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16.想い

「え?」



 突然何の脈絡も無くそう言ったミギブの顔を覗くとその顔は悲痛に歪んでいた。



「弟は自分のためじゃ無く誰かのために頑張れる優しいやつだった。自慢の弟だった。だけど死んじまった。俺が殺したんだ」



 その顔に映るのは強い後悔と自責の念。



「俺が10歳の時だ。俺は加護を授かり有頂天になってた。それで弟にカッコいいところを見せようと二人で誰にも内緒でダンジョンに行ったんだ。結果、弟はブラックウルフに食い殺された。そして俺は弟を置いてその場から逃げ出した。とんでもないクズ野郎だろ」



「ミギブさん……」



「あの日、俺は自分の無力さを知った。そして俺は無気力に自堕落に強い人にくっついて保身に走るような生き方をしてきた。だけどさっきウルフたちに囲まれてるお前をみてハッとしたよ。俺は弟を失ったあの時、誓ったはずだった。もう人の命を見捨てるのだけは嫌だってな。だけど結果はどうだ? 今回も俺は逃げ出した」



 そこで自虐的な笑みを浮かべる。



「ハハハ、もう自分で自分が信じられなくなるよ。ソラ、お前の誰かのために優しくなれる強さは俺の弟に似てるんだ。俺に弟を三度も殺させないでくれ。頼む。最後だけは俺を弟のために命を投げ出せる強い兄貴にさせてくれ。もう俺に弟を殺させないでくれ!!」



 目に涙を浮かべ、グシャグシャの顔で叫ぶ。初めてみる顔。よくよく思い返してみれば、ミギブという男は上っ面ではいつもグリードに媚を売ってヘラヘラと笑っていたが、心の底から感情を爆発させるところは見たことはなかった。



「わかりました。ミギブさん」



 初めて見る表情。命を懸けた願いにソラはその手の力を緩める。



「ああ、そうだ。それでいい。ありがとう」



 しかし次の瞬間、今まで以上に強い力でミギブの手を握る。



「おいっ!ソラどういうことだ。さっきわかったって言っただろ。早く俺を降ろして帰還しろ!!」



「ええ。わかりましたよ。僕はあなたにもう弟を殺させません」



「だったら早く俺を降ろせ!」



「いえ、降ろしません。僕はあなたを連れて帰る。そして僕はこのダンジョンを生きて突破する。それなら文句ないですよね」



「そんな綺麗事が通るわけねぇだろ!! なあ頼むよ。俺の最後の願いなんだよ。俺にもう家族が死ぬところを見せないでくれ」



「それは僕だって同じです!! さっきからもう弟が死ぬところ見たくない見たくないって、自分のことを弟だって言ってくれる人の死ぬことを僕だって許せるわけないじゃないですか!!!」



 ソラの絶叫に目を見開く。



「僕だってお母さんが目の前で死んで、もう僕も僕の大切な人たちが死ぬところは見たくないって思いました。でも、僕は弱いから、何も守れないから。いつも大事なものを無くして、プライドもなくして、でもやっぱり僕の目の前で誰かが死ぬのは嫌なんです。ここでこの手を離したら僕は一生後悔します。だから僕はミギブさんがなんと言おうとあなたをここには置いていけません!!」



 何も言葉が出てこなかった。代わりに瞳から大粒の涙が次々に溢れだしてきた。



 そんなミギブを見ないようにして、ソラは一歩前に踏み出す。



「すまねぇ。ほんとにすまねぇソラ」



 嗚咽交じりの声でそういうのが精いっぱいだった。



 現実的に考えてこんな状態で自分より格上のダンジョンを攻略なんかできるはずはない。奇跡が重なって出口まで魔物に出会わない。それぐらいしか生き延びる術はないような状況。



 二人はそれを理解しているがあえてもう何も口には出さない。



 体を引きずるように前に進む二人を見てルナは複雑な表情を見せた後、深いため息を吐く。



「ちょっと待ってください。わかりました。わかりましたよ。ソラさんの気持ちは伝わりました。ほんとにソラさんは優しすぎます。その薄汚い男をそこに寝かしてください。私が治療します」


 現状のソラのステータスとミギブのステータスを比べるとまだミギブの方がステータスは上だったりします。


ちなみにミギブのレベルは18です。


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