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第14話 何人と出会っても、僕が選ぶのは最初から君だった 【改訂版】

あの夜の雨は、まるで過去を洗い流すみたいに静かに降っていた。

そして雨が止んだあと、残ったのは——

少し冷たい空気と、隣にいる君のぬくもりだけだった。

人はきっと、何度も誰かと出会う。

いくつもの選択肢の中で迷いながら、それでも一つを選んでいく。

でも俺は、もう知っている。

最初から——

俺が選ぶ人は、ただ一人だけだって。

雨上がりの夜だった。

冷たい空気の中に、まだかすかに水の匂いが残っている。

校門を出て、静かな通りを二人で歩く。

街灯の光が、濡れたアスファルトに反射して揺れていた。

小さな水たまりを踏むたびに、やわらかな波紋が静かに広がっていく。

その隣にいるのは——

ユナ。

俺はふと、足を止めた。

「ねえ、ユナ。どうして俺が君を好きになったか……分かる?」

ユナは少しだけ首をかしげて、いたずらっぽく笑う。

「うーん……なにそれ。気になるなあ」

その声が、やけに優しくて。

胸の奥がじんわりと熱くなる。

俺は一度、夜空を見上げてから、ゆっくりと言葉を選んだ。

「今までさ……いろんな人と出会ってきた」

セラ、サラ、ルネ、シリヒ、そしてミヤコ。

そして——たくさんの世界。

「でも、そのすべての出会いの中で——

最初から、最後まで、心が惹かれたのは……君だけだったんだ」

俺はまっすぐ、ユナを見る。

「一緒にいるだけで、世界の見え方が変わったのは……君だけだった」

風がそっと吹いた。

濡れた木々が揺れ、葉のこすれる音が夜に溶けていく。

ユナは少し目を細めて、意地悪そうに微笑んだ。

「……それだけ?」

「え?」

「それだけで、私を好きになったの?」

……ずるい質問だ。

俺は思わず後頭部をかいて、苦笑した。

「そんなわけないだろ」

一歩、ユナに近づく。

「好きな理由なんて……言葉にしたら足りないくらいある」

街灯に照らされた水滴が、きらりと光る。

「俺の中にある全部の感情——

 優しさも、弱さも、願いも、未来も……」

ゆっくりと、手を伸ばす。

「全部、君に向いてるんだ」

ユナの頬に、そっと触れる。

雨上がりの空気よりも、彼女の体温のほうがずっと温かい。

「だから——」

俺はそのまま、彼女を腕の中へ引き寄せた。

驚いたように揺れる瞳。

でもその奥にあるのは、拒絶じゃない。

同じ気持ちだ。

「約束する」

耳元で、静かに囁く。

「俺が欲しいのは、君だけだ」

一瞬、時間が止まったみたいに静かになる。

遠くで車の音が通り過ぎていく。

夜空には、雲の隙間から小さな星がいくつか顔を出していた。

「今も、これからも——ずっと」

ゆっくりと、言葉を重ねる。

「時間が止まっても、運命が変わっても、

もしこの体がいつか消えたとしても……」

俺はユナを見つめたまま、はっきりと告げる。

「心だけは、ずっと君のものだ」

ユナの瞳が揺れる。

次の瞬間、静かに——潤んだ。

「……ばか」

小さくそう言いながらも、彼女は逃げなかった。

むしろ、そっと俺の服をつかむ。

その仕草だけで、全部伝わる。

俺はもう、迷わない。

彼女の唇に、そっと触れた。

短くて——でも確かなキス。

その瞬間——

まるで祝福するみたいに、雲の隙間から月明かりが差し込んだ。

濡れた道路が、銀色に輝く。

世界が静かに、優しく色づいていく。

俺は思う。

ああ——

ずっと探していたのは、最初から君だったんだ。

雨上がりの夜に交わした、たった一つの約束。

それは言葉よりも深く、時間よりも長く——

静かに、二人の未来へと繋がっていく。

でも俺はまだ知らない。

この「約束」が、やがてどんな運命を呼び寄せるのかを——。

※本話は物語の一貫性のために加筆・修正を行いました

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