パーティー結成⁉︎
「オーウェン様、推薦に必要な書類の確認完了しました。あとは署名と血判をこちらに押していただければ正式に推薦状として認められます」
リーナから渡された推薦状に目を通し、署名と血判を押すオーウェン。
「アリオ様もこちらに署名と血判をお願いします」
オーウェンが署名した箇所の横に指を指す。
「ああ、わかった」
王族らしい綺麗な書体で署名を済ませ、指にナイフを滑らせ血判を押す。
その所作から自分たちとは育ちが違う事を再確認したリーナは、推薦状に目を落とす。
そして慣れた所作で、誓約の魔術を発動させる。
誓約の魔術とは双方が同意した物事に対する強制力を持たせるための魔術。
書類などに誓約の内容を記載、その誓約が破られたとき、術者と術者が認めた管理者に知らせ強力な強制力を持つ執行権を与える。執行権の内容は常に双方の位置を知らせるものや強制拘束、中には死をもたらす呪いを与えるものすらある。
冒険者ギルドが使う誓約の魔術は、文書の周囲に魔法陣を記載し、その中に署名と血判を押した者に位置情報探知魔術と拘束魔術を掛けることができる。
「この肌がゾワゾワする感じはなんだ?」
「お前、魔術を喰らったのは初めてか?これは誓約の魔術、双方同意の誓約を遵守させるために結ぶものだ。まあ指切りの延長線上って理解してればいい」
「なるほど・・・」
推薦状を中心に複雑な術式を展開していた。その術式が自分に影響を与えた事でさっきの不快感があったと納得した。
「ふう。お二人ともお疲れ様でした。無事、推薦状の作成完了いたしました。明日以降、冒険者登録をされる際にDランクから登録できるようにいたしいます」
作業を終えたリーナが二人に声をかける。
「リーナちゃんもお疲れ様。明日また登録にくるよ」
「ありがとう。本当に助かった!」
手を振りリーナと別れ、冒険者ギルドを後にする二人。
大通りを歩きながらオーウェンは問いかける。
「そういえばアリオ、お前今日泊まる宿はあるのか?」
「いや、この街に来てからすぐにギルドに向かったから宿はとっていない。今からでも適当な宿を探すさ」
「庶民用の宿は冒険者たちの予約で向こう一ヶ月埋まってるし、高級宿はこの国の王侯貴族か大商人以外泊まれないぞ」
ギョッとした顔で振り返り、オーウェンの顔を見つめる。
しばらく見て嘘がないと判断し、肩を落とす。
「仕方ない。一ヶ月ほど野宿でもしよう。今の時期なら凍死する心配もないしな」
ハハッと空笑いをしつつ目に涙を浮かべた。
そんなアリオを見かねてか、オーウェンが苦笑いを浮かべ提案する。
「そんなに広くないが俺ん家に泊まるか?来客用に何部屋か余ってるから好きに使ってくれていい」
「い、いいのか⁉︎お前は命の恩人だ!ギルドでは推薦状も書いてくれたし、宿一つ取れない俺に家まで提供してくれるなんて」
感激した!と犬の様にオーウェンの周りをくるくる回りながら喜ぶ。
「飯はないから、どっか適当な店で食ってから帰るか」
「ああ!」
二人は五分ほど店を探し、エルフリアの郷土料理が名物の店に入った。
明るい店の雰囲気で、夕方頃にしては客入りも良い。
席に案内され、店のおすすめを適当に頼んだ。
「あらためて、推薦状を書いてくれてありがとう」
「気にすんな。ギルドでも言ったがガキの夢を叶えてやるのが大人としての役割だ」
そう言いながら照れくさそうに頭をかく。
「それでもだ。俺はお前の行動によって救われた」
ちょうど届いたジョッキを共に掲げる。
「まだ見ぬ冒険を!」
「ガキの明るい未来に!」
乾杯!と声を揃えジョッキをぶつけ合う。
遥か昔から続く冒険者流の宣言。
死が近い冒険者たちが、明日を生き抜くために夢を仲間と共有し乾杯する。
童話や詩人が詠う詩にも登場し、世代や国が違っても受け継がれてきた。
「一つ夢が叶った!だがお前の夢はなんだ!」
「ははは!ガキの未来を心配してやるぐらいには優しいってことだ!」
その後も楽しい宴は続く。酒を飲み、美味い料理に舌鼓を打つ。
これが冒険者か!と楽しそうに笑うアリオ。
まだまだ冒険者の楽しさはあると揶揄うオーウェン。
明日からパーティーを組む仲間として幸先の良い出だしだった。
「うぅ、頭が痛ぇ。あれ、ここは?」
辺りを見渡し、見覚えがない部屋にいることにアリオは気付く。
するとドアが開き、オーウェンが呆れた顔でこちらを見た。
「お、やっと起きたか!さっと顔洗え。準備ができたら冒険者ギルドに行くぞ!」
この寝坊助!と揶揄うようにドアを閉じ、自分の支度に戻っていった。
寝ぼけた眼を擦りながら、オーウェンの言う通りに顔を洗い、服を着替え支度が完了した。
「待たせた。準備万端だ!」
「じゃあ行くか!いざ冒険者ギルドへ!」




