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伍人衆変化<ごにんしゅうへんげ>見参!!  作者: 柿ノ木コジロー
背後からの敵は脅威つうか迷惑?
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銀幕な一家だった 02

 カナコの姿が消えると、父ははあ、と軽くため息をついて茶碗を置いた。

「映画友達か……」マチコの顔をちらっと見て、少し照れたような目になる。

「そんな事言ってた時も、あったなあ」

「年をとるわね……人生も分からないままで」

 マチコは優しくそう言って、お代わりは? と彼に向って手を出した。

「盗聴器がもっとあるんなら切ってくれないか」

 父は言ってからにやりとして、今度は兄のシゲルに目をやった。

「オマエはどうなんだ? 塾変えたんだろう? 受験には間に合いそうなのか」

「まあね」

 兄貴はいいよな、あの余裕の表情。ヒトシはやっかみつつも、尊敬のまなざしを一こ上の兄に向ける。

 頭脳明晰、運動神経もそこそこ、それに何と言っても明るくて気がきく性格。学年の中でも結構人気はあるらしく、主流グループの中にもソツなく収まっていつもワイワイと楽しそうに過ごしているのを、学校の中でもたまに見かけることがあった。

 弟の自分の方がやや引っ込み思案ではあった、友人もそう多くはない。だが、それでも科学部と図書室という安らぎの場もあるし、家庭もこんなだし、それなりに居心地の良さは感じていた。


 それにあの『ヘンゲ』の話。


 ある日、兄に呼ばれて部屋に入り、「まあちょっと話聞いてくれ」と打ち明けられた一部始終。最初は全く、信じられなかった。

 しかし、兄が実際に変化章を取り出し、それで『ヘンゲ』した時、身体が震えるほどの衝撃を覚えたのだ。

 オレも最初はヨシオカに声かけられた時は、あ、ヨシオカって判るか? そうそうあのデンスケだよ。デンに声かけられた時にはきょとんとしちまったけどな。でもやってみたら、なんつうか……メチャ、カッコいいんだよ。そんでな……

 話を聞き終えた時には、どちらの頬も真っ赤に紅潮していた。

「お前にだけは、言っとかなけりゃ、と思ってさ……」

 話がすとんと心に落ちたヒトシ、家族にも、周囲にも内緒にすると誓い、彼はそのプロジェクトの秘密会員となった。もちろん、変化プロの組織にも内緒の。


 これは彼ら兄弟間の極秘事項なのだ。兄がそこまで自分を信頼してくれる、その思いをヒトシは真っ正面から受け止めた。

 いざとなったらお前も戦えるように、今から心の準備だけはしとけよ。メンバー交代とか言う話になったら、まっ先にお前を推薦するから。まあ、運動神経は……何とかなるだろうし、今のメンバーでも結構鈍足なヤツいるけど、何とかなってるしさ。

 オレはいいんだよ、陰で兄貴の力になれば。そう言いながらも、ヒトシはやはり自分があのコスチュームをつけて悪の組織と渡り合っているシーンを何度も頭の中に描いては、ひとりニヤつくこともあり、姉貴からも「ちょっとそこの変質者くん」と注意されることもあった。


 母親が立ち上がり、冷蔵庫におかずの追加を取りに行ったスキに、シゲルが小声で父に告げた。

「今度、母さんと姉貴の誕生会すんだろ? オレらに任せといて」

 この一家は、それぞれの誕生会もちゃんとやっていた。といっても夕飯のついでにちょっと美味いものを用意して、ささやかなプレゼント贈呈を行ったり、そんな程度だったが。

「ちょっと気の利いた作戦を考えたんだ、ヒトシと」ちらっとイタズラっぽい目をこちらに向けたので、ヒトシも思わずくすっと笑う。うん、あれはいいぞ。

 母と姉とは誕生日が2日しか違わないので、いつも一緒にやることになっていた。ここ近年は、その分派手にしよう、と兄弟が企画を立てるのが慣例化していた。

 父も興味を持ったようで、少し身を乗り出す。

「お前じき受験だろう? そんな余裕あっていいのか」

「だいじょうぶ。勉強の合間のお楽しみだし。面倒な準備はヒトシにやってもらってる」

「で、作戦は?」

「サプライズ・パーティー!」

 何の映画からの科白か分かったらしい。父はにやりとして、またご飯をかっこんだ。


 11月末の誕生パーティーは、大成功だった。兄弟はかなり大がかりな仮装を行い、シゲルはダースベーダー、ヒトシはルークと化し、長さ1メートル以上もあるピンクのフガシを振り回してリビングで大決戦。着替えておくように渡された衣装ですっかりヒメとなった二人のじょしは終始キャーキャー叫びつづけ、ヨーダ耳をつけた父も腹を抱えて大笑い。

 その後のピンクの破片を拾い集めるのが一苦労だったが。しょっちゅうスターウォーズネタで盛り上がり、作業はかなり難航した。

「ちょっと掃除機のホースないじゃない!」「ホースと共にあらんことを!」

「ちょっとその黒ヘル、拾ったゴミ食べないで!」

「お父さん、このルークのアホをどうにかして。邪魔ばっかりしてる」

「おいルーク、私がお前の父親だ」「だからその耳、ヨーダだってば」

 何だかもう滅茶苦茶。しかし、これが銀幕な一家・都筑家の日常であった。



 あの日が訪れるまでは。

参考にさせて頂いた映画です。


 テレフォン 1976

 エイリアン 1979

 荒野を歩け 1961

 デルタ・フォース 1986

 ラジオ・デイズ 1987

 スター・ウォーズ シリーズ 1977~

 なんだか分からないスパイスリラー 年代不詳

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