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異世界転移したら無敵になったけど、服が拒否されました  作者: 榊シロ


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104話 ~精霊~


 金色の光をキラキラとまとい、青々としげった葉を伸ばす、大きな木。


 幹の太さは、自分が抱き着いても腕が回らない――いや、ここの四人がそれぞれ抱き着いてもまだ足りないほど太く大きい。

 木の高さなど、見上げても果てが見えないほどだ。


 頭上には、想像した通りのピンクのつぼみが、まるまると大きく実り、今にも花が咲かんばかりだ。


「ハナ、よくやった。まさに想像通りじゃな」

「えっ!? あ、え、えへへ……」


 テルルが、珍しく感心したように呟くので、思わず照れて頭を掻いた。


「えっと、その……じゃ、あとはこの巨大樹が、自らの力で浄化してくれるんでしょうか」

「うむ、そうじゃな……すでに神々しい気配を感じるが、きっとあのつぼみが花開けば……」


 テルルの言葉に、皆、そろって大木を見上げる。


 太く大きく、もはや、この森の一番のシンボルと化した元若木。


 それは、私たちの視線に応えるかのようにフワッと風に葉をたなびかせ――、


 パァアアッ


 次の瞬間、ピンクのつぼみが花開いた。


「わ……光が……明かりが……!!」


 咲いた花の中から、小さな光が湧き上がり、宙をふわふわと舞う。


 その動きは、まるでホタルのよう。

 咲き誇る花からいくつも生まれた光は、空を踊り、ゆったりとした動作でこちらに近寄ってきた。


「これは……まさか、精霊……!?」


 光のひとつにまとわりつかれたエリアスが、パチパチと目をしばたいた。


「セイレイ、って……あの、物語に出てくる精霊か?」


 頭上をからかうように飛び回る光を凝視して、ヴィルクリフも首を傾げている。


「ほう……なるほど。この森に本来生息していた精霊たちじゃな。おそらく、かなり衰弱していたところ……この魔力の根源を見つけ、つぼみから生まれなおしたんじゃろう」


 鳥の形から人型に姿を戻したテルルが、土の上であぐらをかきつつ空を見上げた。

 そんな彼の肩にも、いくつもの光がふよふよと近寄り、幻想的な雰囲気を醸し出している。


 なんとなく納得した風を漂わせる三人に対し、私はおずおずと、片手を上げた。


「あのー……この光たちは、精霊……っていう存在なんですか?」

「そうじゃ。瘴気によって冒され、消滅寸前だったのじゃろうな……精霊のいない森は、枯れて荒地になると言われる。この森も、そんな感じじゃったろう?」


 そう語るテルルに同意するかのように、周りの光がピカピカと瞬く。


「でも不思議よね。精霊って、人の前に姿を現さないはずだから……」

「まあ、人とは基本、関わらぬ生き物よ。わしとて、こんな光景を見るのは初めてじゃ」


 今まで、瘴気ですっかり濁ったような空気だった森の中が、太陽の光と精霊たちの光とで、まるで早朝かのようにまばゆい輝きに包まれている。


 これは、逆に葉緑素によくないのでは? なんて考えている横で、ヴィルクリフがキョロキョロと周囲を見回した。


「なあ、テルル。こいつら、たぶん歓迎してくれてるんだろうが……こう、意志の疎通っつーのは出来ねぇのか? 周り、しゅるしゅる飛んでるだけなんだが」

「むぅ……精霊が話す言語は、われわれとは違うからのぉ」

「じゃあ、とりあえず……この森はこれで一安心、ってことで大丈夫そうですかねぇ」


 なるほど、と彼らの会話にふむふむと頷く。

 そんな私の方に、光がふよふよと集ってきた。


「え、ちょ……うわっぷ! 光……いや、この精霊たち、なんか顔面狙ってくるんですけどコレ、ぶわっ」


 顔に向かって、光がいくつもアタックしてくる。

 痛くはないのだが、ふわっと衝撃がくるので体がのけぞる。


「ハナ……あんた、なんかすごいことになってるわよ……」

「ぶふぉっ、うぐっ、え、なにこれ、いひゃっ」


 さきほどまで、木や森全体をふわふわ漂っていた光たちが、わらわらと一か所に――主に私の傍に集結し始めた。

 オマケに、あろうことか、私の顔や腕や足、背中など、あらゆぶ部分に向けて体当たりしてくるのだ。


「お前……なんか、灯台みたいになってんじゃねーか……」

「すごいのぉ。真夏の夜じゃったら、虫が大集合じゃなぁ」

「ちょっ、他人事だとおもっ……ひょわっ」


 しゅるしゅると光たちは体の周りに集結し、いくつもの輝きがひとつの光に収束して――、


 キラキラキラッ……


 ものすごい輝きが、体全体を覆った。


「……お、おぉお?」


 優しい布の感触が肌を伝う。


 パッ、と視線を首から下に移すと、今まで来ていた服の形が別のものに変化している。


 これは、精霊のご加護!?

 新しい力を宿した魔法の服が、お礼――!?


「……これは……精霊様方の、力の結晶……?」


 開いた口がふさがらない私を前に、三人も呆然とこちらの姿を凝視した。


「すげぇな……精霊たちからの送りものか……」

「認められたのじゃな……初めて目にするぞ、こんな現象」

「今、あたしたちはなにか……すごいものを見てるのねぇ……」


 三人は、この現象に感激しているようだ。


 私は、自らに与えられたその服を着たまま、くるっとその場で一回転し、思わず、耐え切れず、言った。

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