2
子どもが産めないとなると次の縁談はなかなか難しいようで、父親が頭を抱えていた。
世継ぎが必要な嫡男は無理でも、次男三男、爵位も関係なく探しているものの、二度の離婚歴は体裁が悪いのか、届く縁組は父と年の変わらない男性の後妻や評判の悪い男性ばかり。
「すまない、ソフィア」
「いいのよ、お父様。私が悪いんだもの」
何度謝られたって、子どもが授からなかったのは事実。
お母様が悪評をどうにかしようとお医者様を呼んだけれど、私は妊娠しにくい身体だということがわかって、お母様は毎日泣くようになってしまった。
「ごめんねソフィア……ちゃんと産んであげられなくて……」
「謝らないでお母様。妊娠しにくいだけで出来ないわけじゃないんだから」
良縁を結んでくれようと頭を悩ませるお父様。
自分が悪いのだと涙を流すお母様。
家のためだと頭を下げたダニエル様。
仲睦まじそうに寄り添うシモン様とマーガレット様。
もう、「ごめん」の言葉は聞きたくなかった。
お前に子供ができないのが悪いと責めてくれればいいのに。
私だって、自分の子どもを腕に抱きたい。
子どもが出来にくい身体って何。
いっそ出来ない身体と言ってくれたら納得できるのに。
「ソフィア様ったらまだお一人なのね」
「だって……ねぇ?」
「でも子どもが出来ないってことはヤり放題だろ」
「身体つきも悪くないしな」
社交界の場で耳に届くヒソヒソとした声。
親世代の人たちからは嫁にしたくない女だと目をそらされる。
同年代の令嬢からは憐れむ声が。
評判の悪い令息達からはニヤニヤとイヤらしい目で見られる。
私のことで寝込んでしまったお母様は夜会に出れず、エスコートしてくれたお父様は仕事の関係で私の側を離れると私は壁の花になってしまう。
お父様、早く戻ってきてくれないだろうか。
ダンスをしてるペアを見ながらぼんやりしていると、すらりと背の高い男性が会場入りしたのが見えた。
その途端に令嬢たちが黄色い声をあげる。
服の上からでもわかるほど厚い胸板に、すらりと長い足。
あんな方、貴族男性にいただろうかとそわそわする会場内。
私には遠い存在だろうと思って俯いていると、磨かれた床を鳴らす靴音が近付いてくるのがわかった。
「ご令嬢、私と踊っていただけますか?」
「え……?」
差し出された手の持ち主は、人の視線を集めていたあの男性だった。
深い赤色の瞳が確かに私を見つめている。
戸惑う私に、さらにヒソヒソ声が増してきた。
「石女令嬢に声をかけたの?」
「もしかして身体目当て?」
そんな声に俯きそうになるも、その場から連れ出すように彼の手が私の手を取るとダンスホールに連れ出した。




