第11話『君といるだけで、私の世界は色づく』 【改訂版】
私の世界は、ずっと無色だった。
厳しすぎる両親のもとで、
愛情なんて与えられたことがなくて――
笑うことすら、どこかぎこちなくて。
毎日はただ、静かに、味気なく過ぎていくだけ。
空も、街も、人の声も。
全部、同じ色に見えていた。
……あなたと出会うまでは。
あの日、ふと目が合った瞬間。
胸の奥に――何かが落ちた。
小さくて、でも確かに温かい感情。
それはゆっくりと、私の中に色を広げていった。
気づけば私は、あなたを目で追っていた。
あなたの笑顔。
少し困ったような表情。
優しい声。
全部がまぶしくて、全部が愛おしくて――
(ああ、これが“好き”なんだ)
そう、初めて知った。
でも私は、“愛すること”も“愛されること”も知らない。
だから、どう伝えればいいのか分からなかった。
それでも――
私は勇気を出した。
あなたの隣に座って、震える声で言った。
「ねえ……」
「私と一緒に、“色”を知ってみない?
……その、恋っていうものを」
言った瞬間、顔が熱くなる。
沈黙が怖くて、息が詰まりそうになる。
あなたは、しばらく何も言わずに――
ただ私を見つめていた。
数秒なのに、永遠みたいに長く感じた。
やっぱりダメだったかなって思いかけた、その時。
あなたは、ふっと優しく笑った。
そして――
何も言わずに、私を抱きしめた。
「……っ!?」
一瞬で思考が真っ白になる。
でも、すぐに分かる。
あなたの体温。
鼓動の音。
包み込まれる安心感。
全部が、優しくて、温かくて。
「ま、待って……!」
私は慌ててあなたを少し押し返す。
「まだ……私たち付き合ってないのに……
その、いきなりは……ずるいよ……」
するとあなたは、少しだけ首をかしげて言った。
「え? 好きな人には……こうするもんじゃないのか?」
……やっぱり、鈍感。
でも、そんなところも――
愛しくて仕方ない。
あなたは私の手をそっと取って、
まるで壊れやすい宝物みたいに持ち上げた。
騎士が姫に触れるみたいに、丁寧に。
そして少し照れながらも、真っ直ぐな目で言った。
「これから先もずっと、俺の隣にいてくれる?」
その言葉は――
驚くほど自然に、胸に落ちてきた。
私は、小さく微笑んで答えた。
「うん……あなたなら」
その瞬間。
あなたは、私の手の甲にそっと口づけを落とした。
――世界が、動き出した。
止まっていた時間が、ゆっくりと流れ始める。
白黒だった景色に、色が流れ込んでいく。
空は青く。
花は鮮やかに。
そして――
あなたの笑顔は、誰よりも温かくて。
私はやっと気づいた。
この世界は、最初から色がなかったわけじゃない。
あなたが――
私の世界に、色をくれたんだ。
私の世界は――
あなたと出会った瞬間から、
ずっと色づいていたんだ。
これからもきっと、
あなたと一緒に、たくさんの色を知っていく。
嬉しい色も。
少し切ない色も。
全部、あなたとなら――
きっと、怖くない。
だって――
私の世界には、もうあなたがいるから。
※本話は物語の一貫性のために加筆・修正を行いました




