表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/83

76話 ~地下へ~

「弟と、その連れの男は、この屋敷の地下にかくまってある」

「え、ち、地下……!?」

「ああ……実はここ最近、私の周辺にキナ臭い動きがあってね……色々調べていたんだが、突き止める前にコレだ。笑えないな」


 アスタリカは自嘲するように首を振ると、心配そうに見つめる息子の頭をそっと撫でた。


「情けない話だ。……君が、地下に行ってくれるのか?」

「ええ! 二人を助けないと」

「そうか……なら、これを」


 彼女は、すすけた服の合間から、ひとつのカギを取り出した。

 熱を受けても、ひしゃげていない。なにか特殊な金属なのだろうか。


「本来なら、家長である私が行くべきだが……すまない。体を動かすので精一杯なんだ」

「とんでもない! 治癒したとはいえ、ものすごい大火傷だったんですよ。息子さんといっしょに、早く安全な外へ!」

「……本当にすまない。ありがとう」


 カギを震える指先から受け取って、深く頷き返す。

 すると、アスタリカは初めて気を許したような笑みを浮かべ、深々と頭を下げた。


 隣の彼の息子が、私たちを見比べた後、そっと付け足した。


「地下室は、ここを出て右の道をまっすぐ突き当たった先にあります。……お気をつけて」

「突き当たりですね、ありがとう!」


 コレードの説明に片手を上げて礼を示し、部屋の外へ飛び出す。


 どうせ館内に人はいないだろう、というのをいいことに、服装はボロボロのローブだ。着替えがないというのが一番の理由だが。


(えっと、右の道をまっすぐ……!)


 テルルのおかげか、館内の炎はだいぶ勢いを弱めていた。


 黒い煙があちこちから立ち上り、プスプスとくすぶる音がする。

 一酸化炭素中毒、という言葉が脳裏に浮かんだ。


「早く……早く、地下に行かないと!」


 ガスは上に滞留するというが、地下の損傷具合がわかっていない今、どのみち危険度は高い。


 しかも、地下室用のカギまであるとなれば、エリアスたちは完全に閉じ込められている可能性があった。

 なんのケガもなく、生きていればいいが――。


「……っ、ここだ!」


 ザザザッ、とスライディングする勢いで飛び込んだのは、屋敷の一番奥突き当あたり、うす暗い影になっている場所。

 床には、いかにも厳重です、と言わんばかりのガッチリした鉄製の扉が埋め込まれている。


(よし、このカギで……)


 預かったカギをブスッと差し込むと、重苦しい音を立てて、ギギィ、と開いた音がする。


「よし! 後は、中の様子だけど……」


 地下は真っ暗――かと思いきや、下がっていく階段を照らすように明かりが壁についている。


 今まで、照明器具についてなにも気にしていなかったけれど、そういえばこの世界、電気という概念があるんだろうか。


 不思議に思って明かりを見ると、電球の代わりに小さな宝石のようなものがついていた。

 よくファンタジーものにある、魔石とかそういう類のものなのかもしれない。


「っと、それどころじゃない! 早く二人を見つけないと!」


 のんびりしている余裕はない。

 幸い煙は入ってきていないようだが、いつまでも平気とは限らないのだ。


 ドドドッと勢いよく階段を下りると、目の前にはすぐに廊下があった。


 地下ゆえにか、かなり狭い。

 左右に扉が八つあり、パッと見、まるで鉄製の牢屋が並んでいるかのように見える。


「カギはないみたいだし……とりあえずシラミつぶしだ、えいっ!」


 とりあえず片っ端から確認する、と意気込んで、一番手前右のドアを開けた。

 目に入る部屋は、やはり狭かった。新入社員用の社員寮のワンルームくらい、といえばわかりやすいだろうか。


 いや、それよりなにより、だ。


「ウソ!? 一番最初に……あたり!?」


 部屋にはベッドが二つ置かれ、右にはエリアスが、左にはヴィルクリフが、そのまま寝かされていたのだった。


「ふ、二人とも! 起きてください!!」


 パンパンパン! と両手を叩いて音を出しながら近寄るも、二人は眠ったまま目を覚まさなかった。


 看病している人がいたのか、真ん中の小型テーブルには水差しとパンも置かれているが、手をつけられた様子はない。


「まだ、目覚めてない……?」


 あれから、けっこうな時間が過ぎている。

 例の睡眠玉とやらがよほど強力だったのだろう。


 くっ、とこぶしを握り締め、キョロキョロと周囲を見回す。

 狭い部屋だ。他に人の気配も当然ない。


「こうなったら……やってみるしかない……!」


 ボロボロのローブのポケットから杖を取り出して、まずエリアスの額に片手を押し当てる。

 二人は、怪我をしているわけじゃない。


 だから、慎重に。彼の不調を取り除く――というより、睡眠玉の効力を打ち消す、というイメージで、魔力を杖に注ぎ込んだ。


(エリアスさんが目覚めない原因となるものを……すべて、消し去る……!)


 さっき、アスタリカを救った時のように。

 杖に魔力を集めて、そのままエリアスの体に作用させていくイメージ。


(痛みを与えないように……起きて、エリアスさん……!)


 杖に込めた力を、注ぎ込む。

 そう思った瞬間だ。


 パァッ


 ピカッと杖の宝石が白く輝いて――杖が、ひとりでに宙に浮いた。


「えっ、え?」


 思わず杖から手を離すと、杖はピカピカと光を発しながらエリアスの額の上に移動し、


 パチンッ!!


 物理的に、彼のおでこを引っぱたいた。


「え、ええ……?」


 呆然とその光景を見ているしかできない私の前で、はたかれたエリアスは、眉をグッとしかめた後――パチリ、と目を開けた。


「ん……痛いわね……」


 寝起きらしい間延びした声と共に、彼はゆっくりと体を起こした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ