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第十二話:誠実な約束(せいじつなやくそく) 【改訂版】

放課後の教室には、もう誰もいなかった。

整然と並ぶ机と椅子の間に、夕焼けの光が細く差し込んでいる。

オレンジ色に染まった床が、静かに一日の終わりを告げていた。

窓の外からは、やわらかな風。

カーテンがゆっくりと揺れる。

さらり――

木々の葉が擦れ合う音が、遠くから優しく響いてくる。

その穏やかな空間に残っているのは、ただ二人だけ。

俺と――ユナ。

俺たちは、もう何年も一緒にいる。

気づけばそれが当たり前になっていて、

その当たり前が、どれだけ大切なものかも分かっていた。

ユナは窓のそばに立ち、夕焼けを見つめている。

オレンジ色の光が彼女の髪に触れて、静かに揺れた。

その姿はどこか儚くて、でも――

目を離せないほど愛おしい。

やがて、ユナがゆっくり振り返る。

少し不安そうな瞳。

でもその奥には、確かな想いがあった。

「ねえ……」

消えそうなほど小さな声。

「どうして……私のこと、こんなに長く好きでいてくれるの?」

彼女は視線を落とし、指をぎゅっと握る。

「私なんて……普通で、つまらなくて……

誰にも興味なんて持たれないような子なのに……」

俺は一歩、彼女に近づいた。

静かな教室に、足音が小さく響く。

ユナの前に立ち、まっすぐ見つめる。

「ユナ」

夕焼けの光が、二人の間に落ちる。

「俺が好きになったのは、見た目じゃない」

「理由があったわけでもない」

ゆっくり、言葉を選ぶ。

「ただ――ユナがユナだったからだ」

彼女の瞳が揺れる。

「それだけで、十分なんだ」

「俺は、“ユナだから”好きになった」

ユナの頬が赤く染まる。

それでも、まだ不安は残っているみたいで――

「でも……変じゃないの……?」

「何年も……こんな私を好きでいられるなんて……」

俺は小さく笑った。

窓の外で、葉が揺れる音が重なる。

「変じゃないよ」

そっと、ユナの手を取る。

温かい。

少しだけ震えている。

「世界には、ユナみたいな人を本気で愛してる人なんて、たくさんいる」

「それくらい――ユナは、誰かにとって特別な存在なんだ」

彼女の手を、ゆっくり持ち上げる。

宝物みたいに、大切に。

「そして俺にとっては――」

「ユナは、たった一人の存在だ」

「まるで磁石みたいに、自然と引き寄せられる」

ユナが何か言おうとした、その瞬間。

俺は人差し指をそっと彼女の唇に当てた。

「……待って」

風が教室に入り込み、カーテンが揺れる。

ユナの髪が、やさしく揺れた。

「俺の気持ちは、途中じゃない」

「一時的なものでもない」

まっすぐに見つめる。

「これはただの恋じゃない」

「――誠実な約束だ」

「これから先もずっと、俺はユナの隣にいる」

「そしてこの想いは――ユナにしか向けない」

ユナの瞳から、涙がこぼれた。

夕焼けに照らされて、きらきらと光る。

俺はそっとその涙を拭い、

彼女の手をしっかり握る。

二度と離さないように。

「Nothing will change my love for you.」

「No matter what happens…」

「I will always love you.」

ユナは静かに目を閉じた。

世界が静かに止まる。

その瞬間――

俺はユナに口づけをした。

優しく、柔らかく。

夕焼けに包まれた教室の中で。

風と、木々の音に守られながら。

まるでこの世界に、俺たち二人しかいないみたいに。

あの放課後の教室で。

夕焼けと、風と、静かな木々の音に包まれて――

俺たちはただ恋をしたんじゃない。

それよりも、もっと強くて、確かなものを結んだ。

それは――

誠実な約束。

そしてその日から。

俺たちの世界は、ただ色づいただけじゃない。

――未来へと続いていく、

二人だけの物語が始まったんだ。

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