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第四十六話:鈴蘭と今の幸せ

第四十六話

「デートだっ、デートをしようっ」

「デート?」

 突拍子もなく叫んでみて既に後悔している。

 どたばたの師走が走り去ってやってきた新年……進路希望についてもやるって先生が言っていたし、これからどうなるのか想像もつかないな。

 試しに鈴蘭の進路を聞いてみたら『お嫁さん』と答えてきた。

 まぁ、そういった未来を実現させるためにするべき事は仲良くする事だろう。実際は俺の進路の方が進学だからそっちに持っていくための布石なのだが……。

「お前の進路はお嫁さんだろう?」

「ううん、奥さんだよ」

「奥さん? お嫁さんと一緒だろ」

「何だかランクが上がった感じがしない?」

 最終進化形態は小姑(毒舌装備)だろうか。

「ともかく、学園を出てすぐに籍を入れるのは大変そうだからもっと社会をみたほうがいいんじゃないのか?」

「それで大学? モラトリアムの延長はもういらないとわたしは思うよ」

 結構真面目に考えているのだろうか。

「真面目に考えているんなら別にいいんだよ」

「頑張ってお仕事をするから冬治君は大学でいっぱい勉強してね。玄関で毎日見送るよ」

「……毎日見送るのかよ」



「冬治君、行ってらっしゃいのちゅーしよっか?」

「……べ、別にしなくてもいいんだがお前がそう言うんなら仕方がないな」



「……そうだな、悪くないな。でも、俺はお前と一緒の大学で過ごしたいっていうのもあるんだよ」

「そっか、それも魅力的だなー。うーん、どうしよう」

 先日、鈴蘭の両親から手紙が来たようで(まだ俺たちが付き合っている事は話していない)その中には大学に行きたいならお金の準備はしてあるとの旨を伝えていた。

 鈴蘭はそのお金を俺との生活に使おうと考えているようだが、俺としてはまだ手をつけないほうがいいような気がしていた。何か起こった時の為に使いたい。

 ままごとみたいな生活になるかもしれない……だから、しっかりと地に足つけて学生気分を終えて生活したいと言うのが本音だ。

 鈴蘭としてはそうなったら一緒に居られる時間が減るとのことで嫌だそうで、お互いの事を考え、我儘を通せるなら通したいのである。

「二人で一緒に居られるのは今だけなのかなぁ……」

 そんな鈴蘭のため息を見るたびに何度も折れそうになってしまう。

「二人で模索するしかないな。俺もあまり鈴蘭とは離れたくないし」

「冬治君がそう言ってくれている間は大丈夫だよ」

「そうか」

「うん」

 考えていたって仕方がないので部屋から出てデートを開始する。向かう先はスーパーだ。

「なぁ、そろそろデート先のバリエーションを増やさないか?」

「駄目だよ冬治君っ。まだ慣れてないのに他の場所に行ったら鼻血出して卒倒しちゃうよ」

 一体どこに連れて行くつもりだ。

 だからと言ってスーパーに行くことについては反対ではない。よって、行先はスーパーになってしまうのだ。

 俺と鈴蘭を見て冷やかすおばさんたちもそろそろ居なくなってしまった。寒いと言うのもあるだろうが、飽きてしまったのだろう。

「あら、鈴蘭ちゃん。この前、冬治君ったら他の女の子と歩いていたわよ」

 飽きたとは言っても、このような情報が鈴蘭へ送られる事がたまにある。

「えー、冬治君が? 一体誰と?」

 表面上ではおばさんにあわせて怒っている風を装うもんだからノリがいい。おばさんももったいぶらずにすぐさま教えてくれる。

「担任の四季先生と」

「四季先生かぁ……わたしの相手じゃないよね、冬治君っ」

「そりゃあ、四季先生とじゃな」

「ありがと、冬治君」

「ま、相変わらずお熱いのね」

 そういって抱きついてきてこの茶番が終わるのだ。

 おばさんをやり過ごした後に俺はため息をつく。

「鈴蘭も人がいいな」

「そういう冬治君だってちゃんと答えてくれてるよ」

「それはそれ、これはこれだからな。鈴蘭が俺にとって一番大切な人だ」

「わたしもだよ」

 スーパーに辿り着いても相変わらず鈴蘭はおばちゃんたちの人気者だ。惣菜も少しだけおまけされたり、レジでのスタンプも稀に押し間違いと言う名目で多く押されたりする。俺が浮気でもしようものならおばちゃんたちから村八分を喰らい、この場所では生きていけなくなる。

 荷物は俺が持ち、鈴蘭は俺の腕をもつ。

 今日も他愛もない会話で一日が終わるのだろうと思っていたのだが、今日は違った。

「ねぇ、冬治君」

「ん」

「冬治君がどうしても、わたしと同じ大学に行きたいのなら折れるよ?」

「……」

 一瞬だけいいのだろうかと迷いが生じた。

 そして、次の瞬間に俺は答えを導き出した。熟慮していない返答かもしれない。

「……いや、俺が折れるよ。俺のいい分はお前と一緒に遊びたいってだけなんだ。だから、お前が俺と一緒に生活したいって言いだした時は不安が大きかった。今だって大きい……だけど、お前が居てくれるんなら何とかなりそうだ」

「本当にそれでいいの?」

「ああ、それでいい。俺は鈴蘭が居てくれるんなら過去も未来も知らん。精一杯その時の鈴蘭を幸せにして見せるよ」

 俺の言葉を聞いて鈴蘭は目をまんまるにして笑っていた。

「すこし、恥ずかしい言葉だね」

「かなり恥ずかしい言葉だ。それで、鈴蘭の答えはどうだ?」

「えへへ、幸せにしてください」

「臨むところだ」

 天然ボケがさく裂しなかった事にほっとした。幸せって具体的にどういうことかと聞かれたらどうしようかと思ったぜ。

 恥ずかしいセリフのおかげで寒さも吹き飛んだ事に気付いた。しかし、それでも鈴蘭は俺の腕を抱きしめていたのだった。



―――――



「おいおい、いつまでお菓子を選んでるんだよ」

「うーん、ちょっと待って。すぐに終わるから」

「終わるってなぁ……お前なぁ、そのやり取り何回やったと思ってるんだ」

「これで終わるからっ」

「じゃあ、俺も帰るぞ。家の場所はわかってるだろ?」

「あ、ちょっと待ってよ。ほら、決まったから―っ。ママ―っ、パパがいじめるーっ」

「ちょっと、冬治君。今、一生懸命お菓子選んでるんだから待っててよ」

「……お前のかよ」

「パパって何でママと結婚したの?」

「そりゃ、お前……俺の大切な許嫁だったからだよ。ママに感謝しときな。俺の許嫁じゃなかったらお前は生まれてなかったよ」

「そうなのー? ありがとう、ママ」

「今真剣に悩んでいるから後にしてね」

「……ねぇ、パパ別れちゃえば?」

「こういうところが魅力なんだよ」

 俺の言葉に娘はためいきをついたのだった。

今回で鈴蘭編終了。気になるシリーズで許嫁はおそらくいなかったと思われます。では鈴蘭編総括を始めたいと思います。勝手に脳内で物語がぽんぽん出てきてやりやすかったなーと。許嫁と言いながら押しつけがましいところは一切なく、許嫁と言う言葉も殆ど使ってなかったかと……そこらへんをもうちょっと推して我儘キャラでもよかったのですがそうするとわがままがサブを含めて四人になるのです。それなら外堀を埋めていく知的腹黒キャラにしようかとおもっていたら結果として若干天然の入った殆ど普通の人間になってしまいました。最後の締め方も比較的早い段階で決まっていましたから楽でしたね。

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