49.DAY3 ソラの思い出
昔母さんに言われたことがある。
「ねぇソラ。別に私が冒険者やってるからってソラも冒険者になることはないんだからね。他になりたいものが出来たら迷いなくそれを選択していいから。その時母さんはあんたの夢をちゃんと応援してあげるからさ」
「ううん。僕は母さんと同じ冒険者になりたい!」
「そうなの? でも冒険者なんて危ないことばっかりだし、血なまぐさいし、人のために頑張っても恨まれることもあるし、なかなか大変な仕事だよ」
「でも僕冒険者になる」
「なんでそんなに冒険者になりたいの? 本当に楽しいことより辛いことのほうが多いんだよ」
「だって、誰かを助けときってみんな笑顔なんだもん! みんな笑っててありがとうって言ってて、幸せそう。そんな幸せをお母さんはつくってるんだよ。だから僕も冒険者になって幸せをつくりたい。幸せがつくれるってなんか神様みたいでカッコいいしね」
「神様・・・か。やっぱり子供っていうのはいいね。そうだねじゃあソラは今は天使で将来は冒険者兼神様に決定だね。で、お母さんとの約束ね。幸せの神様は絶対に相手に涙を零させないんだ。だから目の前で涙を流している人がいたらソラが受け止めてあげるんだよ。その時にソラ一人の力じゃ救えなかったら母さんも力を貸すからね」
「うん。僕頑張る。絶対にお母さんみたいな人になるね」
そういえばあの時の母さんはすごい嬉しそうに笑ってたな。
小さな窓から見た町の景色は自分が知ってるナイトランドの景色とはまるで違った。
町は閑散としており、いつも人でごった返している商店街にも人影一つ現れていない。
その代わり町の外へと続く門の方にはズラリと行列が出来ている。今はクライフ発見から三日目だ。ギルドは混乱を防ぐために三日に分けて人を外国へと逃す手はずを整えた。事実、この三日という工程でも人口と門の大きさを考えたらかなり無理のある日程だろう。
でもあらゆる人たちの協力もあり現在は3/4程度の人達がこの国を出たという。残ったのは行列に並ぶ残りの避難民とクライフと戦う勇敢な戦士と自分のように逃げる気も戦う気もない世捨て人だ。
「今日で三日目か。みんなもうクライフ倒したかな。そういえば部屋から出るときルナさん泣いてたよな」
脳裏に母の笑顔とルナの笑顔が浮かぶ。胸の奥がギュッと何かに鷲掴みにされるように痛くなる。
「大丈夫だよ。あんなに冒険者の人がいったんだもん。それにギルド長やミルさんまでいるんだから。僕なんかが言ったところで足手まといだ」
―――ソラの強さはそんなものかい?
頭の中で透明な声が響いた。
「え? 今のって新しい加護を使えるようになったときに頭に流れてた声。いつからか聞こえなくなってたのに何で今更」
―――幸せの神様になるんだろう? 今のソラは人の涙を救えるのか?
「なんでそのことを!? だってそれを知ってるのは僕と母さんだけ。もしかして君は母さんなの!!?!?」
―――少しだけソラの背中を押せる力を渡すから、だから今のソラの大切な人を泣かすんじゃないよさあ絶望はすぐそこまで来てる。大切な人と世界を救えソラ。それが英雄シエル・スフィアの息子ソラ・スフィアだ!
「待って、母さん! 母さんなんでしょ!! もっと話したいことがあるんだ。なんで、なんで答えてくれないの。母さん!!」
ソラの問いかけに透明な声は何も返さない。ただただ虚空に叫ぶソラに聞こえるのは反響する自分の声だけだった。
また、あの声が聴きたくて母の温もりを感じたくて耳を澄ました先に聞こえたのは母の声ではなく人々の叫び声だった。
何事かと思い外に出るとナイトランドの空に異形の怪鳥が舞っていた。さらにその鉤爪には金色の髪に白い肌をもった美女が捉えられていた。
「ルナさん!?」




