106話 ~新しい服2~
「ふむ……暗い場所だと骨が目立つが、明るい場所だとさほど気にならんなぁ」
「そ……そんなわけあります!?」
「あ~……太陽の光が当たると、ローブ全体が白っぽく見えて、確かに骨が目立たない……かも?」
テルルの横にならんで、エリアスもまじまじと確認する。
「んあ? 言われてみりゃあ……?」
ヴィルクリフが、反対側から首を傾げつつこちらを見る。
「そうじゃのお。今までの服よりはマシではないか? とりあえずは」
「そうねぇ……まあ、うん……」
「最悪、なんか研究者ってごまかしゃあなんとか……」
三人は、微妙な顔をした。
私はさらに微妙な心境になりつつ、言う。
「日中は目立たず、夜になると骨が光るって……それ、よりヤバい人感じ増してません……?」
「まあ、ヤバいかヤバくないかで言ったら、間違いなくヤベェな」
ヴィルクリフが、私の影響で知ったヤバいという単語を連呼する。
「色合いは控えめじゃがなあ……なんせガイコツじゃしなあ……」
テルルも、眉を寄せてしみじみと頷いた。
「うぐぐ……やっぱり前の服に……っ」
さんざん言われまくり、私が半イジケモードで着替えようとすると、
「まぁまぁ。町に入ったら、明るいうちの宿とれば大丈夫でしょ、ね?」
エリアスが、慰めるようにポンポンと肩を撫でてくれる。
「ほら、二人とも。ハナの反応が面白いからって、からかい過ぎよ」
「へーい。……ま、いいんじゃねえか? せっかく精霊の加護受けてるんだしよ」
「すまんのぉ。お主が次から次へと変な現象を引き起こすものでつい、な」
ヴィルクリフとテルルの二人も、本気でけなしていたわけではないらしい。
冗談というのはなんとなくわかっていたものの、はあ、と肩を落とした。
(いやしかし、なんでこんな変な服ばっかり……ハッ、もしかして、魔力といっしょに災難まで引き寄せている……!?)
恐ろしい考えがひらめいたが、深く考えないように心の底に沈めた。
その後、朝の食事を簡単に終えて、森の中を歩く。
精霊たちのサービスなのか、森の道は歩きやすいようにキレイに土がならされている。
おまけに、木製看板が道中に建てられており、方角や近くの町への行き先までわかるようになっていた。
「空気もだいぶ変わったのぉ」
「なんつーか、澄んでるよな。ちょっと青っぽさもあるっつーか」
「ヴィルクリフさん、空気の違いとかわかるんです……?」
「らしくねぇってのはおれも自覚してんだよ!」
からかい返すと、ヴィルクリフはぐぬぬっとこぶしを握り締めた。
そんな横顔を眺めつつ、エリアスが自らの頬に手を当てた。
「まあ、あんたの弟はわりと繊細な子だったしねぇ。そういえば、自然の草花にも詳しかったわ」
「あー、グリューくんでしたっけ。なつかしー」
グリューとブラウ。
あの二人に出会ったことが、もう、数年前くらい前に思える。
それほど、ここに至るまでのできごとが濃密だった、というのもあるだろう。
なつかしむ私の横で、テルルがほぅ、と頷いた。
「弟か。しかし、ヴィルクリフはなんというか、兄というより、弟っぽい感じがするのぉ」
「おいテルル、そりゃどういう意味だ?」
「ああ~わかります。で、エリアスさんは逆にお兄さんっぽいですよね」
「ええ? そうかしら。でも、三男って言うと、確かに驚かれるわねぇ」
「あー、オマエ、アスタリカさん以外にも兄さんがいるんだっけか。つーか、ハナとテルルこそどうなんだよ」
などと、たわいもない世間話をしつつ、町への道を進んでいた時だ。
ピカピカピカ……
ローブの中のなにかが、白く発光し始めた。
「おわっ! あ、姫様だ!!」
「おお……お前のその服、そうやって一部分が光るとなんつーか……スゲェな……」
「はいそこ! シャラップ!!」
ドン引くヴィルクリフたちを片手でシッシと遠ざけると、もう反対の手でお守りを取り出した。
「こんにちはアウロレシア様、聞こえますか?」
『……ああ、魔女様! ご無事のようで、よかった……!』
「ええ、私の方は……色々ありましたが、無事、まだ元気でやってますね」
『それがなによりです……! 兵たちから、あの町……サミコスで、恐ろしい魔物が出現したと聞いて……もしや、と』
お守りが、心細そうにチカチカと光を弱めた。
もう、城の方まで話が届いているのか。
あまりにも早いな、と内心ビビりつつ、頷いた。
「巨大なコウモリに似た魔物がでました。……もう、そちらにも伝わっているんですね」
『ええ、伝書鳩から。最近、やたら魔物が出現しているというのは、城の方にも通達が来ていたので、またか……という雰囲気ですが』
「魔物の出現……」
この森が瘴気だらけだった、というのも原因の一つだろうか。
いや、広い大陸だ。森の一つが瘴気まみれだったとしても、さほど影響するとは思えない。
(そもそも……この森、もともとは精霊がいるくらいキレイな森だったのに……どうして瘴気まみれになっていたんだろう……)
なにか、異変が起きているんだろうか。
答えの出ない問いにグルグルしていたところ、お守りの声がふと不安げに揺れた。
『あと……エリアスは無事なのですよね? 声が聞こえませんが……』
「もちろん! ちょっと待ってくださいね」
振り返って、やや気まずそうな顔をするエリアスを手招きする。
「あ……え、ええ、あたしは無事ですよ、姫様。ご心配をおかけして申し訳ございません」
『いいえ、とんでもない……我が国の責任ですから。元気にしてくれていればなにより……ああ、そうだ! おひとつ、確認しておきたいことがあったのです』
「……確認、ですか?」
改まって、なんだろう。
光るお守りを前に、エリアスと顔を見合わせる。




