皇太子⁉︎いや冒険者‼︎
「リーナちゃん、ちょーっと応接室借りていい?」
「は、はい!第三応接室を押さえます!」
ギルド本部第三応接室。通常の応接室とは違い、高貴な来賓を出迎えるための応接室。
アリオと名乗った少年が王族である可能性があるためこの応接室が与えられた。
「なぜ場所を移したんだ?」
アリオが不思議そうに首を傾げる。
その発言を聞いてオーウェンとリーナの二人は頭を抱えた。
「いや、なんでって・・・」
「なぜだ?」
言い淀むリーナにアリオが問いかける。
「お前がウェン=ウェストニアと名乗ったからだ!」
オーウェンが声を荒げながら指摘し、その指摘にリーナが首が取れそうな勢いで首肯する。
続け様に少年へ真面目な顔を作り語りかける。
「いいか、他国の王族とはいえ、王族の名を騙るのは不敬罪に当たる。最悪死刑もあり得るからな!騙るならもっと別のやつにしとけ」
首を掻き切るジェスチャーをしながら諭すオーウェンと頷くリーナ。
その発言に、アリオはムッとした顔言い返す。
「騙る!?俺は本物のアリオ・ウェン=ウェストニアだ!」
強い語気で名乗りながら、腰袋から黄金に光るペンダントを取り出した。
雄々しく羽ばたく鷲獅子とその上に交差する2本の剣の紋章。
初代ウェストリア国王を象徴する装飾品は、王族しか身につけることを許されない。
「グリフォンと二刀一対のシンボル・・・。お前、マジで皇太子なのか!?」
「し、しかし!このペンダントが偽物である可能性も!」
意義を唱えたリーナに対して、オーウェンは首を横に振る。
「間違いない。昔、西方諸国の依頼を受けたことがある。その依頼でウェストリア国王に謁見した時に見た紋章と全く同じだ」
アリオが取り出したペンダントをマジマジと眺める二人。
「し、失礼しました!ア、アリオ皇太子殿下!」
「わかってくれたならいい!」
現実を受け止め、今までの失言や行動に気づいたリーナは深々と頭を下げた。
その誠意ある行動に対して、先ほどまでの不機嫌さを引っ込め笑顔で応じるアリオ。
「それと、皇太子やら殿下などと呼ばないでくれ。俺は一冒険者として来たのだから」
「は、はい!ではアリオ様とお呼びいたします」
「じゃあ遠慮なくアリオと呼ばせてもらおう」
応接室に入った時よりも緊張が和らいだ雰囲気の中、3人は話を進める。
「アリオ、お前が皇太子なのはわかった。でもなんで冒険者なんだ?皇太子なんだから別にダンジョンの財宝が欲しいとか、名声が欲しいなんてこともないんだろ?」
「名声はいらないが、財宝は欲しいな。ダンジョンで手に入る武具は国王になる時の箔になる。何よりかっこいいしな!」
まだ見ぬダンジョンに夢馳せながらアリオは続ける。
「子供の頃からの夢なんだ。仲間たちと命を預けながら冒険して、ダンジョンを踏破する。命懸けの冒険を戦友たちと馬鹿騒ぎしながら振り返る」
幼い子供が両親に初めての夢を語るように、笑顔を浮かべながら夢を二人に聞かせてくれる。
「あまり時間がない。成人まであと2年、戴冠まではもう少しあるだろうがそれでも10
年程しか自由な時間は許されない」
子供のような笑顔から為政者の顔に変わる。
「わかった!ガキの夢を叶えるのが大人としての役割だな。リーナちゃん、アリオの推薦状は俺が書く。だからDランクからスタートさせてやってくれ」
通常、最低ランクからDランクまで昇進するまで早くても数年かかる。入れるダンジョンも制限され、単独でのダンジョン攻略も許可されない。謂わば下積みの期間。
それをBランク以上の冒険者の推薦があれば、その下積み期間を短縮できる。
しかし、それにはリスクも付きまとう。
「推薦状の件、承知しました。オーウェン様の推薦ならギルド長も許可されるでしょう。ただ・・・」
「わかってる。それは俺が同行する。今後しばらく、俺への依頼は他の冒険者へ回してくれ」
リーナとオーウェンが推薦の手続きを進めていく。
「アリオ。推薦には条件がある」
アリオの方へ向き直り、話し始める。
「条件?」
「ああ。推薦があれば冒険者ランクをDランクからスタートできる。その条件としてBランク以上の冒険者と1年間パーティーを組むこと」
「パーティー!?」
【冒険者之掟 第三条第二項】冒険者の推薦について
冒険者ギルドが定める一定ランク以上の冒険者に権利として下記のものを与える
一つ、自己より下位の階級に属する冒険者に対し、昇格に係る推薦権を持つ
一つ、自己への師事を条件に、選考手順に関わらず上位の階級へ推薦することができる
この権利を行使するにあたり、推薦した冒険者の指導・行為に対して全責任を負う義務を有する
義務を放棄した場合、冒険者資格の無期限停止・私的財産の一部没収に処す




