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第26話 転校生ローズと、不穏な視線【改訂版】

その日、教室の空気はどこかおかしかった。

転校生――ローズが現れてから、胸の奥に小さな棘が刺さったような違和感が消えない。

初めて会ったはずなのに。

なぜか、落ち着かない。

ふと視線を感じて顔を上げると、ローズと目が合った。

透き通るような瞳。

けれど、その奥には言葉にできない何かが潜んでいる気がした。

まるでこう言っているみたいだった。

「この人、私を知ってる?」

いや、あり得ない。

俺とローズは今日が初対面のはずだ。

それなのに、胸騒ぎが止まらない。

理由は分からない。

でも俺の本能が――

あの少女を警戒していた。

「ローズさん、あそこの席に座ってください」

教壇からヤド先生の声が響く。

指された席は――

ユナの隣だった。

「はい」

ローズは小さく頷き、静かに歩き出す。

そしてそのまま、ユナの隣の席に腰を下ろした。

「よろしくね」

柔らかい声でそう言うと、ユナは少し驚いたように目を瞬かせた。

「う、うん……よろしく」

すぐに二人は簡単な会話を始める。

普通の転校生。

普通の挨拶。

普通の光景。

……のはずなのに。

俺だけが妙な感覚に襲われていた。

(なんだ……この感じ)

ローズが笑う。

ユナも笑う。

その光景を見ているだけなのに、胸の奥がざわつく。

まるで――

何かが起きる前触れみたいに。

その時だった。

ローズがふと、こちらを見た。

そして小さく首を傾げる。

「ねえ」

突然、声をかけられた。

「え?」

「あなた、ユナの友達?」

不意の質問に言葉が詰まる。

「……まあ、そんなところだ」

そう答えると、ローズは少しだけ目を細めた。

まるで何かを観察するような視線だった。

「へえ」

そして、くすっと小さく笑う。

「なんだか不思議」

「なにが?」

「あなた、さっきからずっと私たちの方を見てるから」

その言葉に、近くのクラスメイトが笑った。

「確かに」

「めっちゃ見てるよな」

一瞬で視線が集まる。

しまった。

ユナもこちらを見て、少し困ったように言う。

「ラフリ?」

「いや、その……」

言い訳が出てこない。

すると――

ローズがゆっくり立ち上がった。

そして少しだけこちらへ近づく。

距離が近い。

そして、小さな声で言った。

「ねえ」

その声は、他の誰にも聞こえないくらい小さかった。

「あなたって――」

一瞬、間を置いて。

ローズは微笑んだ。

「すごく怖がってる顔してるよ」

背筋が、ぞくりと震えた。

なぜだ。

どうして。

俺は今、こんなにも――

見透かされている気がするんだ。

ローズは何事もなかったかのように席へ戻った。

「じゃあ改めて、よろしくね」

そう言って、ユナに優しく笑いかける。

ユナも自然に笑い返す。

だけど。

その光景を見ながら、俺は確信していた。

――この女。

絶対に、普通じゃない。

そしてその瞬間。

ローズがもう一度だけ、こちらを見た。

まるで――

何かを確かめるように。

その視線に、俺は言いようのない不安を覚えた。

まるで彼女が――

俺の隠している何かに、

すでに気づいているかのように。

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