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本と魔法とふたりの私  作者: 但野 ひまわり
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終りから始まりへ

 みなさんは本をお読みになるだろうか。

 お気入りの作家さんがいたり、はたまた電車内ではスマホじゃなくて文庫本でしょ? なんて言っちゃうとか。

 私はというと、本は読む。というか、結構読む。

 月に二十冊とまではいかないが、恋愛ものであれば主人公と一緒に想い悩んでその恋を応援し、ファンタジーであれば、ヒーロー気取りで悪者を退治する。そうやって人は自分が経験出来ないことを、その主人公を通して体験することが出来るのだ。時には共に笑い、悲しみ、怒り、悩む。物語には、知らないうちに主人公と自分を照らし合わせ、思考をめぐらせながら己を成長させる魔法の力がある。

 私はそれを、ある本から教えてもらった。

 それは、『魔法使いになれる本』だ。

 タイトルからして胡散臭さが半端ない。

 数十年ぶりに図書館から借りたその本は、後にも先にもその時一度しか読んでいない。最後まで読み切った後、もう一度開いてみようとしたが、タイトルの下に書かれてある小さな文字に手が止まってしまった。

【畑山閲覧禁止】

 畑山、即ち、私は読んじゃ駄目よ。と言う意味だ。

 まさか個人限定で禁止されるとは思ってもみなかった。

 一週間後の今日、私は返却したその本をもう一度借りてみようと思い、図書館に来た。しかしそんな本はここには置いておりませんと、図書館員のお姉さんにやんわり言われてしまった。どうなってるんだと思ったが、もしかして私には、もう必要ないのかもしれない。

「そういうことですよね。ワタさん」

 呟いてみるが、もちろん返事はない。私の影は、ただ地面に張り付いているだけだ。

 私は鞄からある物を取り出した。それは縦長の形をした、青色の硝子板だ。手のひらにすっぽり入る大きさで、上の部分には丸くくり抜かれた所から結ばれた紐が延びている。上にかざしてみると、陽光を受けてきらきらと光った。そして中央には、まるで本をこちら側に開けたような形の物が描かれている。

 これを持っていれば、どこまで読んだのか分からなくなることも、どこから読み続ければいいのか迷うこともないと言う。

 就職活動を再開させた私は、今日も魔法のお守りを手に物語を読みながら、自分に魔法をかけるのだ。


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