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第十七話 雨の夜、君の温もりに包まれて【改訂版】

冷たい雨に打たれた夜だった。

帰る場所も、寄りかかる場所もないはずの俺が――

なぜか今、彼女の家の前に立っている。

この出会いが偶然なのか、それとも運命なのか。

その答えはまだ分からない。

けれどただ一つ、確かなことがある。

――この夜が、俺の何かを変える。

さっきの出来事のあと、俺はユナの家にいた。

広くて静かなリビングに一人で座っていると、奥から軽やかな足音が聞こえる。

「ラフリくん、やっと会えたね」

ユナが笑いながら、手を振っていた。

俺はまだ雨に濡れたままだった。

床を汚してしまわないよう、少し距離を取る。

「先にお風呂、使っていいよ」

その優しさに甘えて、俺は小さく頷いた。

案内された浴室は想像以上に広く、

静かな湯気に包まれていた。

温かい湯に身体を沈めた瞬間、

張りつめていた緊張がほどけていく。

――その時だった。

ガラッ。

扉が開いた音。

反射的に俺は湯の中へ潜った。

息を止め、動かずに身を隠す。

ユナは中を見回していたが、

やがて小さく息をつき、タオルと着替えを置いて出ていった。

俺はゆっくり水面から顔を出す。

心臓が、激しく鳴っていた。

こんな状況は初めてだった。

妹のユメと一緒に入った時以外で、

女の子が風呂場に入ってくるなんて――

風呂を終え、タオルで身体を拭き、

用意されていた服を着る。

……不思議なほど、サイズがぴったりだった。

(偶然…だよな)

そう思いながらも、どこか引っかかる違和感が残る。

そして夜。

家には空いている部屋がいくつもあるはずなのに、

なぜか俺はユナの部屋へ案内された。

(いや待て、普通に考えておかしくないか…?)

心の中でツッコミを入れていると、

ユナがそっと袖を掴んだ。

「ねえ、ラフリくん……一緒に寝てもいい?」

甘えるような声。

上目遣い。

少し震えた指先。

(……こんなの断れる男、いるのかよ)

俺は小さくため息をつきながら、

「……いいよ」

と答えてしまった。

そして気づけば、同じベッドの上。

「なんでここなんだ? ソファとか、布団とか…」

そう言うと、ユナは少しだけ寂しそうな顔をした。

「……一人だと、さみしいの」

そして、静かに続ける。

「ラフリくん、近づいてもいい?……抱きしめてもいい?」

その言葉に、俺は何も言えなかった。

次の瞬間――

ユナはそっと腕を回し、俺を抱きしめた。

温かい。

柔らかい。

優しい。

逃げようとしたはずなのに、

なぜか安心している自分がいた。

そしてそのまま――

俺たちは朝まで、離れなかった。

目が覚めたとき、

すぐそばにユナの寝顔があった。

静かで、穏やかで、

まるでこの世界に守られているみたいな表情だった。

――ああ。

もしかしたら俺はもう、

引き返せない場所まで来てしまったのかもしれない。

それでもいいと思ってしまった。

この温もりを、

もう手放したくないと――

心のどこかで、願ってしまったから。

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