105話 ~新しい服~
「……ダッサ」
と。
「なんで……なんで、骨? なんで、骨の……ガイコツの、服……!?」
ずざざっ、とひざから崩れ落ちる。
精霊たちが与えてくれた服。
それは、黒地に白で人体構造の骨が描かれている、なんちゃってハロウィン風のガイコツコスプレローブだったのだ。
骨の部分が、精霊パワーのせいなのかうっすらと蛍光で光っており、夜中これを見たらお化けか魔物と勘違いされること間違いなし。
そんな激ヤバ激ダサファッションだった。
「……まあ、精霊に服をもらうというのは、非常にその……光栄なことじゃし……」
「……まあ、前のよりはマシじゃね? その、露出度的にはさ……」
「……せ、精霊様に認められたってことでしょうし……えっと、元気だして……」
そして、最初は誉めていた彼らも、やはりファッションセンスのイカレっぷりは察しているらしく、フォローするような言葉をかけてきた。
「えっこれ、認められたんですかね? い、いやがらせの間違い、ではなく??」
「ぷっ……あっはっは! お前、マジで毎回、へんてこな服ばっか切るよなぁ」
「私のセンスのせいじゃないですからね!? 不可抗力です、不可抗力……!!」
ゲラゲラ笑いだしたヴィルクリフに反論していると、ふと、いったんはじけて離れた光が、ふわふわとまた光を集め出す。
ヤバイ。またなにか起きる。
構えた私の目の前で、それはだんだんと、人に似たフォルムを形作った。
『……魔導士さま……』
こだまのようにぼんやりとした、声とも呼べない、不思議な音が反響した。
『……魔導士さま……』
声は、目の前の光の集まりから聞こえている。
私はごくりと唾液を飲み込み、おそるおそる問い返した。
「あのぉ……もしや、私のことでしょうか……?」
『……はい……魔導士さま……ありがとうございました……我々は、力尽き消え去る寸前……こうして蘇ることができて、本当にうれしく思います……』
人型の光は、男性とも女性ともつかない声色で礼を言って、ぺこり、と頭らしき部分を下げた。
あ、ちゃんとお辞儀とかするんだ、精霊も。
なんてズレた感想を抱きつつ、両手を振る。
「いえいえ、とんでもない。……それで、あのー、この頂いた服なんですけれども」
『……それは、我々からのお礼です……』
「……お礼」
『……我々は、人の姿があまりわからず……この森にいくつもあった人の形を真似て、服をこしらえてみました……』
その言葉に、自らに与えられた服を見下ろす。
精霊ゆえに、人の美醜やファッションに疎いのは当然といえば当然だ。
しかし、今のセリフから察せられるのは。
「えっと……それってつまり、あの、白骨化死体がいくつもあったとかそういう……」
『……あなた様から頂いたお力で、これから我々はこの枯れ切った森を再生いたします……そのお礼として、そちらの服には我々の加護の力を宿しました……あなたの旅の一助に、きっとなりますよう……』
「え、あ、ありがとうございます……でもあの、白骨化死体のデザインは、その」
『……さようなら……さようなら……!』
光は、一方的に礼を述べると、そのままふわっと空に浮かび上がり――パアッ、とひときわ大きな光を放ち、四方八方に飛び散っていってしまった。
「…………」「…………」「…………」「…………」
四人で、しばし。その場で黙り込む。
「……まあ、悪気はなかったんじゃないかのぉ」
「正直……穴ぼこファッションよりはマシかな、とは思ってますけど……露出度的な意味で……」
「まあ……最先端の意匠、とも思えなくもないぜ、うん」
「あれね……もし、あたしたちの誰かが大怪我を負った時、骨の位置がどこだかっていうのは、それを見れば把握できるわね……」
「なんというポジティブ……」
と、色々あったが、瘴気のなくなった森で一夜を明かし、翌日だ。
「……なんか、木、また伸びてますね……?」
例の巨大樹の下でひと晩過ごしたのだが、太陽の光が上って明るくなってくると、明らかに空気が一変した。
今までは、瘴気に満ちてうす暗く、空気もなんとなくどんよりしていた。しかし今は、しなびて枯れていた木々が生き生きと根を張って、灰色でしかなかった土にも、いくつもの若葉の色が見える。
「精霊の力はとんでもないのぉ……いや、こればかりは、お主の力がスゴイ、というべきかもな、ハナ」
「え!? いやぁ……といっても、私自身の力というわけでもありませんからねぇ……」
いまだ、この湧き出るほどの魔力の根源がわかっていないのだ。
転移して来たのが間違いなくなにか作用しているのだろうが、現状、魔力が無限、というのが恐ろしくもある。
うーん、と考えモードに入っていると、ヴィルクリフが、横からマジマジとこちらを見つめてきた。
「いやーしかし……お前のその服……なかなか目立つな」
「まぁ……ドクロだものねぇ……精霊たち、よほど白骨を見たのかしら……」
「正直、この服で村や町に入るの、今から恐怖ですね、マジで」
ドクロ服を着た旅人。明らかになんかヤバイヤツだろう。
ヘタしたら、魔女どころか死神とか悪魔とかカン違いされる恐れすらあるのではないか。
戦々恐々とする私に、テルルがマジマジと服を見て首を傾げた。




