↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/125

96話  ~終劇、そして~

「あ、あんた、これ……!?」

「す、すいません……! なんか、こう、力を込めたらこうなっちゃってぇ……!」

「……ちょっと、貸して」


 エリアスは、金色に輝く剣をおそるおそる握ると、驚いたように目を見開いた。


「これ……特別な魔力を感じるわ」

「と、特別な魔力……?」

「ええ……とにかくこれ、使わせてもらうわね」


 エリアスは力強く頷くと、まさに今、ヴィルクリフと激闘をくり広げている魔物へ向けて、スッと切っ先を伸ばした。


「ヴィルクリフ! 下がって!」

「?! っ、了解っ!」


 何事か察したヴィルクリフが、刀を抱え、すばやくその場から飛び退った。


 瞬間、エリアスが輝く剣を携え、魔物の頭部にむけて、勢いよく切りかかった。


「さっきは、よくもやってくれたわね!!」


 宵闇の中、キラリと輝く刀身。


 エリアスの体がしなるように宙で躍動して、目にも止まらぬ速さで剣が振り下ろされ――


 ザンッ!!


 重い斬撃音と共に、ボトッ、と魔物の首が落ちた。


「おおっ! エリアス、やるのぉ!」


 子どもたちの避難と子守を終えたテルルが、両手を叩いて走り寄ってきた。


「す、すごい……エリアスさん……!」


 あまりにも、あまりにもあっけない魔物の最後だった。


 見事な太刀筋だ。

 素人目で見ても、まるで映画のワンシーンのような光景だった。


 魔物の首が大地に転がり、コウモリの胴体がドテッと宙から落下した。

 薄気味悪い紫色の血が、ドクドクと大地に広がっていく。


 あれほど恐ろしかった魔物なのに、死してしまえばあっけなかった。


「ハッ、いいところは持ってかれちまったな」


 ホッとしたような表情をしつつも、ヴィルクリフが口先だけの皮肉めいた言葉をかける。


「いや……これは、あたしだけの力じゃないわ」


 エリアスが、まるで夢見心地のような表情で剣を見下ろしている。


 さっきまでのあの黄金の輝きは、すでに消え失せていた。

 魔物を切断した後、元通りの剣に戻ったようだ。


「これは……きっと、ハナの」

「いやー!! あんた、スゲェなぁ!」


 エリアスが、銀の刀身を見つめてなにか言おうとした途端、わらわらと人が駆け寄ってきた。

 いったいなんだ、と思えば、一度集落の外に避難した、商人や子どもたちだ。


「あのバケモンを一刀両断とは! 名のある剣士様かい?」

「え、いや、あたしはそういうんじゃ」

「本当に、本当にありがとうございます! そっちの黒髪の人も!」

「ちょっ……お、オレはなにも」

「ここで一生を終えるのかと……ありがとうございますぅ……!」


 エリアスと共に魔物に立ち向かったヴィルクリフも囲まれて、口々に礼を伝えられている。

 これはお邪魔虫かも、と察して、スススッとその場を離れると、テルルもいっしょについてきた。


「ふむふむ。二人はよくがんばっておったしのぉ」

「実際すごかったですもんね。ピンチに陥ったエリアスさんを助けたヴィルクリフさんに、剣で魔物の首をとったエリアスさん! ヒーローですよ!」

「うむ。しかし、そこに本来はお主も混ざって褒められるべきではないか?」


 テルルが、ジーッと私を見つめてくるが、テヘ、と首を振ってごまかす。


「いえいえ、私はあの二人のように、敵をどうこうしたわけじゃないですし」

「いや、エリアスの剣の魔力はお主の……っと、あちらがどうやら、落ち着いたようじゃな」


 テルルが、ふと顔を向けた方向。


 ダイゴロウとオルディアの二人、それに皆の避難誘導から解放されたノルンという同行者が、ゆっくりとした足取りで歩いてきた。


 怪我は治っているようだが、一応聞きとりはしておいた方がいいかもしれない。

 そう思い、テルルと共にそっと近づいた。


「あ、あのー……お体は大丈夫そうですか?」

「なによあんた……あ、あんたは、さっきの!」


 男性に寄り添うオルディアが、ハッと目を見開いた。

 反面、途中から合流した長身のノルンは、状況がわからないらしく、私と彼女を困ったように見比べていた。


 そんな中、男性――ダイゴロウが、ノルンの支えを固辞してスッと目の前にひざまずいた。


「この人は……おれの、命の恩人だ。本当に助かった。ありがとう」


 ダイゴロウはしっかりとした口調で言うと、そのまま頭を下げてきた。


「そんな! 顔を上げてください! お礼は受け取りましたから」


 年上の男性に、目の前で土下座されるのはあらゆる意味でショックだった。

 慌てふためく私の前で、オルディアも彼の体を支える。


「ちょっと、ダイゴロウ! 無理しちゃダメだってば!」

「いや、大丈夫だよ、お嬢。血も止まってるし、怪我はもうどこにもない……この人のおかげでな」

「いえいえ、本当に、ご無事でよかったです」


 心底感謝の念を向けられ、たじろぎながら頷いた。


「よかったのぉ。ハナは、回復に関しては天下一品じゃ」

「ちょ、て、テルル」

「難易度の高い回復魔法を……やっぱり、変人ってのは特殊な力を持っているのかしら」


 まじまじと服装を上から下まで眺めてから、オルディアはまったく遠慮せずに言った。

 あまりの物言いに、ノルンが慌てて彼女の口をおさえる。


「オルディア様。言い方、言い方」

「むぐっ、なによ、間違ってないじゃない。こんなヘンテコな服着てるんだもの、変わり者でしょう!」

「……なんというか。気持ちいいくらい、正直な方ですねえ」


 怒りや困惑を通り越して、もはや感心するほどだ。


 しみじみとそう応えると、ノルンとダイゴロウの二人が、苦笑交じりに頭を下げてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。