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26.ルナとヨル

「うっ、噂は本当だったんだ。ソラ君がとんでもない綺麗な人と一緒に毎日ダンジョンにいってるって」



『ダイニングレストランmoon』でお盆を胸に抱えたヨルがルナを見て驚愕の表情で固まる。



 この10日間、毎日のように朝早くから夜遅くまでダンジョンに籠り続けていた。



 食事もダンジョンの中ですることが多かったため、今日はレベル25到達のお祝いとして『moon』にやってきていた。



「そっか。ヨルちゃんにはまだ紹介してなかったね。こっちはルナさん僕のパートナーだよ」



「ぱ、パートナー!?」


 

何かを勘違いして肩を落としているヨルにそう言ってルナを紹介する。



 紹介されたルナはヨルを観察するように上から下まで見回す。



 まだ12歳という年齢からあどけない顔をしているが目は大きく、胸も少しだけだがぷっくりと張っている。背は高くはないが細い足腰が少女のスタイル可憐にいろどっている。また幼い黒い瞳はどこまでも純粋に透き通っていて見るものを無邪気に引き込んでしまう魔性の魅力を持っていた。



 自分とは違うタイプ。だけど間違いなく男受けしないわけがない美少女。そんな少女がソラに紹介された自分を見て動揺している。今は目をぐるぐるとと回して自分とソラを交互に見ては「うそだ。ソラ君にパートナーだなんて。恋人だなんて」と何やら小声でぶつぶつといっている。

 


 ルナはそんなヨルを見て、直観的に感じる。この女は将来自分のライバルになるかもしれないと。



「ヨルちゃん。何か勘違いしてない? パートナーって言ってもルナさんは僕の加……護っむぐッツ」



 ヨルの誤解を解こうとしたソラの口をルナが塞ぐ。そしてソラの肩にそっと手を置き、優しく大人の笑みを浮かべながら



「はじめまして。ソラさんのパートナーで現在一緒に暮らしているルナ・ユグドラシルです。よろしくお願いしますねヨルさん」



 そういって、涼しげな目線をヨルに向ける。



「一緒に暮らしてる!? それはソラ君と一緒の家で生活してて、一緒にご飯食べて、一緒に寝てるってこと!?」



「ええ、そうです。なんならベッドも一緒です」



「ソラ君ほんとなの!!」



「ま、まあ。ほんとといえばほんとだけど。でもそれには事情がむぐッツ」



「そうです。私とソラさんは一生離れられない関係なのです。そうそれはもう深く深く繋がれているのです。身体の奥底から繋がっているのです。だからもちろんベットも一緒でないといけないのです。そうこの身体はソラさんのものですから」



 そういうと意味深に下腹部を優しく撫ではじめた。その様子を見て何かに勘づいたヨルがその顔を真っ赤にする。



「ソラ君が、あの純粋で照れ屋なソラ君がハレンチになっちゃったぁぁああ~~」



「えっ!? なんで? それにルナさんもベットは別に一緒じゃなくても問題ないんじゃ」



「いえ、問題です。ベットが別になると私のやる気が下がり、ダンジョンでの死亡確率が大幅に上昇します」



「大幅に!?」



「はい、そうです。それはもう大きく跳ね上がります」



「あ、ああ。私の、私のソラ君がどんどん大人になってっちゃう」



「ヨルちゃんどうしたのそんな膝から崩れ落ちて!?」



「ソラさんそっとしておいてあげてください。私とソラさんの絆で彼女はいま大人の階段を昇ったのです」



 膝をつくヨルにルナが手を差し伸べる。



「ヨルさん。ソラさんは私の物ですが、貴女がとても可愛いことは私が保証します。だから今は心の傷を癒してください。ソラさんよりいい男性は生物学上存在しませんが、必ず将来いい男性は現れます。その時必要とあらば私が必ずサポートしますから」



「うう、ありがとうございますルナさん。でも、私、そんな簡単にソラ君のこと諦められません。ねえ、ソラ君。ソラ君はルナさんのこと好きなの? 愛してるの? もう結婚の予定はあるの?」



 ルナの手を取りながらウルウルした目でソラの方を見る。その言葉に凍り付いたのはソラではなくルナだった。



 今までソラは自分のことを大切だとは何度も言ってくれた。でも『愛している』というのは全くもって別の意味を持つ。所詮自分は加護にすぎない。そんな自分を大切に思ってくれているだけで十分だが愛というのは一加護に過ぎない自分にとっては不相応な言葉な気がした。



 思わずゴクリッと生唾を飲み込む。ヨルの手を取る手が小刻みに震える。



 二人の真剣な視線を向けられたソラはビクッとその肩を震わせる。思わず一歩後ろに下がりたくなる。



 でもそこであまりにも真剣な二人の瞳に応えないといけないと踏みとどまり、優しい声色で言葉を紡ぐ。



 ソラの口が開くと同時にルナの視界が緊張でチラつく。そしてソラの口が音を創った時、その視界は暗転した。



「ルナさんのことはもちろん好きだよ。大好きだし、愛してるよ」



「やっぱりそうなんだ。じゃあソラ君はもうルナさんと結婚するんだ。私よりもやっぱりルナさんの方が綺麗だし大人だし、おっぱいも大きいもんね」



「でも、それと同じくらいヨルちゃんのことも大好きだよ。それと僕とルナさんは結婚はできないんだ」



「え!? どうして?」



「それはいろいろと事情があってね。さっき話そうと思ったんだけどルナさんはあまりに人に言ってほしくないみたいだから今は秘密かな」



「じゃ、じゃあソラ君は私のこともルナさんみたいに愛してくれる? 結婚してくれる?」



「結婚はわからないけど、でも僕はヨルちゃんのこともルナさんと同じくらい大切だし、愛してるよ」



「はわわわ~。幸せ。今私すごい幸せ。あっ、でもこれじゃルナさんがっ、あれ? ルナさんの手に力が入ってない。ルナさん? ルナさん!?」



 ヨルが視界を上げるとそこには至福の表情を浮かべながら鼻血を垂らし朦朧としているルナの姿があった。



「ルナさん!? 大丈夫ですか!!」



「らいじょ~ぶでれすぅ。わたしいま、うまれてきてほんとうによかったとおもえるくらいしあわせなんでぇ」



 先ほどまでとは一変、ヨルに抱きかかえられたルナがうわ言のように呂律の回らない言葉を垂れ流す。



「ルナさん大丈夫ですか」



 突然おかしくなったルナにソラが駆け寄る。そして鼻血をふこううとその顔に近づいた瞬間に幸せで暗転していた視界がようやく戻るが



「ぶはッ、ソラさんのお顔が!? 近い!! うはッ」



 その姿が瞳に映ると同時に今度は完全に気を失い、その場に倒れ込んだ。



「「ルナさ~~~ん!!!???」」



 夜の酒場にソラとヨルの叫び声が響くなかルナはその顔をニヤつかせたまま倒れ続け、幸せな夢の中を鼻歌交じりにスキップしていた。


 久々のヨルちゃんの登場です。実はヨルちゃんにはいろいろな裏設定があったりします。いつか書けるときがくるといいなぁ。


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