6.ダンジョン
ーーーダンジョン。それは神が人に与えた試練。ダンジョンには数々の秘宝が眠っている。しかしそこには数多の魔物が生息する。
そして強い魔物がいるダンジョンほど貴重な宝が眠る。
そのため欲にかられた冒険者は時に自らの力量を過大に評価し、実力以上の冒険に進む。
ああ、なんて愚かなのだろうか。自分の命以上に価値のある宝などは存在しないのに。
『アリシオン創世記』より
「だ、旦那。ほんとに行くんですか? ここC級ダンジョンですよね。こんなことを言うのも恐れ多いですが、旦那はD級、あっしはE級、ソラに至っては冒険者ですらありません。ダンジョンの適性ランクはその級と同じ冒険者が最低5人です。ちょっとこれは少し無理がある気がするのですが」
「おいおい、そんなことはわかってるんだよミギブ。いいか逆に自分の級より下のダンジョンに行く時は、その最低人数って奴は減っていくだろ。なんならソロ踏破してもいいくらいだ。実際昨日潜ったF級ダンジョンは3人で楽勝だったしな!」
「ま、まあそうですが、でもここはC級ダンジョンなのでむしろあっし達の冒険者級より格上だと思うのですが」
「冒険者級ってのは必ずしも実力に見合うとは限らない。本来ならA 級の実力を持っているのにクエストに恵まれなかったり、何かしらのペナルティをくらってたりして実力より低い級になってる奴もいる。なぁミギブ、ナイトランドはクエストに恵まれていると思うか?」
「まぁ、ナイトランドは比較的に安全なクエストが多いですね。C級以上のクエストなんかはほとんどみないですし、ただD級〜G級のクエストは豊富にあるのでわりと恵まれているほうかと思います」
「か〜っ。ミギブお前はそんなんだからE級どまりなんだよ」
「うっ、すいません」
「いいかナイトランドは世界の8大国家の中でも軟弱者の国なんて呼ばれてる。その理由は簡単だ。出てくる魔物が弱くて高難度のクエストが発生しないからだ。
これじゃ冒険者も育たないし、本当に強い奴も適性な評価を受けれずに埋れちまう。この俺のようにな」
「つまり、何が言いたいんですか?」
「ようするにだ。もし俺が今ナイトランドじゃなく例えば砂漠の国サンドランドなんかで冒険者をしていたらB級以上にはなっているはずだ」
「は、はぁ。なるほど」
「なんだまだピンと来てねぇ顔してんな。つまり俺の本当の実力はB級程度はあるってことだ。つまりこのC級ダンジョンでもお前がサポートすればある程度の踏破は可能ってわけだ」
「旦那がB級……いくらなんでもそれは」
ミギブが思わずそう口にした時だった。
ダンッという音と共にグリードはミギブの脇にある岩を思い切り蹴りつけた。
さらにミギブを睨みながら背中に背負った曲刀に手を触れ低いトーンでいう。
「おい、もしかしてだけどよ。今俺のことをバカにしたか?」
「い、いえ滅相もごさまいません!」
「それじゃあ、俺の適性級はなんだ?」
「B級です!それも限りなくAに近いB級だと思います!!」
額に脂汗を流しながら早口でそういうと2人の間に緊張が走る。そして少しの無音を挟んだ後、グリードはニンマリと笑った。
「ガハハハ! そうだよな! よくわかってるじゃねぇか。よしっそれじゃあさっさとダンジョンに入ろうぜ」
「へ、へい! すぐにいきましょう。グリードの旦那が一緒だと心強いです」
「ああ安心しろ。それにいざという時の切り札もあるからな」
そういうと胸元から赤黒い液体の詰まったビンをミギブに見せた。
「な、なんですかそれ? うっ、それになんかちょっとその瓶嫌な臭いがしますよ」
「流石嗅覚強化の加護持ちだな。ま、こいつはいざっていう時のための秘密兵器だ。これさえあれば俺とお前は何かあっても安全に帰れるさ」
「は、はあ」
「おいウスノロ! いつまでボサッと突っ立ったんだ!! ダンジョンに入るぞさっさとこっちに来い」
「は、はい。すいません!」
ミギブとグリードのやり取りになるべく関わらないように少し遠くから2人を見ていたソラは駆け足で2人の後を追いダンジョンへと入っていった。




