ。

理由なんて関係ない。

とにかく。

この人を。

失ってはいけない。

その頃。

学院の塔の上。

ローズは空を見上げていた。

静かな表情。

でも。

その目は鋭い。

「……始まりましたね」

小さく呟く。

風が吹く。

その瞬間。

空にほんのわずかな亀裂が走った。

普通の人間には見えない。

でも。

ローズには見える。

「残響」

その言葉を口にした。

「契約の副作用」

ローズは静かに笑った。

「三回目の世界でも」

「やっぱり現れる」

そして。

小さく呟いた。

「ラフリ」

「あなたは」

「どこまで壊れずにいられるんでしょうね」

夕方。

ラフリは帰り道を歩いていた。

街は静かだ。

空は赤い。

その時。

頭の中で。

また声が響いた。

今度は。

とても弱い声。

『……助けて……』

ラフリは立ち止まった。

その声は。

誰の声か。

分かってしまった。

「……ユナ?」

でも。

振り返ると。

そこには誰もいない。

ただ。

夕焼けの空だけが広がっていた。

そして。

その空の奥で。

誰にも見えないヒビが――

ゆっくり広がっていた。

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