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先生と私の恋愛事情  作者: 羽鳥藍那
高校編 - 前
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 今年は特に厳しいと言われるほど暑い夏休みは、ほとんど毎日が練習に当てられました。休んだのはお盆の一週間だけです。

 暑さを避けるために午前中行なわれる部活は、お昼を挟んで勉強会に様変わりします。進学校でもあるから、成績が悪くなると部活の停止が言い渡されてしまうので、先輩が後輩の勉強を見るのは慣例だそうです。

 もっとも、教え方で言えば翔真君の方が上手でしたが、その事は誤解を生みかねないので言えません。


 その翔真君は同じように部活に出てきていても、部活が終われば帰ってしまいます。上級生を合せても進学コースは彼だけですから、教えてもらえるレベルではないのかもしれません。

 家に帰れば真理佳ちゃんもいる事ですから、美味しいお昼を食べているのでしょう。毎日のお弁当作りで一段と腕を上げたと聞きましたから、一度はお呼ばれしたいと思っているのですが叶っていません。


 二学期に入って早々、結城先輩と駅に向かう途中のコンビニでアイスを食べていると、嫌な話題を振られてしまいました。

「橘さんは彼氏とかいないの?」

「あの、同年代の子は幼く見えてしまって。きっと、幼馴染がいじめられていたからなのでしょうが。かといって年上となると知り合う機会は少ないですからね」

「ふ〜ん。井口先生とは道場で知り合ったらしいね」

「——はい。男子剣道部の相羽君と一緒に中学から習い始めて、その時から教えてくれていたのが当時は大学生だった井口先生です」

「その相羽君と、ずいぶん仲がいいって聞いたよ」

 今までそんな話をされた事など無かったのにと警戒していたら、どうやら翔真君との関係を疑っていたみたいです。もしかして先輩は年下が好みで、翔真君を狙っているのでしょうか。


 私はこの五ヶ月もの間、教師と生徒の関係を厳格に貫いているのですから、疑われるはずもないのに少し動揺してしまいました。

「た、ただの幼馴染です。彼の双子の妹を一緒に守っていた同志ですから、恋愛対象として見た事ないです。たまにしてしまう『翔真君』って呼び方はその頃からのものですから、特に深い意味とかは無いです」

「そうなんだ。ちなみに、彼は今フリーなのかな?」

「どうでしょうか? 今はクラスも違いますから接点も殆んど有りませんし……」

 そう言ったものの、『彼女のいる翔真君を陰から見て、目を腫らして泣く真理佳ちゃん』が目に浮かんでしまって、それでも彼女の思いは叶わないモノで……。う〜ん。


「でもですね、妹思いの彼が『ブラコン気味の妹』を悲しませる行為に走るか疑問です。だから、フリーを貫くのではないでしょうか」

 取り敢えずフォローを入れて、窺うように見た先輩は飛び切りの笑顔で口を開く。

「やっぱり! そうだよね。可愛い子がいつもそばに居るから『彼女なの?』って聞いたら『妹です』って言われてね。でも兄を見る目には見えないし、あんなにも仲のいい双子を見た事なかったから、これはもしやと思っていたんだよ。シスコンの兄とブラコンの妹って萌えるよね」

 完全に標的を勘違いしていた様で、真理佳ちゃんには申し訳ない事を言ってしまったみたい。今晩にでも謝って、そして注意を促さなくてはいけないと思ってしまう。


 彼女として見てほしい、優しくしてほしいと思わなくはないのですが、それは先生の立場を危うくする行為なのでグッとこらえています。

 どうしても我慢できないときは、もらったプレゼントを抱きしめて涙を流して寝る事も有りますが、部活動に打ち込むことで発散できている方だと思います。先生と同じ空間に居れて、先生の声を聞いて、先生の隣りに相応しい自分を目指す。それが今できる精一杯の行動なのですから。


 昇段試験では確実に段位が上がってはいますが、頑張って来たと思っていたこの一年では成果に結び付く事は有りませんでした。

 一年生なのに出させてもらった団体の大会成績は思わしくなかったですし、個人戦でも体格差は否めなくて、大会には出るものの上位に入れるほど甘くは有りませんでした。

 どうしても力負けや当たり負けをしてしまって、体力が続かない事が多かった気がします。


 毎日指導してくれている先生に、顔向けができない成績で終わってしまって申し訳ないと思いますが、筋力アップの必要性は感じるのだけれど、背が伸びなくなるのは避けたいと思っているので踏み出せないでいたりします。

 そう、背が伸び悩んでいるのです。止まってしまったわけでは無いのだけれど、平均身長には全然足りてなくって、昇段試験などに出向いた時などは、中学生に間違われる事もあったりします。両親ともに背が高い方ではないけれど、平均くらいには伸びてもおかしくないのに。


 そんな中で心を悩ますのは、『ちび無双』のあだ名が未だに囁かれている事だったりするのです。学校の先輩から言われたことは無いのだけれど、みんな知っている感じだったのは言うまでも無いですね。

 恨みますよ、笹本君。いつの日か、そのニヤ付いた顔を恐怖に染めてあげますから!


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