↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
119/125

118話 ~正体~

「え……え? ど、どういう、こと……」


 まだ状況が理解できず、液体の入ったグラスと料理、そして、目の前に座ったままのザンギスへと視線を動かした。


 彼は、さきほどの驚きの表情を怒りに変えて、静かに言った。


「このジュースは……村の市場で仕入れて来たもんだ。村の奴ら……まさか、ここまで……っ!」


 彼は、ぎりぎりと奥歯を噛みしめた。


(……ザンギスさんが仕込んだのかと思ったけど……そうじゃ、ない?)


 恨めしそうにぶどうジュースに視線を向けた彼に、いろいろな混乱で首を傾げると、


「そうじゃのお。毒ではなく、睡眠薬の類のようじゃが」

「えっ……なんでわかるんです?」


 テルルが厳しい表情で言い放ったひと言に、ギョッと彼に視線を向けた。


「エリアスのヤツが、眠ってしまったからじゃ」


 クイッ、と顎を寝室へ向けたテルルに、


「えっ、だってエリアスさんは、ワインの方を飲んで……!」

「そうじゃな。……だから、どっちにも入っておったんじゃないか?」


 テルルは、なんてことのない口調で言った後、手持ちのグラスを揺すった。


「実はの、わしとヴィルクリフはまだ何も飲んでおらんかったんじゃ。エリアスだけがワインを飲んで……ああなってしもうた」

「そ……それは……」

「のぅ、ザンギス。こっちのワインも、市場で購入したんじゃろう?」

「え……あ、ああ……」


 テルルの問いかけに、ザンギスはやや呆然としたような顔で頷いた。


「お主、相当やばい状態らしいのぉ。いよいよ、狙われておるようじゃ」


 テルルはイスから立ち上がり、並ぶガラス瓶を一か所に寄せ集めた。


「チッ……なりふり構わずになってきやがったか……あいつらめ……!!」


 ザンギスも立ち上がり、手元のボトルをドン、とテーブルに置いた。

 そして、がりがりと頭を掻きつつ、ぺこりとこちらに頭を下げてくる。


「すまねぇ。まさか、こんなことになるなんて思わなかった」

「謝罪には及ばねぇよ」


 ヴィルクリフがヒラヒラと片手を振って、一歩、テルルと私の方へ近づいた。

 そして、並べられた瓶をひと通り眺め、頷く。


「ふーん……飲み物に、ね。なるほど」


 そしてザンギスの手元にあった瓶を拾い上げ、しげしげと眺めている。


 眠り薬。なんで、毒薬じゃなかったんだろう。

 自分がそんなことを考えていると、ザンギスはググっと眉を寄せて、叫んだ。


「これでハッキリしたぜ……やっぱり、村の連中がおれのことを狙ってると……そして、うちのジジイと両親をやったと……!!」

「そうじゃのお、ハッキリした、というわけじゃ」


 テルルも頷き、冷たい瞳でザンギスを見据えた。


「お主が……お主こそが、我々を害そうとした、ということが」


 ――えっ?


 発そうとした言葉は、あまりの冷えた雰囲気に、声にならずに霧散した。


 テルルはスッと目を細めて、目の前の男を睨んでいる。呆然と佇む――ザンギスを。


「は……は、はあ? なに言ってるんだよ。言っただろ、そのジュースもワインも、市場で買ったって」

「ふむ……では聞くが、そのワインをがぶがぶ飲んでおるはずの、お主はなぜ眠らないのじゃ?」


 テルルの指摘に、ハッとザンギスのグラスを見た。


 確かに、彼は乾杯もしているし、その後もどんどん酒を飲んでいた。


 ヴィルクリフの手元に置かれた、ザンギスが持っていた瓶。その中身も、半分以上減っている。


「ぜ、全部に入ってるわけじゃねぇのかもしれねぇし」

「……ふむ? なるほど。では」


 テルルが、ザンギスが持っていた瓶に手を伸ばす。

「これをハナで試すが、よいな?」

「……はあ、好きにしろよ。でも言っとくけどな、おれは薬屋の孫だぜ? 薬には耐性がついてんだよ。睡眠薬くらいならどうってことねぇ」

「ほお? ……なるほど」


 ザンギスの呆れたような声に、テルルは再び動いた。さきほど爆発したワインの元の瓶を取り、空いているグラスに注ぐ。


「飲んでもらおうか、これを」


 間違いなく、睡眠薬入りのジュースだ。


 固唾を飲む皆の前で、ザンギスは一度チラッとテルルを見た後、ヤレヤレと首を横に振った。


「オイオイ。いくらおれでも、なんか入ってるってわかってるモノを、改めて飲む気にはなれねぇよ」

「なかなか、苦しい言い訳じゃな」

「はーっ、勘弁してくれよ。第一、なんでおれがあんたらを眠らせる理由があるっていうんだ?」


 ザンギスはイスを蹴るようにして立ち上がると、バンッ、と強く部屋の壁を叩いた。


「おれは、両親とジジイ殺しの捜査を手伝ってもらってんだぜ? あんたらに怨みなんてねぇし、眠る場所だって貸してる。豪勢にパーティまで開いてやってるじゃねえか」


 声に怒りをにじませる彼の言葉に、う、とたじろぐ。


 言っていることは最もなのだ。

 彼に、私たちを陥れるメリットはない。


 おまけに、ザンギスはヴィルクリフの知り合いでもある。

 万が一、ヴィルクリフのことを憎く思っていたとしても、他のメンバーまで巻き込む必要はない。


 いや、手出しされないように、という可能性もあるだろうか?


 必死に理由を考える自分の横で、テルルは深々とため息をついた。


「なるほどのぅ。認める気はないということか」

「認めるもなにも……そんな気はないんだから当然だろ?」


 なにを言っているやら、と言わんばかりに、彼はテルルを睨みつけた。


「なあヴィルクリフ。お前も言ってやってくれよ、そいつらに。おれが、そんなことするわけがねぇって」


 そして、今までずっと黙り込んでいたヴィルクリフに声をかけた。


「おれがお前にそんなことするわけねぇだろ? 傭兵時代、そりゃケンカもしたが……お互い、ばかなことし合って笑ってたじゃねえか」

「……ああ、まったくだな」


 ヴィルクリフはひとつ頷くと、スッとザンギスの方へ近づいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。