34.レベルアップ
ソラのナイフが振り抜かれた時、ズルリッと上半身と下半身が滑り落ち、レベルゴーストはその身体を霧散させた。
「やった! レベルゴーストを倒した! ヨルちゃんのおかげだよ。ありがとう」
興奮気味にヨルの方を振りかえる。
「ふにゃ~ん」
するとそこには前のめりに倒れて脱力してるヨルの姿があった。
「ヨルちゃん!?」
「大丈夫。地獄の門使うとだいたいこんな感じだから。ちょっと休んだら走れるくらいには回復するからほっといて~」
顔だけこちらに向けてひらひらと手を振る。
「【俊足】」
手を振るヨルの元にソラが一歩で駆けつける。そしてそのままヨルを背中に乗せてやる。
「ふぇ、ふぇっ!?」
「ヨルちゃんのおかげで僕のレベルを取り戻せたのにヨルちゃんを冷たい地面の上で寝かせとくわけにいかないでしょ。僕あまり背が大きくないから景色はよくないと思うけど我慢してね」
「えっ、でもそんな悪いよ。それにルナさんだっているし」
「ええ、正直ソラさんの背中にのるなんて、不服ですがでもヨルさんのさっきの活躍をみたら文句はいえません。でも不服です! 今度私もおんぶしてくださいね!」
「というわけだから今はゆっくり休んで」
「ほ、本当にいいの? そしたら少し甘えちゃおうかな。ソラお兄ちゃん」
するとギュッとソラの首に手を回し抱き着いた。
「うっ、背中になにか柔らかい感触が……」
「あれ? ソラ君いまスケベな顔したでしょ? ふふふ、私だっていつまでも子供じゃないんだよ。胸だってちゃんと成長してるんだから。ほらほらもっと確かめていいんだよ?」
ソラの背中でヨルが身体を上下にゆすりだす。そのたびにソラの背中に幸せな感触が上下する。心なしか柔らかさの中心が少しづつ固くなってるような気がする。
「ちょ、ちょっと待ってヨルちゃん。ダメだっておとなしくしてって」
「あ~今度は鼻の下が伸びた~。やっとソラ君も私の色気に気づいたね。それじゃ、次はこんなのはどうかな」
「ちょっと、待ってヨルちゃん今度は何するの? あっ。それはだめ!」
―――ヒュンッ
ソラがだらしない顔で声を上げたとき、ソラとヨルの間を白色の矢が駆けた。
矢のきた方向を二人して振り返るとそこには驚くほどの無表情で立っているルナがいた。
「あら? 間違えて白魔法を暴発させてしまいましたわ。お二人とももしまた暴発して頭を打ちぬいてしまったらごめんなさいね」
「目が座ってる。……ねえソラ君、私ルナさんにおんぶしてもらってもいいかな?」
「うん。僕もそれがいいと思う。……これからの人生のためにも」
★★★―★★★―★★★―★★★―★★★―★★★
「まったく。ここはダンジョンなんですから、節度を持った行動をとらなければいけません。そこらへんわかっているのですか二人とも」
「「はい。すいません」」
「うう、でもなんかルナさんに言われても説得力がない気が……」
「何か言いましたかヨルさん」
「何も言ってません!」
ルナの背中でヨルが即座に否定する。
「まあ、でも地獄の門はすごい加護でした。確かにチートと呼ばれるだけあります」
「うん。でも見ての通り使いどころを間違えると一気にピンチになっちゃうからね。ミルさんは鍛えれば地獄の門を使っても動けるようになるはずだって言ってたけど先は遠いよ」
「でもその反動を抜きにしても凄かったよ! あんなレベルの黒魔道、ベテランの魔導士の人でも使える人は少ないんじゃないかな。おかげで僕のレベルも戻ったし」
「レベルで思い出しましたけど、お二人ともレベルが大分上がったんじゃないですか? レベルゴーストを倒すとゴーストが今まで盗んできた経験値が解放されるんですよね」
「そうだレベルが戻ってきた喜びですっかり忘れてた。確かに身体がかなり軽くなった気がする。ステータスオープン」
ソラがその場で立ち止まり、ステータスを表示させる。
「わっ! レベルが一気に32まで上がってる。Dランクダンジョンで奪った経験値だからせいぜい3レベルくらいがいいところだと思ってたけど、まさか7レベルも上がるなんて」
嬉しそうにその場かがみこむ。
「おめでとうソラ君。わ、すごっ。DEXも高いけどソラ君は完全なAGIお化けだね。この調子でAGIが上がったらそのうちレベルゴーストより速くなっちゃうんじゃない」
ソラのステータスを覗いたヨルがそう言ってソラの方を見る。
なお、現在のソラのステータスはこのようになっている。
名前 ソラ・スフィア Level 32
年齢 15
性別 男
HP 402
ATK159
DEF 145
AGI 549
DEX 503
加護 授かる者、俊足、氷針柱、操糸術、鬼火、空歩、硬化、
ギ酸、擬態、雷撃、氷撃、浮遊、突風、催眠術、衝撃波、反逆の翼、振動、竜巻斬り、地走り、粘着糸、目眩し、プチブレスー風ー、プチブレスー火ー、麻痺針、影うち、射撃
「前からAGIとDEXよりのステータス編成だとは思ってたけどまさかここまで露骨にステータスが偏るなんて思ってもみなかったよ。ヨルちゃんのレベルはどうなった?」
「ん。ちょっと待ってね。ステータスオープン」
その言葉に黒色のステータス画面がヨルの目の前に現れる。
「えっ、レベル31!? 私もレベルが凄い上がってる」
その上昇幅に大きく目を見開いた。
名前 ヨル・ブライト Level 31
性別 女
HP490
ATK 259
DEF249
AGI 299
DEX 300
加護 黒魔導、魔女の祝福、魔法操作、料理の道、魔攻変換、魔眼―操作―、精密射撃、地獄の門、輪廻
「ほんとにヨルさんは万遍なくステータスが上がりますね」
ヨルのステータスを見たルナが感心したようにうなずく。
「ほんとだね。バランス型はもしソロで冒険者をやるなら理想形っていえるぐらい隙がないからね。ほんとに凄いよ」
「えへへ、でもまさかこんなに早くレベルが上がるとは思わなかったな」
「それは僕も同じだよ。たまたまだけどこんなに早く強くなれるなんて夢にも思わなかった」
二人して自身の成長を噛み締める姿を見てルナが口を開く。
「あら、ソラさんはまだもう一段階強くなれますよ」
そういうとヨルを背負ったまま、ソラの唇に自分の唇を重ねた。
「ええっ!? さっき私にダンジョンでは節度を持った行動をって言ったばかりなのに!?」
「ふぉれふぁ(これは)ふぃふひょうふぁふぉふぉふぁふぁふぃふぃんふぇふ(必要なことだからいいんです)♡」
ルナが紅い唇から唾液を垂らし、舌を絡ませあいながら器用に言葉を繋げる。
するとほどなくしてソラのステータスの加護の欄に新たな加護が生まれる。
「あっ、ソラ君。新しい加護だよ。レベルゴーストの加護だと『脱兎』かな? AGI強化の加護だからソラ君が本当にスピードお化けになっちゃうね」
「ははは、でも確かに僕はDEFが低めだからAGIを強化できるのは嬉しいよ」
キスを終えたソラがそう言って、ステータスを覗き込む。
そこに書かれていたのは皆が予想した『脱兎』の加護ではなかった。
脱兎の代わりに現れた加護、それは
―――『経験値キラー』
RPGをやってると自分でステータスを割り振れるものってありますよね。
私は小さいころはATK極振りでしたが、いつからかAGIよりのバランス型になってました。
これは年齢を重ねたせいなのか。それとも別の理由があるのか? 永遠の謎です。




