英語
とある中学校の、とあるクラスで、次の授業は英語なので、生徒たちは自分たちの教室で着席していました。
すると、近藤がやってきました。
そう、彼らの担任教師は近藤なのです。
「今日の授業は私が行うのだよ」
近藤の担当教科は謎ということになっています。この流れだと英語ではなかったのが確定してしまいますが、彼は面倒なのでそこは気にしないことにしました。
「すみません」
もういいかげん、ここのところのふざけすぎな行動の意図を、この男に確かめなくてはと、一人の女子生徒が果敢に尋ねました。
「音楽に美術、家庭科、そして英語と、どの教科でも近藤先生が授業をなさる訳を教えていただきたいのですが」
「よかろう」
近藤は腕を組み、やたらと偉そうな態度で答えました。
「私もベテランと言っていい立場になってきて、そろそろ目指すべきではと思ったのだ。PTをな」
「PT? それは何ですか?」
彼女は何があっても淡々と話を前に進めると決めていたので、その通りに無感情で質問を続けました。
「パーフェクトティーチャー、完璧な教師だよ。それで、すべての教科において、ひときわレベルの高い授業を行うのさ」
そうか、要するに、すべての教科でこの地獄が実行されるのだな、と生徒たちは理解しました。
そして、授業開始のチャイムが鳴りました。
すると近藤は、生徒たちに言いました。
「本日は教科書は使わんぞ」
そのように宣言し、続けて述べました。
「アイ・アム・コンドー。アイ・アム・ア・ナルシスト。アイ・アム・ザ・ナルシスト」
彼はそれをくり返しました。
「アイ・アム・コンドー。アイ・アム・ア・ナルシスト。アイ・アム・ザ・ナルシスト」
近藤は自分がナルシストであるのを赤裸々な告白と考え、ほおを赤らめました。高いレベルの授業をするために、身を削ってやった行為と捉えていたのです。
しかし、生徒たちには何を今さらな発言なので、彼らはなんとも思っていませんでした。
「アイ・アム・コンドー。アイ・アム・ア・ナルシスト。アイ・アム・ザ・ナルシスト」
近藤が照れまくりで激しく赤面しながらその言葉を口にし続け、教え子たちは「いつまでやるんだろう? これ」とあくびをかみ殺す情景が、しばらくの間継続しました。
授業の終了時刻が迫り、近藤は最後に言いました。
「アイ・アム・コンドー。アイ・アム・ア・ナルシスト。アイ・アム・ザ・モースト・インポータント・ナルシスト」
そして、とても満足した表情で、教室から引き揚げていきました。
え? なに、最後のは。
生徒たち一瞬思いましたが、どうでもいいので、すぐにそのことは頭の中から消え去ったのでした。




