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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 中
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 翔真君のあの発言から、教室の雰囲気が変わりつつあります。

 相羽兄妹をバカップル認識したせいか、二人でイチャイチャしていても誰も何も言いません。と言うか、入っていける雰囲気ではないので、放置しているのが正しい表現かもしれません。

 島崎さん達も諦めが付いた様で、二人にちょっかいをかける事も無いようです。皆が翔真君を諦めているおかげで、いじめだ嫌がらせだの話も聞こえて吐きません。

 そればかりか、二人のイチャイチャ振りにあてられたせいで、いつの間にやらクラス内でカップルがいくつも成立していたりします。そんな手短で済ませて良いものだろうかと、余計な事を考えるほどには余裕がありますが、少し羨ましくもあります。


 幸いな事に、私に言い寄る男子はいないので安心していると、美紀ちゃんから注意されました。

「沙織ちゃんさぁ、先生とのアイコンタクトがハンパないよ。たまに見詰め合っちゃってさ、みんな勘付いているからね」

「そんな事ないと思うよ。話を聞くときは目を見るのが普通だし、アイコンタクトなんてしてない? と思うけど」

「いいや! 役割決めの時なんか、お前らは夫婦かってくらいだったじゃない。今日だってさ、教室に入ってきた途端の目で追い始めてたし。出て来る時だって、物足らなさそうに見つめ合って」

 うん、否定はできません。出来る限り気を付けましょう。


 午後になって材料の買い出し、と言うか注文しておいた品の引取りに出ているので、出先で圭祐さんへメールをいれました。文面は美紀ちゃんから言われた言葉そのままでしたが、直ぐに返答が返ってきました。

『すまん、確かに目で追っているな。校長先生にも既にバレていて、贔屓しない事と不幸にしない事を約束させられているんだ』

『立場を危うくしてしまってますね。注意します』

『いや、節度を持てと言われているだけだよ。女性ながらも、夏の件では陣頭指揮を執って引っ張ってくれていたし、翔真の親御さんから在学中の結婚について問合せされた際も、すんなり了承したぐらいだから、何か思う所が有るんじゃないかな』

『わかりました。ところで、最終日に打ち上げをしますが、圭祐さんも来てくださいね』

『神崎からも言われてるから、お目付け役として参加するよ』

 そうだ。美紀ちゃん家にお泊りする事にして、打ち上げが終わったら圭祐さんの部屋に行ってしまおうかな。初めは困った顔をするだろうけど、最後は苦笑いして部屋に入れてくれるでしょうから。


 文化祭の初日は一般公開になっていないので、調理室までは喧騒が届いてきません。

 真理佳ちゃんが最初に出すクッキーを自宅で焼いてきてくれたおかげで、ゆっくり手順の確認が行えて順調に作業が進みます。何気に翔真君の手際がよくって、私も負けじと作業にいそしむのですが、なぜか勝てる気がしません。

「真理佳ちゃん。翔真君って家でも手伝ってくれるの?」

「うん。買い物も料理も、お願いすれば一緒にしてくれるよ。夏休みなんか、毎日一緒に居たもん。沙織ちゃんも、彼氏にお願いしてみたら?」

「私は難しいよ。いろいろとね」

 難しいと思うけど、服装を気にして眼鏡をかければ、買い物くらいならば大丈夫かな。料理ならば大丈夫かもしれないね。


 調理室は美紀ちゃんと神崎君の采配のおかげで、和やかな雰囲気に包まれていて、作業が思いのほか順調に進んでいきます。余裕が出来たので、個人的なプレゼント用として、少し焼かせてもらいました。

 それでも、午後も早い時間に全てのクッキーが焼き上がってしまい、翔真君の好意に甘えて片づけをお願いし、皆で調理室を出てしまいました。

 一緒に回ろうと思っていた彩萌ちゃんが、寄る所が有ると言い出して販売側の教室に行き、島崎さんを呼び出して二人だけで言葉を交わしています。

「何かあったの?」

「二人きりだから謝っておいでってね」

「真理佳ちゃんに、許すだけの心のゆとりがあるかな」

「大丈夫。真理佳ちゃんに頼まれた話だから。でも、島崎さんには内緒よ」

 そっか、真理佳ちゃんも守られるだけではないんだな。ちゃんと周りを見て動けるんだなって思ったら、嬉しくも寂しい気持ちになってしまいました。


 彩萌ちゃんは、私が少し気落ちした理由を勘違いしたのかもしれません。

 雰囲気を味わうように歩いた校舎で、お菓子と飲み物を買うと、空き教室に入ってゆっくりします。

「沙織ちゃんも面倒な相手を選んだね。せっかくの文化祭なのに、一緒に歩けない相手なんてね」

「面倒な人を選んだんじゃ無くって、選んだ人が面倒な立場になってしまっただけ。だから、残念な気持ちはあるけど後悔は無いわよ」

「それって、入学前からってこと?」

「彩萌ちゃんには言って無かったよね。中学生になった時に出会って、彼に憧れて剣道を始めたの。それで追いかける様にこの学校に来て、四月にやっと彼女にしてもらったのよ」

「そっか。長いんだね。で、どこまで進んでるの? やっぱり痛かった?」

「あのね。立場があるって言ったでしょ。そんなのまだまだ先の話よ」

 それを聞いて残念そうにする彩萌ちゃんでしたが、そろそろ集まる時間なので話を切り上げて教室に戻りました。


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