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私は三度目とはいえ、ヴィンセント様は初婚。

なのでヴィンセント様との結婚式は公爵家らしい立派なものだった。

集まった貴族たちの中には私について思うことがある人たちがいたけれど、今度の相手は公爵様だからと表立ってヒソヒソする人はいなかった。



「ヴィンセント様はどうしてあの日、私を誘ってくださったのですか?」



結婚初夜。公爵家の使用人たちに丁寧に磨かれてから訪れた夫婦の寝室。

私は現実味が未だに感じられないでいた。

父の選んだ過去二回の結婚と違って、今回はヴィンセント様が夜会で私を見初めたからだというのが信じられなかった。



「何故かと聞かれても、うまく答えられないな……」


「兄上の病気も、公爵家当主の引き継ぎも突然のことで、その上で妻になる女性を探さないといけないなんて余裕もなかった」


「けれど、なぜだろう。どのご令嬢よりもソフィアが綺麗に思えた」


「どうしても貴女がいいと、多少強引だったと思う」



ぽつりぽつりと続いた言葉に私は恥ずかしくなってしまった。



「妻に迎えるに当たってソフィアの経歴を調べることになった。ソフィアが離婚した経緯も、知ることになった。でも俺は、貴女の過去の男たちが許せなかった」




〝私〟ではなく〝俺〟と言った。



「子どもができないなら親戚から養子を貰えばいい。いないなら他の貴族からだって養子縁組をしたら貴族の血は変わらないのに」


「別の女性を妊娠させるより先に、他に愛する女性ができたと正直に話せばいい。夫婦として相談してから、貴女の了承の元で愛人だか第二夫人だかを持てばいい」


「どうしてソフィアだけが傷付かないといけないんだ。貴女一人のせいにされないといけないんだと、腹立たしくなった。だから俺が、ソフィアを愛したいと願ってしまった」



彼の大きく厚い手が私の手を握る。

赤い瞳がゆっくり近付いてくる。

軽く触れた唇に、私は嬉しくて泣きそうになった。



「怒ってくれたのは、あなたが初めて……」


「ソフィアは、怒らなかったの?」


「先に謝られると、この気持ちをぶつけられなくなってしまったから」


「じゃあ俺にぶつけて?俺は、ソフィアの過去も全部受け止める」


「ううん、いいの。あなたが怒ってくれたから」


「ソフィアは優しいね」



再び唇が重ねられる。今度は深く長いキスだった。

ヴィンセント様の手が背中を撫でる。

お互いの視線が交わる。

長く、熱い夜の始まりだった。



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