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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 中
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 結局、夏休みのほとんどを道場で過ごしてしまいました。

 館長直々に練習を付けてもらったり、小中学生に教えたり、大学生に勉強を見てもらったりと、かなり充実した日々でしたが、最高のご褒美は、圭祐さんとの時間がもてた事です。

 もちろん勉強も教えてもらいましたが、癒される時間の方が多かったかな。

「まだ顔色悪いですけど、ちゃんと寝てます?」

「寝てるし食べてるよ。それでもやる事が多くて、つい酒を飲んでそのままって事も有るかな」

「今度、料理を作りに行きます。添い寝も問題ないです」

「問題だらけだろう。今はこれだけで十分だよ」

 そう言っては抱きしめてキスしてくれるのです。それで圭祐さんが癒されているとは思えませんが、私までが負担になる訳にはいかないので、言われるままでいるのが少し悔しい。はやく貴方の隣りに立ちたいのに。


 相羽家の件は木下さんを中心に、女子は彩萌ちゃんなどの協力もあって、体制はしっかり出来たようです。もともと、島崎さんに良い感情を抱いている子が少ないのもありますが。

 男子の方は神崎君を中心に、島崎さんに好意を持っていない男子を集めてもらっています。こちらは少し頼りない感じがしますが、翔真君がしっかりすれば何とかなるでしょうか。

 クラスは対立構造になってしまうかもしれませんが、行動が表立ってくればしめたものです。処罰してもらえばいいだけですから。


 出来る限りの準備をして迎えた二学期は、それでも難しいスタートとなりました。

 教室から六名の生徒が姿を消し、皆が一様に消沈する中で、島崎さんの取り巻きが動き始めたのです。

「相羽さんだけ助かったのは何で?」

「犯人はどんなだった?」

「みんなを見殺しにした感想は?」

「もしかして貴女が……」

 私達を中心に、真理佳ちゃんを事件の話から遠ざけ様とするけれど、休み時間になるとこんな質問が浴びせられてしまいます。どうにか間に入ろうとするのですが、手を出せない以上は難しいと言わざるを得ません。なので、真理佳ちゃんの表情が晴れる事が無いのです。


 一方の翔真君は、荒れていた事が嘘のように落ち着きを取り戻し、神崎君たちの協力も有ってクラスに居場所を作ってしまいました。

 なんでしょう、あっさり溶け込んでしまった感じがして、拍子抜けです。

 結果として、真理佳ちゃんの居場所を確保してくれたのだから、文句は有りません。有りませんが、一言ぐらいは良いでしょう。

「翔真君は何でも出来て凄いわよね。なのになんで、真理佳ちゃんを悲しませるような行動をとっていたのかしら。次やったらお仕置きするから、覚悟はしといてね」

 それに対する答えは、無言の笑み。幸せすぎて嫌味も通じない様です。


 クラス全体をみると、常にカウンセラーが教室後ろに控えているし、圭祐さんが毅然とした態度でいてくれるので、表立った混乱は無いように感じます。更には学年主任の先生が、よく覗きに来るようになっていたので、あちらのグループも動きにくくはあるようです。

 それでも真理佳ちゃんは日に日に口数が減り、私達とよりも翔真君と居ることが多くなってしまいました。

「沙織ちゃん、美紀ちゃん。ほんとごめんね。でも翔真と居ないと不安なの」

「いいよ気にしないで。ただ、あまりベタベタしちゃダメだよ。学校では程々にね」

「思い切って甘えちゃいなさい。尻尾を出したらコテンパンにやっつけてあげるんだから!」

 そんな会話が後押ししているのでしょうけど。


 一番の不安は圭祐さんの顔色がとんでもなく悪い事です。

 計り知れない重圧に耐えているだろうことは判りますが、それでも弱音を吐かずに態度を崩さない姿に、改めて惚れ直してしまいました。

 ですから、本来は禁止されているのだけれど、再開した放課後の部活時間に何回か圭祐さんを更衣室に連れ込んで、膝枕などして癒してあげています。

 とっても疲れているのでしょう。そのまま寝てしまう事も有るくらいですから。

 そうして眠れると言う事は、彼の癒しになっているのかもと自信がもてます。それでも、もっと甘えてほしいと思うのは贅沢な悩みなのでしょうかね。


 そうして私たちの目が島崎グループに向き、真理佳ちゃん達が二人に慣れたタイミングで、島崎さん本人に先手を打たれてしまいました。

 最初は拒絶するそぶりを見せていた翔真君は、なぜか島崎さんとの会話を自然に続けるようになり、真理佳ちゃんの表情が曇ってしまいます。

 部活を終えてスマホを確認すると、真理佳ちゃんの愚痴が並んでいて、美紀ちゃんが必死にフォローしているのが日常になりつつあるのです。ならばと、翔真君にお仕置きリストをメッセージで送ると、珍しい事に電話をしてきました。

「沙織ちゃん達には申し訳ないけど、少し時間をくれないか」

「何の時間が必要か説明して!」

「真理佳との関係を(おおやけ)にせず断るためには、向こうから告白に近い言葉を引き出す必要がある。プライドが高そうだから、ある程度は近い位置まで許さないとならないから、その時間が欲しい」

「乗り換えようとか、二股かけようって事ではないのね?」

「比べるべきものではないけど、先生が沙織ちゃんに向ける一途さと同じくらいの愛情を、僕は真理佳に対して持っている」

「その表現はズルいよね。解ったわ、出来る限りフォローはするけど、貴方も安心させられる何かを示してあげてね」


 電話を切って言葉を選ぶと、美紀ちゃんには会話の内容をメールで送り、真理佳ちゃんには別のメッセージを入れます。

『翔真君にも考えが有るようなので、少しは我慢しなさい。その分、家で思いっきり甘えて、安心できる何かを要求しなさいね』

 そうして思うのです。

 私も圭祐さんと今直ぐにでも暮らせるならば、人目も気にせず思いっきり甘えて甘えさせる事が出来るのに、と。

 それが出来ない今は、少し寂しく思うのです。


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