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9.覚醒②

眼前に死が迫る。



ーーーなんで? どうして? 僕はここで死ぬの? 信頼できる仲間と母さんように世界を旅して困ってる人を助ける。それが僕の夢だった。

その結果は、冒険者登録すら出来ずに仲間に裏切られて、魔物に食べられて終わりなの?



なんだよ、なんだよ、なんだよ、なんだよ、僕の人生はいったいなんなんだよ!!



 胸の中に強い憤りが跳ね上がる。ついさっきまで恐怖で震えて動かなくなっていた足に少しだけ活力が戻る。



「うわぁぁぁぁぉぉぉ!!!」



 その足でソラは全力で横に飛ぶ。



 死に体の獲物と見縊って命を刈りとろうしたブラックウルフの爪が空を切る。



「ガハッ、ゲホ、ゲホ」



 岩肌の地面を激しく転がり身体中を打ちつけらて、激しくむせ返る。身体中のあちこち擦り傷と打撲ができ痛みが走る。



 そんな獲物を見ながらブラックウルフはその足に淡い光を灯し始めた。



 スキル『俊足』ブラックウルフが得意とするそのスピードを大きく上げる身体強化の加護。



 一度狩り逃した獲物を確実に殺すためブラックウルフは万全の体制を整える。



 一方のソラは荒れた呼吸を整えながらもなんとか生き延びる術はないかと、恐怖にふやけた脳みそを必死に回し、装備を確認する。



 そしてその手は昨夜、ヨルから手渡された黒色のナイフに触れる。



 頭の中に昨日の夜、ヨルからかけて貰った言葉とソラのことを強い人と信じて疑わぬ純粋な瞳が映し出される。



 恐怖はある。自分にとって絶対的な存在だった母の命を奪った魔物は怖い。でもヨルの言う通り本当に心が強いのならばここで立ち上がらなければ、何もせずただ殺されたならば、自分を信じてくれた人に顔向けができない。そんなのは自分の憧れた冒険者じゃない。



 震えを抑えるために力一杯ナイフの柄を握る。そして腰につけたホルダーから黒色のナイフ抜き出した時、目の前のブラックウルフの姿がブレた。



「俊足!? これじゃブラックウルフにナイフ当てられない。こんなのって……」



 思わず口から弱音が溢れ落ちそうになった時、額がジュッと熱くなる。



ーーー私の故郷の言葉に『強い言葉には未来が宿る』っていうのがある



 それは自分を助けてくれた本当に強い女性の言葉。



「そうだ。当てられないじゃない。当てるんだ! 僕はソラ・スフィア。あの英雄シエル・スフィアの息子で英雄譚を継ぐ男だぁぁぁぁぁあああ!!!」



 ずっと口に出来なかった誇り(プライド)を吐き出した。ここに自分の全てを懸けると決めた。



 何かを狙ったわけじゃない。特別な技術を持ってるわけでもない。ただこんなにも弱い自分の背中を押してくれた人がいた。その想いに応えたかった。ただそれだけだ。



 自分の命全てを焼き尽くす覚悟で繰り出したナイフの一突きは猛スピードで飛びかかってきたブラックウルフの首元に深くその刃を沈み込ませていた。



 そして黒色の狼は2、3度その身体をビクビクと痙攣させた後、完全に絶命した。



「は、はは。やった。やったぞ! 初めて魔物を倒したぞぉぉぉおおお!!!!!」



 いったいいつぶりかわからない魂の底からの咆哮。



 身体は高揚感に支配され、心は充実に満ちる。



 しかしその時間は長くは続かない。



 仲間がやられたのをみて、残りの狼達が怒りの表情でソラに向かって襲い掛かってくる。



「せっかく初めて魔物を倒したのに死んじゃうのは変わらないか。でも、僕は絶対に最後まで諦めない。この最後の一瞬だけでも僕が憧れた冒険者の姿になってやる!!」



 いつの間にか震えがなくなった手でナイフを握り、構えをとる。生き残れる可能性は0%。ただそこにあるのは今まで心の奥底に眠っていた冒険者としてのうずきだ。



 地獄への階段を下り始めたソラが吠えた時、脳内に透き通った声が響く。



ーーーブラックウルフを倒しました。加護『授かる者』の使用が可能です。使用しますか?

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