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第15話 色褪せない約束【改訂版】

夕暮れの風が、静かに頬を撫でていく。

あの日——ラフリが夢を追い、遠い国へと旅立った日から。

ユナの世界は、どこか音を失ったように静まり返っていた。

それでも、胸の奥にははっきりと刻まれている言葉がある。

——「また、必ず会おう」

季節は巡り、時間は流れ続けた。

それでもユナは、ただ一人。

その約束を信じて、待ち続けていた。

ラフリがいなくなってから、

ユナの元には何人もの男性が現れた。

告白され、付き合ってほしいと言われ、

中には結婚を申し込んでくる人さえいた。

けれど——

ユナはそのすべてを、優しく断り続けた。

彼らが嫌いだったわけじゃない。

ただ、ユナの心はもう——

一つの約束に、静かに縛られていたから。

ラフリとの約束に。

何年もの時間が過ぎていく中で、

時には不安もよぎった。

(もしかして……あっちで、他の人を好きになってしまったのかな……)

それでも——

ユナは信じることをやめなかった。

そして、その日。

ずっと待ち続けていたその人が、

本当に——目の前に現れた。

「……っ!」

気づいた瞬間、ユナの体は自然と動いていた。

距離なんて関係なかった。

ただ、会いたかった人がそこにいる——

それだけで十分だった。

ユナは駆け出し、そのままラフリの胸へ飛び込む。

強く、強く抱きしめた。

こぼれた涙は、悲しみじゃない。

長い孤独が、ようやく終わった安堵の涙だった。

「……やっと、来てくれた……

でも、どうして予定より早いの……?」

震える声でそう尋ねるユナに、

ラフリは優しく微笑んだ。

「俺も、ユナに会いたかった。

このままじゃ耐えられなかったんだ。

だから、全部を早く終わらせて——帰ってきた」

その言葉に、ユナの胸が強く締め付けられる。

離れていた時間が、言葉と言葉でゆっくり埋まっていく。

やがてユナは、ふと大切なことを思い出した。

「……約束、覚えてるよね?」

ラフリは迷わず頷く。

「もちろん。だから——今から、叶えよう」

ラフリはそっとユナの手を取る。

以前よりも少しだけ力強く、でも変わらず優しく。

ユナもその手を、ぎゅっと握り返した。

二人は並んで歩き出す。

市場を歩き、店を巡り、

まるで空白の時間を埋めるように、

たくさんの場所を訪れた。

そして最後に、ラフリのアパートへと戻る。

部屋に入った瞬間、ラフリは驚いたように目を見開いた。

「……ずっと、綺麗なまま……?」

「うん。ラフリがいつ帰ってきてもいいように、ちゃんと守ってた」

その言葉に、ラフリはやさしく微笑む。

「ありがとう、ユナ」

その一言だけで、ユナの心は満たされた。

やがてラフリはユナをソファに座らせ、

自分はキッチンへと向かう。

包丁の音。

フライパンの音。

広がる香ばしい匂い。

その温もりに包まれながら、

ユナはいつの間にか、うとうとと眠りに落ちていった。

——数時間後。

「ユナ、起きて」

やさしい声に目を覚ますと、

目の前のテーブルにはたくさんの料理が並んでいた。

「……これ、全部……?」

ユナが驚いて尋ねると、

ラフリは少し誇らしげに言った。

「最初はナシゴレン。

二つ目はミーアヤム。

そして最後は——インドネシアの料理、コト・マカッサルだ」

ユナの瞳が、きらきらと輝く。

「一緒に食べよ?」

その言葉にラフリは頷き、

二人は同じテーブルに座る。

久しぶりの食事。

久しぶりの会話。

久しぶりの笑顔。

離れていた時間が嘘のように——

二人の距離は、再びゼロへと戻っていた。

ユナの孤独は——終わった。

そして。

ユナの幸せは——

ここから、もう一度始まる。

その夜。

温かい灯りと、穏やかな笑い声に包まれながら、

ユナはそっと思う。

長い時間、待ち続けたとしても——

本当に帰ってきてくれる人のためなら、

その時間はきっと、無駄なんかじゃない。

その約束は、これからも——

決して色褪せない。

※本話は物語の一貫性のために加筆・修正を行いました

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