48.DAY3 新月の祠の戦い
新月の祠に轟音が鳴り響く。
「まだです。あの程度のダメージじゃ倒すには程遠いです」
「言ってくれるねぃお嬢ちゃん。それならこれはどうだい? 【羅刹】!」
「ギぇぇエエエエッッっっつっつ!!」
大樹に縛られた死を呼ぶ鳥が叫び声をあげる。その周りを30名近い冒険者が取り囲む。
それぞれがありったけを込めてクライフに攻撃していく。その一撃一撃は少しずつだが確実にクライフの体力を削っていくが、とどめを刺すにはあまりにも遠い一撃だった。
「火力が足りない。奴のDEFを命を奪えるほどの火力が」
「ちくちょう現役時代ならもっとアイツにダメージを与えることができるのに」
「ごちゃごちゃいうんじゃないよ。確実にダメージはたまっているのは間違いない。そんなことより嬢ちゃん。あの木の根っこはあとどのくらい持つんだい?」
「このまま何事もなければ後10時間ほどかと。それまでに住人の避難並びに戦える人達の配置を終わらせないといけません」
「10時間か。なんとかギリッてとこだな。もしソラや姉ちゃんたちクライフを止めてくれていなかったらと思うとゾッとするぜ」
「そうさねぇ。ダンテここらで一発重いのかましとくかい?」
「そうだな。出し惜しみはなしだ。一回使うとしばらくは使えないが、残り時間を考えてもいいタイミングだしな。いくぜ【戦神千斧】!」
「【戦神千拳】」
二人の斧と拳に大気中の魔が集中していく。
その光景に周りの冒険者たちから簡単の声が漏れる。可視化できるほどの魔の集中。それは次に繰り出される一撃の威力を物語っている。
「「いくぞ(よ)」」
二人が同時に大地を蹴り、クライフに向かう。その様子を見てクライフが今まで以上に大樹から抜け出そうと藻掻きはじめる。クライフもまたあの二人の次の攻撃がいかに強力かを肌で感じているのだ。
「「ウォォォォォおおオオオオおおッ!!」
雄たけびと供にまずはダンテが思い切りクライフへと飛び掛かる。そしてダンテの持つ巨大の戦斧がクライフの脳天に向けて叩きつけられる。
「くたばりやがれ!!」
「ギぇぇぇエエエエエッッツッツ!?!?!?」
その一撃の重さにクライフの首が地面に向けて一直線に落ちていく。
そしてそのクライフの首の真下に一つの巨大な人影が立っている。
「おいおい。そんなに痛そうに鳴くのはダンテじゃなくて私の一撃を受けてからにしてくれないかねぇ。あんたはうちの従業員を傷つけた。その罪は万死に値するよ。くたばりな!!」
急降下するクライフの顔面めがけてミルが加護によって大幅に強化された拳をアッパー上に叩き込む。上と下からの同時に衝撃にクライフの口から紫色の血が噴き出した。
「効いてる! 効いてます!!」
「当たり前だ。俺達の最強の加護だぞ」
「でも効いてはいてもくたばっちゃくれないんだねぇ。私達の腕も訛ったね」
二人の攻撃をうけて苦しそうに呻いている。だが裏を返せば呻き声をあげるだけの体力はあるということだ
「だけど、かなりクライフの体力を削ったことに間違いはありません。このまま攻撃を続ければもしかすると本当にこのまま倒せるかも。そうしたらソラさんも元気になってくれるはず」
ルナが瞼の裏側にソラの姿を描いたときだった。
「おいクライフの様子がおかしいぞ!!」
ダンテの声が新月の祠に響いた。
その声にルナがハッと瞼を開ける。そこにはクライフの漆黒の翼に描かれた無数の瞑った目が一斉に見開かれた。そして紋様の目玉が紫色に輝きながらゆらゆら揺れはじめる。
「な、なんなんだよあれ。気持ちわりぃ」
たまらず冒険者の一人が悲鳴をあげる。
「なんなんだいあれは。でも確か5年前に現れたクライフの翼もあんな風に目玉がギョロギョロと動いていたねぇ」
皆がさらに異形が増したクライフに思わず攻撃の手を止めた中、真っ先に異常に気付いたのはルナだった。クライフを縛っている世界樹の根が紫色の瘴気に侵食されて腐り始めたのだ。
クライフは命の危機を感じ成長したのだ。短期間で雛から成鳥になったように、ここでさらにもう一段階高みへ、世界を滅ぼせる力を手に入れた。死を呼ぶ鳥、絶望の怪鳥クライフ。その身体がルナの魔法から解き放たれダンジョンの空高くに飛翔した。
「皆さん逃げてください!!」
ルナの声だけがむなしくダンジョンに響いた。




