10.覚醒③
頭に透明な声が響く。
突然の出来事に、脳の処理が追いつかない。いったいこの声はなんなのか疑問は止まることをしれない。
ただそれよりも、なによりもソラの脳みそのリソースを使った言葉がある。
「加護!? 今加護って言ったの!?」
そう自分は一生手に入れることはできないと思っていた加護。脳内に響いた声はそれを使うか? と聞いてきた。何が起きているかはわからない。でも確かに声は言ったのだ。
ーーー「加護を使用するのか?」
と。
「使う。もちろん使う! どんな加護でもいい。僕はソラ・スフィアは加護『授かる者』を使用する!!」
そう叫んだ時、ソラの目の前に幾重にも幾重にも重ねられた多重の魔法陣が展開された。
そして魔法陣一つ一つがとてつもない魔を放って高速に回転し出す。
円環達はまるで歓喜に震えるように大気を揺らしながら黄金の光を散りばめる。
これでも今までたくさんの加護を見てきた。それでもこんなに多重の魔法陣が出る加護も、黄金の光を放つ加護もソラは見たことがない。
幻想の真ん中に立たされているかのような状況に思わず唖然とする。
そんなソラを置き去りに幻想は眩い黄金の光を一際輝かせ、大気が軋む程の高音を奏で、ある一つのモノを空中に生成し、その姿を消した。
魔法陣が生成したソレは1人の人間だった。
腰まで伸びた金色の髪。背が高く華奢な身体。新雪よりも白い肌。豊満な胸。
まるで人形のような美しい女性が瞳を閉じた状態でそこにはいた。
そのあまりの美貌に絶世の美女という言葉はこの人のためにあるのではないかと思わず息を呑む。
そして美女はゆっくりと目を開ける。そのくっきりとした二重まぶたから覗かせた瞳の色は宝石のようなエメラルドグリーンだった。
思わず見惚れるソラに身にまとった薄手の白いドレスを風に揺らしながら美女が口を開く。
「ようやく、ようやく会えましたねソラさん」
風鈴のような涼やかで心地よい声音とは裏腹にその瞳は僅かに潤んでいた。
「えっ!? その、あの、僕を知ってるんですか?」
突然自らの名前を呼ばれたソラはいったい何が起きてるのかわからず、混乱し早口に言葉を繋ぐ。
「今僕は加護を使って、そしたらこんな綺麗な人が現れて、その人は僕のことを知っていて……」
「ふふ、聞きたいことはいっぱいありますよね。でも今はまだその時ではありません。先にやらなければならないことがあります」
その言葉にソラはハッと辺りを見回す。
ソラの出した魔法陣に萎縮してその足を止めていた狼の群れ達が再びその眼に殺気を宿して距離を詰めてきていた。
その光景にようやくソラは現実に足をつく。
ーーーそうだ。今は戦う時だ。僕が隙を作ってなんとかこの人だけでもここから逃さなきゃいけない。
ナイフを握る手に力を入れ、闘志を漲らせ狼達を睨む。
「そうでした。今の僕には疑問を解決するよりもやらなければならないことがあります。僕が今やらなければならないこと、それは……」
『戦って貴女の命を守ることです』と言葉を繋げようとした時だった。
ソラの言葉の先に美女が言葉を重ねる。
「そうです。ソラさん。この状況で1番初めにしなければならいことは別にあります。まずは『キス』話はそれからです」
「えっ?」
美女が放った予想外の言葉に思わず美女の方を振り向き、間抜けな声を漏らす。
しかし美女はそんなソラの頭と腰に細くしなやかな指を回し、優しく自らの身体に抱き寄せる。
突然の行動にされるがままソラはその豊かな胸に顔を埋める。何が起きたかわからず自分より背の高い女性を見上げると美女はその唇をソラに重ね紅い舌ゆっくりとソラの中へ忍ばせた。
「☆●□×ー?!☆ー?!×?。!??!?」
何が起きたかわからず真っ赤な顔で手足をバタバタさせて、訴えかけるが、美女は決してソラを離してくれず、かわりに優しくソラの頭を撫でた。
恥ずかしいような嬉しいような生まれて初めて感じる甘く脳がとろける感覚。わずか数秒の出来事なのに永遠に感じられる時間。
遠く耳鳴りがし、全身の力が抜ける。されるがままに優しく体のなかを支配されていく。
甘美な夢の中で宙に浮いてるような時間に目がトロンと落ちていき思わずその両手を美女の背中に回そうとしたとき、目の前の美女が優しく微笑みその唇をソラからゆっくりと離した。
綺麗な紅い舌が自分の中から名残惜しそうに糸を引き離れていく。
「あっ、」
思わず声が漏れる。
そんなソラを見て嬉しそうに笑顔を見せた後、美女は言う。
「ふふ、続きはまた今度です。さぁ、ソラさん準備は整いました。反撃の時ですよ」
ブックマークありがとうございます。
ソラの加護の登場です。
ちなみにソラの身長は163センチ。美女の身長は167センチです。頑張って背伸びすればソラからもキスできますね。




