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第28話 学院の庭での小さな試し【改訂版】

放課後。

教室にはまだ夕方の光が残っていた。

窓の外では、空が少しずつ赤く染まり始めている。

授業は終わった。

生徒たちは少しずつ教室を出ていく。

椅子の音。

足音。

ざわざわした声。

やがて教室は静かになっていった。

俺は席に座ったまま、何となく前を見ていた。

理由は簡単だ。

ユナと――

その隣にいるローズ。

二人はまだ楽しそうに話していた。

「ユナってさ」

ローズが机に軽く肘をつきながら言う。

「学院の中で好きな場所ある?」

「好きな場所?」

ユナは少し考えた。

「うーん……」

少しして、思い出したように言う。

「庭かな」

「庭?」

「うん。噴水があるところ」

ローズの目が少し輝いた。

「へえ、気になる」

そして、軽く笑う。

「じゃあさ」

ローズはユナを見る。

「今から行ってみない?」

ユナは少し驚いた顔をした。

「え、今?」

「うん。放課後だし」

ローズは気軽な調子で言う。

「少し散歩するだけ」

ユナは少し迷った。

そして小さく頷く。

「……うん、いいよ」

その瞬間。

俺の胸が少しざわついた。

(庭……か)

学院の庭。

昼間は綺麗な場所だ。

でも放課後は――

人が少ない。

その時だった。

ローズがこちらを見た。

「ラフリ」

突然名前を呼ばれる。

「……なんだ」

「あなたも来る?」

俺は一瞬言葉を失った。

「え?」

ローズは何でもない顔で続ける。

「ユナの友達なんでしょ?」

軽く笑う。

「一緒に散歩しよ」

周りにはもうほとんど人はいない。

断る理由もない。

でも。

なぜか胸の奥がざわつく。

「……まあ、いいけど」

俺は短く答えた。

ローズは満足そうに微笑んだ。


学院の庭。

噴水の水が静かに流れている。

夕方の光が石の道を照らしていた。

人の姿はほとんどない。

静かな場所だった。

ユナは少し嬉しそうに言う。

「ここだよ」

「へえ」

ローズは周りを見渡す。

「思ったより綺麗」

そして噴水の近くまで歩いた。

俺も少し後ろからついていく。

その時だった。

ローズが突然聞いた。

「ねえ、ラフリ」

「……なんだ」

ローズは振り向く。

そして静かに聞いた。

「もしさ」

少し間を置く。

「未来が分かる人がいたら」

俺の心臓が一瞬強く鳴った。

ローズは続ける。

「それって――」

少し首を傾げる。

「幸せなことだと思う?」

「それとも」

小さく微笑む。

「呪いだと思う?」

俺は何も言えなかった。

ただ、ローズを見る。

ローズも俺を見ている。

その視線はまるで――

何かを確かめているみたいだった。

やがてローズはくすっと笑う。

「ふふ」

「変な質問だったね」

そしてユナの方を見る。

「ごめんね、急に」

ユナは少し困ったように笑う。

「ううん、別にいいけど……」

だけど。

俺の胸のざわつきは消えなかった。

庭を出て、帰る道。

空はもう暗くなり始めていた。

三人で並んで歩く。

しばらく沈黙が続いた。

そして。

ローズが小さく言った。

「でもさ」

ユナが聞き返す。

「え?」

ローズは少しだけ笑う。

そして言った。

「ラフリって優しいよね」

「そうかな?」

ユナが言う。

ローズは軽く頷いた。

「うん」

そして。

ほんの少しだけ声を落として続けた。

「まるで」

一瞬だけ、ローズの視線が俺に向く。

「ユナを絶対に失いたくない人みたい」

その言葉を聞いた瞬間。

俺の足が止まりそうになった。

ローズは何事もなかったように歩いている。

だけど。

その横顔を見ながら、俺は思った。

もしかして――

こいつは。

本当に、ただの転校生じゃないのかもしれない。

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