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異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


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120話 ~正体3~

「おれがいったいどんな気持ちで、傭兵稼業をやってたかわかってたくせに……!! ジジイが腰を痛めたから戻ってこい、だって!? しかも戻ったら戻ったで、腰痛はウソで、おれに後をついでほしかったと……いい加減、耐えられなかった。勝手ばっかり抜かしやがる、あいつらのことがな……!!」

「お前……それにしたって、親を殺すなんて」

「関係ねぇな。……死体のひとつでしかねぇ」


 ドン、と再びザンギスが壁を蹴る。


 二度蹴られた壁は、パラパラと上げて――唐突に、崩れた。


「えっ……!?」


 崩れた先に現れたのは、空間だった。


 ただただ真っ黒で、先も見えなければ果てもわからない、謎の空間。


「あとは、強い能力を持った人間の内臓と血が必要だった……なるべく生きたままの、活きのいい血肉がな。すでに十七人は取り込んだ……あと、三人だったんだがなぁ」


 すでに十七人。

 彼が殺したのは三人のはず。


 そう思ったタイミングで、ふと、酒場の男のセリフを思い出した。


『外部から来た商人や冒険者に声かけてなんかしてやがる』


 私たちより前に来た冒険者たちにも、同様のことをしていたとしたら。


「おい、ザンギス! 話はまだ終わってねえぞ!!」


 ザンギスは一歩、後ろへ後ずさった。

 壁の向こうの――暗くよどんだ、謎の空間へ。


「終わりだよ。お前と話すことなんてなにもねぇ……ただ、養分になってくれさえすりゃあよかったんだ」


 彼は悔しそうに言い放ち、さらに一歩、足を後ろへ動かした。


 ぐにゃ、と空間が歪み、彼の足が吸い込まれる。


「おい待て! お前、どうするつもりだ!!」

「決まってんだろ。残りの贄を取りに行くんだよ……本来なら、身体能力のあるヤツが適任だったが……そうも言ってられねぇようだからな」


 黒い空間が、ザンギスの全身を覆っていく。


「くれぐれも邪魔すんじゃねえぜ、ヴィルクリフ」

「この野郎、待ちやがれ……!!」


 慌ててヴィルクリフが飛び掛かったものの、ブオンッ、と眼前に割れたワインボトルが投げつけられた。


 ガチャン!


 よけきれなかったヴィルクリフにボトルが当たり、割れたガラスで腕に血が流れた。


「ヴィルクリフさん!!」

「大丈夫だ。あいつは……!?」


 腕から血を滴らせるヴィルクリフの先。

 さきほどまで真っ暗だった空間は、ただの部屋に変わっている。


 ここに、なんらかの魔物を入れていたのか。

 それとも、黒魔術による術式なのか。


「き、消えた……ど、どうします、この後……!」


 殺人の犯人は『誰かを贄にする』と言い残して消えた。

 一刻も早く探し出さなければ、被害者が増える。


「ヤツは、三人足りないと言っていた……すぐに頭数を揃えるつもりじゃろう」

「あいつは、オレらにバレたせいでなりふり構わなくなってやがる……今までは手を出さなかった町のヤツらも、目的のために殺すつもりだ」


 テルルとヴィルクリフは、厳しい表情で窓の外に目を向けた。


「わしとヴィルクリフは、一刻も早く町の皆に知らせに行く。おぬしは、エリアスを叩き起こしてくれ」

「あっ……そうだ、エリアスさん……!」


 ひとり、この会話に混ざっていない人物。

 まだベッドで眠っているはずだ。早く回復させなくては。


「お二人とも、気をつけて! すぐに後を追います!!」


 声をかけると、二人は片手を上げて反応するかしないかの間に、村人たちが集うであろう酒場の方へ走って行った。


 ひとり残され、急いでエリアスが寝ている部屋へ向かいつつ、脳内で状況を整理していく。


(……ザンギスさんが、ザングさんと自分の両親を、殺した)


 つまり、あのダイイングメッセージも自作ということだ。


 旅人や商人に見せて、同情を買う為だろうか? 悪趣味極まりない。


(じゃあ……殺した理由は……?)


『ある人を生き返らせるための魔術の生け贄』と本人は言っていた。


 そんなものが、この世界には存在するのか?


(そういえば……アスタリカさんのところの、執事さんも……)


 アスタリカの屋敷すべてと、アスタリカ本人を殺害しようとしていた。


 結局誰も殺せなかったようだが、もし屋敷がまるまる焼けていてかつ、火の周りが早ければ、大勢の人が焼け死んでいただろう。


(……大勢の人間がいなくなる事件、多くない……?)


 思い返せば、まず一番初めに訪れた村も、人っ子ひとりいなかった。


 そして、モルールーを訪れる前の村も、がれきに覆われて人の姿がどこにもなかった。


 逃げたり、別の場所を探したり、殺されたりしたにしても、まるまる人の気配がなくなるというのは、今思うと妙だ。


(……う~ん……考えてもわからない……とにかく今は、エリアスさんを起こそう……)


 私の貧しい頭では、深く考えても答えは出ないだろう。


 諦めて、向かった部屋のドアをノックと同時に開ける。


「どーもー、エリアスさん、起きてますか?」

「……あっ」


 バチッ、と目が合った。


 エリアスと、ではない。

 そこに現れていた、侵入者とだ。


「チッ、阿呆な服着た爆弾女か」

「ザッ……ザンギスさん!?」


 部屋の中にはザンギスが立っていた。

 エリアスが横たわるベッドの、真横にだ。


「なっ……ま、まさかエリアスさんを……!?」


 視線をエリアスへ向ける。


 胸は動いているし、表情も苦しむものではない。まだ、手を下す前のようだった。


「てっきり町中へ行ったもんだと思ってたがなぁ」


 ザンギスは片手で頭を掻くと、くるりと体をこちらへ向けた。


「ヴィルクリフならともかく、お前みてぇな頭おかしい恰好のヤツなんざ、贄にするのもバカらしいが……ま、町のヤツらよりはマシな養分になるか」


 彼はエリアスから離れ、失礼極まりない台詞を吐きつつ、ゆっくりとこちらに近寄ってきた。


 ジリジリと、ザンギスからは重たい圧を感じる。

 後ずさりしかけたものの、眠っているエリアスが視界に入り、グッと踏みとどまる。


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