7.ダンジョン②
「はぁ、はぁ、はぁ。旦那! その先の通路はダメです!! 多数の獣の臭いがします」
「ちっくしょうが! 目の前の通路がダメだと!? だったらどうしたらいいんだよ! 今俺らはハイオークに追われてるんだぞ!!」
「グ、グリードさん。そこ、そこに小さな窪みがあります! 僕たち3人くらいなら隠れられると思います!」
「あれか! いいか俺が一番奥だ。次はミギブ。外側がウスノロだ」
「そ、そんな僕が見つけたのに……」
「おい! なんかいったかウスノロ! なんだったらお前を通路に放り出してもいいんだぞ!!」
「な、何も言ってません!」
「旦那達、通路の先の奴らがこっちに向かってきました。どっちでもいいんで早く窪みに飛び込んでください!」
ミギブの掛け声に急かされグリード、ミギブ、ソラの順で窪みに飛び込み、そこにあった岩陰に身を隠す。
その後ろを豚の頭をした二足歩行の獣が辺りを物色するようにキョロキョロと目玉を動かしながら歩いてくる。
3人は身動き一つせず、その息すら殺す。額に浮かぶ汗が乾いた地面に落ちる音すら背筋に冷たい悪寒を走らせる。
そして10分程経ち、ようやくミギブがその口を開く。
「いきました。ハイオークも他の魔物もこの近くにはいません」
「ほんとうか? ほんとにもう大丈夫なんだな!」
「ええ、たださっきのハイオークに追われてだいぶダンジョンの奥まで来てしまったので戻るにしても命がけの行軍になることに変わりありません」
「ちっ、まさかこんなことになるなんて」
グリードが苛立ち、ダンジョンの壁を殴る。
「グリードさん。そんな事したら音で魔物がきちゃうんじゃ……」
「うるせぇ、ウスノロ! ぶっ殺すぞ!!」
「ひぃっ、す、すいません」
「ううっ、やっぱりC級なんて無理だったんだ。ダンジョンに入る前、無理にでも帰ってればこんなことにならなかったのに」
「お前もうるせぇぞミギブ! まさかC級の魔物があんなに強いなんて知らなかったんだよ!! 今更ごちゃごちゃ言ってもしょうがねぇだろ。そんな事よりさっさと来た道を戻るぞ。ぶん殴られたくなかったら早くガイドしろミギブ!!!」
グリードの言葉に何か言い返そうとするが、諦めたようにミギブは鼻をひくつかせ周囲の魔物の居場所を探る。
「まずはあっちに進みましょう。まだ獣の臭いが薄い。ただあっしの嗅覚強化はあくまで獣の臭いがわかるだけです。魔物に対して気配を消せるわけじゃありません。さっきみたいに挟み撃ちにあったら今度こそ、今度こそ、ヒック、ヒック」
「泣くんじゃねぇ! いいかD級の魔物なら一応俺は何回か戦って勝った事がある。C級ダンジョンといってもD級やE級の魔物も出てくるんだ。最悪挟み撃ちにあったら弱い魔物の方に進めばいい。それにダンジョンに入る前に言っただろ俺には切り札がある。最悪それを使えば俺とお前は窮地を脱出できる」
「グ、グリードさん。切り札なんて持ってるんですか? それを使えば僕らは助かるんですか!」
『切り札』という言葉に反応してソラがその目に希望を抱かせる。
「うるせぇウスノロ! 今はお前に話しかけてねえんだよ。勝手に話しに入ってくるな!」
「す、すいません!! で、でも窮地を脱出できる切り札。これでもしかするとこのダンジョンを抜け出せるかもしれない……」
怒られながらも目の前に吊るされた僅かな希望に思わず拳を握る。
そんなソラの姿を見てグリードは誰にも聞こえないような小さな声で
「まぁ、コレを使うことになったらお前はこの世からいなくなるんだけどな」
冷ややかにそう言葉を漏らした。
次回「覚醒」




