21.冒険者試験③
目の前に敵意を剥きだしにした魔物が二匹いる。今までの僕だったらいくら気持ちを強く持っても、いくら大丈夫だと言い聞かせても、その姿をみたら魔物に殺された母さんの姿が浮かんできた。足が動かなくなった。
ナイトランドを救った伝説の英雄シエル・スフィアの息子は英雄どころか冒険者になることさえできず、魔物に一太刀も浴びせることもなくその生涯を終える。
周りは僕のことをそう言って『ウスノロ』と呼んだ。
そう言われてもしょうがない。何も言い返せなかった。でもずっと悔しかった。情けなかった。母さんが守って繋いでくれたこの命は『ウスノロ』なんて呼ばれるために生まれてきたわけじゃない。
なのに魔物を前にすると強張る身体が憎くて憎くて仕方がなかった。でも、今は違う。こんな僕に強くなれる言葉をかけてくれた人達がいた。こんな僕を信じてくれる人達がいた。こんな僕に力をくれた人達がいた。だから母さん
―――今日僕は冒険者になるよ。
母さんのように強くなれるかはわからない。でも、貴女に救ってもらったこの命をもう二度と『ウスノロ』だなんて呼ばせない。それくらいには強くなってみるよ。それでこの両手が抱えきれない人を笑顔に出来るそんなS級冒険者に僕はなる。
それがこんな僕を今日まで生かしてくれた人達への恩返しだと思うから。
「【俊足】」
「「「えっ!? ウスノロが消えたっ!!!!!」」」
観客席がどよめきに震える。
そして次にソラがその姿を現した時、その背後には四つの両断された魔物の死体があった。
「――――――っっツ!?!??」
会場全体が息を呑む。今までウスノロと蔑んでいた少年が自分の目にすら映らない速度で魔物を狩ったのだ。何が起きているか、何を見せられているのかまるで理解が出来ない。
そんな中、現状を理解できたほんの僅かな人間がソラに言葉を送る。
「ソラさーん!! かっこいいです!! 決めてください!!!」
「いけよソラ!! 冒険者になりやがれ!!!」
その声に背中を押されるようにソラは獲物を見失い空中を舞う魔物にそっと右手をかざす。
「【氷針柱 】」
大気が金切り声を上げ鋭利な氷の柱を形成する。それに気づいたアッシュイーグルが恐怖に後退するなか
「射出」
ソラの放った一撃がその身体の中心を貫く。
空中で氷漬けになったアッシュイーグルが地面に落ち砕け散る。
誰も何も言葉を発さない。無言の時間が続く。目の前で起きているものはなんなのか。そもそもこれは現実か。夢の中にいるのではないか。それぞれが様々な方法で確かめるが夢が覚める様子はまるでない。
そんな中、この物語の主人公がスタスタと歩き始める。会場中がその姿を追う中、英雄の息子ソラ・スフィアはダンテの前に行き口を開く。
「ダンテさんこれで僕は冒険者になれますか?」
その言葉にダンテは現実に引き戻され宣言する。
「ソラ・スフィア。このギルド長ダンテ・バルクの名において冒険者試験合格を認める!!!」
「「「うおォおおおおおおおお!!!!」」」
ダンテの宣言に会場はようやく夢から覚め歓声を上げた。
この日長い年月を掛けて一人の小さな冒険者が誕生した。
これで第一章は終了です。次の話からようやくソラは念願の冒険者になります。
皆さんは複数話更新はいかがですか? 一日に何話も更新すると読んでくれている人が疲れないか気になったりしたのですが、好評ならまた仕事が休みの日に挑戦しようかなと思います。続きは早ければ今日、遅くても明日のには更新するのでお待ちくださいね。
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