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ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第11章『ほほえみデンタル、悪魔の化身と白穀を囲む』

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08.白穀、到着

あすかと大和はクリニックの外へと出る。

商会の人が来るであろう方向を見る。

表に出ると、さっきまで家の中にいた空気とは違っていた。

家の中ではタコ料理の匂いが広がっていた。

唐揚げ。

煮物。

酢の物。

悪魔の化身と呼ばれていたものは、すっかり食卓の中心になっていた。

けれど、今度は白穀だった。

あすかは少しだけ息を吐く。

白穀を買いに行っただけのはずだった。

それなのに、ルイを連れて帰ってきて、タコ料理が始まって、今度は白穀の炊き方を見せる流れになっている。

大和も同じ方向を見ていた。

遅れて大地も来る。


「あっちから来るの?」


「大地先生……はい。あっちから来るはずっス」


大和は道の先を見る。

すると、馬が走ってくるのが見えた。

荷を乗せている。

大地もその方向を見る。


「馬がこっちに向かってるけど……あれかな?」


馬がだんだんと近づいてくる。

蹄の音が近くなる。

あすかと大和は少し道の脇へ寄った。

大地も一歩下がる。

そして、馬はクリニックの前で止まる。

商会の人が荷台から降り、あすかたちへ声をかけた。


「白穀お持ちしました。どこまで運びますか?」


3人は後ろの積み荷を見る。

思ってるよりも大きい。

白穀の袋が積まれている。

30キロ。

言葉で聞くのと、実物を見るのとでは違った。

あすかは一瞬、袋を見る。

大和も目を丸くしている。

大地はのんびりとした顔で荷物を見ていた。


「あ……すみません。入口まで……」


商会の人は慣れた手つきで白穀の袋を持ち上げる。

重そうな袋なのに、動きに迷いはなかった。

あすかは商会の人を案内し、玄関まで白穀を運んでもらう。

クリニックの方から家へ向かう。

大和と大地も後ろからついていく。

商会の人は袋を抱えたまま、玄関先まで進んだ。


「あ、ここに置いてください」


あすかが示した場所に、商会の人が白穀の袋を下ろす。

重い袋が床に置かれる。

その音に、家の中からルイが出てきた。

ルイは商会の人に声をかける。


「お疲れ様」


「会長」


商会の人がお辞儀をする。

ルイは軽く頷いた。


「わたしはもうしばらくこちらにいると伝えておいてくれ」


商会の人は返事をして出ていく。

あすかはその背中を見送る。

大和も外をのぞき込むように見た。

大地は玄関先に置かれた白穀の袋を見る。

かなりの量だった。

しばらくは主食の心配をしなくてよさそうだった。

智子も玄関先へ来て、白穀の袋を見た。


「米びつにはあとで入れるとして……。とりあえずご飯炊くか……」


智子は白穀の袋を少し破り、ざるに白穀をよそう。

粒は白米に似ている。

昨日も炊いた。

今朝も食べた。

もう味もわかっている。

だが、今回はルイに見せる必要がある。

智子は計量カップを手に取る。


(う~ん……とりあえず6合でいいかな?タコ料理をたらふく食べたわけだし……。ピーマンの肉詰めは夜のおかずにする予定だし……。あ、院長たちもそろそろ帰ってくるかも。う~~ん……10合にするか)


智子は少し悩んだあと、白穀をすくい始める。

人数が多い。

タコ料理を食べたとはいえ、これから戻ってくる人たちもいる。

足りないよりは多い方がいい。

智子は計量カップで白穀を量る。

その様子を、ルイが横から見ていた。

透明な容器に白穀が入る。

すりきるようにして、ざるへ入れる。

それを繰り返す。

ルイは智子の手にある計量カップを指さしてきく。


「その透明な容器は?」


「これは……米を量る容器で、これ一杯ぶんでえっと……1合分のご飯になるんです」


「合……聞いたことがない単位だね」


智子は苦笑いを浮かべる。


(合はなにって聞かれたら答えられない!)


日本にいたころは当たり前に使っていた。

1合。

2合。

炊飯器の目盛り。

計量カップ。

それがどんな単位なのか、正確に説明しろと言われると困る。

智子は計量カップを手にしたまま、少しだけ笑ってごまかした。

ルイはざるに入っていく白穀を見る。


「10回すくったってことは10合っていうことなのですか?」


智子は頷く。


「ほぉ……」


ルイは興味深そうに見ている。

智子は少しだけ緊張した。


「と、とりあえず米を研ぐ……洗うので」


智子は慌てて別の言葉に言い換えて、キッチンへ向かう。

ルイはその後ろをついていく。

智子はざるを持って流しの前に立つ。

白穀を水に浸し、慣れた手つきで米を研ぎ始める。

水が少し白く濁る。

智子は白穀を軽くこすり合わせるように手を動かした。

ルイはその様子を後ろから見ている。

ただ見ているだけなのに、妙に落ち着かない。


(なんか、落ち着かないなぁ……)


後ろにはルイ。

智子のやっていることをただ見ている。

白穀を研ぐ。

とぎ汁を捨てる。

水を入れる。

また研ぐ。

それだけのことなのに、見られていると思うと妙に手元を意識してしまう。

智子は何回かとぎ汁を捨てると、米を炊飯器に入れる。

水を10合の線まで合わせて、炊飯ボタンを押す。

炊飯器が動き始める。

智子はひとまず息を吐いた。


「あとは、炊きあがるのを待つだけです」


「へぇ……」


ルイは炊飯器を見る。

白穀を水で洗い、決まった量の水を入れ、あとは道具が炊く。

ルイにとっては珍しい光景なのだろう。

智子は炊飯器を見ながら、ふと気づいた。


(あ、この国に炊飯器なんてないから土鍋とかの方がよかったかも。しまった~~~)


ルイに食べ方を教えるなら、現地で再現できる方法の方がよかった。

炊飯器はこの家にある。

けれど、この国にあるわけではない。

いくら白穀の炊き方を見せても、同じ道具がなければ再現しにくい。

智子は少しだけ天井を見たくなる。


「智子さん。ご飯どうします?」


「おかずはさっきのタコ尽くしが有り余ってるからいいとして……」


美里は少し考える。

ルイも食べる。

この世界の人が箸を使えるとは限らない。

白穀を炊いて、そのまま茶碗で出すと食べにくいかもしれない。

美里は食器の方を見る。


「箸は使えないでしょうし……。スプーンで食べるのもいいかもですが……」


「まぁ、そうだね……。みんな、朝食に続いてお昼もおにぎりでもいい?」


智子はリビングの方へ声をかける。

おにぎりなら手で持って食べられる。

ルイにも食べ方を説明しやすい。

朝もおにぎりだったが、白穀のおいしさを伝えるにはわかりやすい形だった。

あすかがすぐに返事をする。


「いいですよ~」


大和も手を上げる。


「梅干しおにぎり希望ッス」


「はいはい」


智子は頷く。

お昼ごはんはおにぎりに決定した。

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