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第二十四話 子供じみた作戦が世界を救う日【改訂版】

もしも、もう一度やり直せるなら。

もしも、間違える前に戻れるなら。

それでも人は、正しい選択をできるのだろうか。

答えはまだ分からない。

だがこの日、ラフリは――

天才ではなく、ただの少年として選択をする。

「どうして……まだ助けてくれないの?」

その声は、すぐ耳元で囁かれた。

ラフリは動けなかった。

目の前にユナが立っている。

責めているわけじゃない。

怒っているわけでもない。

ただ――悲しそうだった。

「ラフリ……遅いよ」

彼女の身体が、ひび割れる。

血ではない。

光でもない。

まるでガラスのように、静かに崩れていく。

「待っ――」

視界が真っ白になった。

ラフリは勢いよく起き上がった。

荒い呼吸。冷たい汗。

見慣れた天井。

自分の部屋。

朝日。

震える手でカレンダーを見る。

入学初日。

「……また戻った?」

屋上ではない。

事故の後でもない。

もっと前だ。

最初の朝。

コンコン。

「お兄ちゃん? 起きてる?」

ドアが開く。

そこには、なぜかメイド服姿のユメが立っていた。

ラフリは数秒間、無言で見つめる。

「……なんでそれ着てるんだよ」

「今日から高校生でしょ? 応援イベント」

「応援の方向性が迷子すぎるだろ」

「可愛いから問題なし」

いつもなら軽く言い返す。

でも今日は、声が重い。

ユメが首を傾げた。

「顔、死んでるよ?」

「寝不足だ」

嘘だ。

何度も死んだ夢のせいだ。

ユメが部屋を出た後、ラフリは机に座る。

ノートを開く。

・一回目:パンク → 事故

・二回目:パンクなし → 事故

・共通点:白いバン

・キーワード:レディ・ローズ

ペンが止まる。

「……俺って、そんなに頭良くないよな」

机に額をぶつける。

成績は普通。

戦略家でもない。

推理も中途半端。

「もっと賢い奴なら、もう答え出してるだろ……」

胸がじわじわ重くなる。

失敗したら。

またユナが死ぬ。

「……何も思いつかない」

その時、足元から何かが落ちた。

古いノート。

表紙にはカラフルな落書き。

『世界征服極秘作戦ノート

フリ&ユメ』

「……懐かし」

小学生の頃に作った、悪ふざけの計画帳。

ページをめくる。

『アイス屋さんがチョコ少なかった時の復讐計画』

『母に怒られた後の心理戦作戦』

くだらない。

本当にくだらない。

ラフリは苦笑する。

だが、あるページで手が止まった。

タイトル:

『こっそりタイヤ作戦』

目的:

意地悪な近所の子の自転車を一時使用不能にする。

下には子供字でこう書かれていた。

1.本体を狙うな。

2.移動手段を止めろ。

3.時間より前に動け。

4.見られるな。

ラフリはしばらく黙る。

「……これ、今の状況と同じじゃないか」

ゆっくりと立ち上がる。

「ありがとう、ユメ」

胸の重さが少し軽くなる。

天才じゃない。

でも、昔の自分たちは無駄に発想力だけはあった。

「子供の悪知恵、借りるぞ」

今日は学校へ行かない。

別の場所へ行く。

通学路の外れ。

あの白いバンが停まっていた場所。

ラフリは草むらに身を潜める。

やがて、バンが現れる。

男たちが降りる。

周囲を確認している。

ラフリは地面を見る。

小さな釘。

以前は集めた。

でも事故は起きた。

なら今回は――

“本体を狙うな。移動手段を止めろ。”

ラフリは数本の釘を握る。

タイミングを待つ。

男たちの注意が逸れた瞬間、走る。

心臓が爆発しそうだ。

震える手で、タイヤに釘を押し込む。

プシュッ……

空気が抜ける音。

一本。

二本。

三本。

四本。

終わった。

草むらに戻る。

数分後、男たちが戻る。

「は?」

パンク。

焦り。

怒号。

電話。

対応に追われる。

その間に――

黒い車が通り過ぎる。

ユナの車。

何も起きない。

衝突しない。

炎も上がらない。

無事に、走り去る。

ラフリは地面に座り込む。

「……成功」

大声では笑わない。

ただ、小さく呟く。

「小学生の作戦、意外と使えるな」

帰り道。

大型ビジョンにニュースが映る。

「若手女優、レディ・ローズ、最新ドラマ決定――」

ラフリは足を止める。

画面に映る少女。

赤い薔薇のブローチ。

その名前。

レディ・ローズ。

あの男が言っていた。

“レディ・ローズの命令だ”

偶然か?

それとも――

その瞬間、画面の中の彼女が微笑んだ。

カメラ越しに。

いや。

まるで、ラフリを見ているように。

背筋が冷える。

事故は止めた。

だが。

本当に終わったのか?

風が強く吹いた。

ラフリは静かに拳を握る。

「まだ……続くのか」

子供の頃の落書き。

笑われるような作戦。

それでも、誰かを守れるなら。

それはきっと、間違いじゃない。

だが世界は甘くない。

一つの選択が未来を救っても、

別の影が静かに動き出す。

そして少年はまだ知らない。

本当の戦いは、これから始まるということを。

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