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第四十七話:奏とクリスマスデート

という名の迷子

第四十七話

 学園でもクリスマスパーティーが開かれている中、寒空の下……俺と奏だけのクリスマスパーティーが始まったのだった。

「まさかクリスマスに迷子になるなんて思いもしなかったな」

「そうね」

 今頃青空の家でも豪華なクリスマスパーティーが行われている事なんだろうよ。周りが気が使って今日は二人で何処かに行ってきなよと言われた手前、行かないわけにはいかないので隣町の夜景が見える綺麗な公園までえっちらおっちらやってきたわけだ。

 訂正、公園だと思っていた場所は墓地でした。

「夜景がきれいだなー」

 右を見ながら柵から見える夜景にため息を出す。

「墓があるけどね」

 左を見れば墓地だ。見渡す限りの墓地が俺たちを祝福してくれているように見えた。

「や、夜景って言ってもどうってことはないわね。夜の墓地も大したことはないわ」

 奏の声が震えているのは寒さから来るもんか他の別のものからか……さっきから俺の腕を抱きしめてばっかりだ。

「クリスマス、夜景が見える場所、二人っきり……最高のムードだな。奏、俺と付き合ってくれ」

「……あんたねぇ、この状況でそんな事をいう?」

 立ち止まることはないし、振り返る事もない。今、俺と奏は二人の未来……つまりは前だけ見ながら歩き続けている。止まれば、俺達の明日はないかもしれない。

「それで、奏の返事は?」

「……オーケーよ。そもそも、冬治を振りかえらせようと頑張ってきたんだから私が断るわけないじゃないの」

「断ってたらここに置き去りにしてた」

「それなら尚の事あり得ないわね」

「……幽霊ってお金で見逃してくれるかな」

「どうかしらね」

 じゃあ、試してみるかと聞いてこないのは純粋に怖いからだろう。

「あ、人玉」

「ひゃっ……って、居ないじゃないのっ。くだらない冗談言わないでよ」

「いや、改めて見ると奏の怯えた表情って可愛いなーって」

「馬鹿言わないでよっ」

 叩かれて思う。悪い、奏……本当に人玉が飛んでいたんだ。

 卒倒されても大変なので真冬の肝試しのレベルを一生懸命下げる努力はしている。

「な、なんだか大勢の人が歩いている音が聞こえない?」

「ああ、それよくあるって友達が言ってたよ」

「そ、そうなの。墓地じゃ普通にある事なのね」

「お嬢様は墓地をあるかないだろうからな。初心者が良くびっくりする現象の一つだよ」

「ひっ」

「どうした?」

「白いワンピースを着た女がこっちを見てたわっ」

「カップルを妬んでいる独身女性だろ。一緒に歩いてたら街でたまに冷やかされてただろ? あんなものだよ」

「そう、なのかしら?」

「まぁ、見てくるだけで害はないよ」

 付いてきたら……いや、憑いてきたらどうなるかは知らないが。

 そんなこんなのやり取りを続けて駅前まで戻ってくる事が出来た。お姫様だっこしてファミレスに入りこんだときはウェイトレスが驚いていたがそんな事はどうでもいい。

「コーヒー二つ」

 震えが止まらない奏をなだめながら注文を終える。

「と、冬治と一緒に居てよかったわ。もし、一人だったら……」

「俺もお前が居てくれてよかったよ。居なかったら一人さびしいクリスマスを迎えてたからなぁ」

 墓地に行っていたら沢山居て寂しくなかっただろうけどさ。

「改めて冬治は頼りになると思ったわ。うん、あたしの目に狂いはなかったのね」

「しっかし、よく考えてみたら転校してきてこっち奏は色々と大変な目にあってるよな」

 思い返して苦笑してしまう。肝試しをやり気絶し、父親の会社が乗っ取られ、クリスマスには墓地で元人間の人たちに追いかけられる始末。

「今考えてみれば全て冬治が関係しているわよね」

「いや、してないから。父親の会社は俺と関係ないだろ」

「言われてみればそうかも」

「逆を言えば俺は奏のせいで面倒事に巻き込まれていたりするんだぜ?」

「……それじゃあなんで冬治はあたしの事が好きだって言ってくれるのよ。面倒なんでしょ?」

 少しだけ気持ちが萎えたのかそっぽを向いてしまう。

「面倒だけど、奏がなんとかしてきたからな。お前は立派な人間だよ。父親が居なくなってもしっかりしていたしなぁ……」

「あれは冬治が居てくれたから出来た事よ。ねぇ、一つだけ聞かせてくれないかしら」

「何をだ」

「冬治は何で転校してきたのよ」

 そう尋ねられて黙りこんでしまうのは仕方がない。

「……」

「あれ? 彼女に早速隠し事をするの?」

「誰だって触れられたくない過去の一つや二つ、あるもんだ。ま、いいさ。どうせそこまで気にするようなことじゃあない。女子更衣室に入りこんだ罰でこっちに転校させられたんだよ」

「ふーん、ま、特待生ってことは少なからず事情があったってわけね。きっと冬治は優しいから誰かの罪を被ったりしたんでしょうけど」

 中々鋭いとだけ言っておこう。

 そろそろ帰った方がいい時間帯になりつつあることに二人で気付く。コーヒーだけでどれだけ粘ってるんだと思われている事だろう。

「さ、帰るか」

「そうね。」

 クリスマスと言うこともあってまだ人の多い電車に乗って自分たちの町に戻る。波恵さん辺りにお願いすれば迎えに来てくれそうだけれど今日はこのままでいい。

「ねぇ、冬治」

「何だ」

「家を追い出されていたのがあたしじゃない誰かだったとしても助けてた?」

 その質問に俺は苦笑しながら応える。

「そんなにお嬢様が会社乗っ取られて追い出されるなんて無いだろ」

「もうっ、ちゃんと答えてよっ」

「わかんねぇなぁ。あの時はただ助けないといけないって思ったから助けただけだよ。また同じ事が起こってみないとな」

「嘘でもいいからあたしだから助けたって言ってくれてもいいのに」

 人がまだまだ多い電車内……そっぽを向いてしまった俺の彼女の機嫌が悪くないのは窓に反射して映る表情でわかってしまう。

「お前だから助けたんだよ、奏」

「冬治……」

 後ろから抱きしめる。

 その後、俺に痴漢容疑がかけられたのはまた別の話である。


さて早速奏編総括を。まず最初に奏と打とうとして楓と打ち間違えることが多々ありました。その都度修正していましたが実際に誤字のまんま投稿しているんじゃないかと戦々恐々としています。我儘なお嬢様かと言えば特に我儘でもなかったかなぁ……もうちょっとわがままさせてあげてもよかった。冬治に靴下だけ着用させ校舎内を歩かせるとか。機会があったら特別編でやりますかね。次回はメイド最終回編です。

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