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50ルナの意地


      ~30分前 《新月の祠》 ~



 漆黒の鳥が自らの身体を傷つけたものを許さぬと金色の瞳を汚く濁らせ、天高くから翼を広げ冒険者たちに向かって突っ込んでくる。



「「うわぁぁぁぉ」」



 翼に打たれたものたちの悲鳴が至る所で木霊する。



「あんなの食らったらひとたまりもないぞ。なんとか俺は避けれてよかったけどよ」



 クライフの一撃を避けた冒険者は安堵の息を吐き額の汗を拭おう腕を上げた。



「え? な、なんだよこれ!? 俺の、俺の腕がぁぁぁ」



 そこにはクライフの羽の模様と同じ目が浮かび上がりギョロギョロと目玉を動かしていた。さらにそこから継続的な痛みが身体を蝕む。



「あれはニーズヘッグの呪い! すぐに対処しなければ」



 目玉が浮かんだ者達に向けてルナが魔法を展開する。



「古の女神が育てし神秘の泉。浄化の力をもって邪悪を滅し死の運命に抗え。浄化魔法【運命の解呪】」



 ルナの周囲から大量の聖水が巻き上がる。そしてそれらが空から雨のように降り注ぐ。



「これは聖水の雨か。とんでもねぇ魔法を使いやがる」



 空から降り注ぐ聖水を浴びた目玉が悲鳴を上げて次々と潰れていく。さらにクライフ自身も聖水を浴びて苦しむようにもがいている。



「お前らボーっとしてんじゃないよ。チャンスだ! 今のうちに遠距離攻撃の手段がある奴は攻撃。呪い体制のある奴らも手を休める暇はないよ。今のアイツが町に繰り出したらどうなるか想像つくだろう。自分の愛する者、大切な者を守るために抗え戦士たち!!」



 ミルの鼓舞に怒声が響き加護が乱舞する。



 空中には弓に氷、火球が乱舞しその間をすり抜けるように耐呪の加護を宿した戦士達が駆け抜ける。



 手に持った武器に守護の想いを込めて、放つ一撃に信念を刻んで猛攻をしかける。



命懸けの特攻ともとれるその行為。

そこに理由はある。

たった一度翼を広げてクライフが突っ込んできた。

ただそれだけのことですでに羽に当たった冒険者たちは地面に倒れ動けなくなっていたのだ。

その冒険者の数はクライフ討伐に参加した人数の1/3にも達していた。



 さらに近づくだけで蝕まれる瘴気。ルナの魔法がなければ地面に伏す者の数は半数以上に達していた。こんな化物を町に解き放つわけにはいかない。避難が進んでいるとは町にはまだ残っている人がいる。そこに自分の大切な人もいる。



 なんとしてもここで片をつける。今回討伐に参加したのは最低Dランク以上の冒険者たちだ。熟練された彼らの渾身の一撃が次々にクライフを襲う。並みの魔物ならもうすでに絶命していないとおかしい気迫の連撃。



 しかしその鳥は多少の痛みを感じつつも悠然と自らに刃を振るうもの達を見下ろした。そして大きく一鳴きすると、その身体を中心として空間が黒く歪み、翼の目が一斉に見開いた。



 たった一瞬、一秒にも満たないその刹那の時間の後、その場に立っていられた冒険者は二名の元B級の冒険者と、数名のC級冒険者、そして金色の髪を揺らす世界樹の娘だけだった。



 そしてクライフはほとんど立つ者がいなくなった洞窟を見渡すと出口に向けて一気に飛翔する。



「いけねえ。あの野郎町に出るつもりだ!」



 ボロボロの身体でダンテが振り絞るように声を出す。



 その言葉に咄嗟に張った防御魔法のおかげで難を逃れたルナの脳裏にソラの顔が浮かぶ。



「私約束したんです。あの人の笑顔のためにニーズヘッグを絶対倒すって。だから意地でもここは通させません!」



 突進するクライフの前に決意を込めたルナが立ちはばかった。


次話で49話に話が繋がります。

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