↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほほえみデンタルクリニック、異世界で開業しました  作者: ポン吉
第11章『ほほえみデンタル、悪魔の化身と白穀を囲む』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
100/127

09.おにぎりと帰り道

炊飯器から音がする。

白穀が炊けたようだ。

智子と美里は、おにぎりの具材をテーブルに並べる。

梅干し。

おかか。

昆布。

ツナマヨ。

皿や器を並べ、作りやすいように場所を整えていく。

あすかとゆか、すずもおにぎり作りを手伝うために手を洗い、テーブルの周りに立った。

つむぎと大和は隅っこで見ている。

大地はそんな2人の相手をする。

つむぎは具材の並ぶテーブルを見て、今にも近づきたそうにしていた。

大和もどのおにぎりを食べるか、すでに目で選んでいる。

大地はその様子を見ながら、のんびりと笑っていた。

智子は炊飯器の前に立つ。


「さて、熱々のご飯だから気を付けてね」


智子は炊飯器の蓋を開ける。

湯気がふわりと上がった。

炊き上がった白穀が、炊飯器の中で白く輝いている。

粒はふっくらとしていた。

水分を含んで、つやがある。

ルイは炊飯器の中で輝く白を見て感動する。

商会で見ていた白穀とは違う。

乾いた粒だったものが、水を吸ってふっくらとした食べ物になっている。


「ほぉ……これはすごい」


智子は白穀をかき混ぜる。

しゃもじを入れると、白穀の湯気がさらに上がる。

炊き立ての香りがリビングに広がった。

朝にも食べた匂いだった。

けれど、炊きたてを見ると、またお腹が空いてくる。

智子は少し粗熱を取りながら、手際よく白穀を分けていく。

そして、各々慣れた手つきでおにぎりを作っていく。

梅干し。

おかか。

昆布。

ツナマヨ。

具材を入れて形を整える。

白穀を包み込むように握る。

そして、のりを巻いて皿に並べていく。

丸いもの。

三角のもの。

少し大きいもの。

具材がわかるように置き方も少しずつ分けた。

ルイは皿に並んでいくおにぎりを興味深そうに見ている。

白穀を炊くところまでは見た。

だが、それを握って形にする食べ方は初めて見るらしい。

特に、白いおにぎりに巻かれている黒いものへ目が向いた。


「この黒いやつは?」


見たことのない食材を目にして聞いてくる。

智子は手を動かしながら、一つ一つ答えていく。

のり。

中に入っている具材。

梅干し。

おかか。

昆布。

ツナマヨ。

それぞれ説明しながらも、どこまで伝わっているのかはわからなかった。

ルイは頷きながら、皿に並ぶおにぎりを見ている。

智子は最後に一つ握り終え、手を拭いた。

そして、ルイの方を見る。


「………えっと、手づかみで食べるんですけど……大丈夫ですか?」


智子がルイに確認する。

こちらでは、身分のある人が手づかみで食べることをどう思うのかわからない。

おにぎりは手で持って食べる。

けれど、それをそのまま勧めていいのか少し迷った。

ルイは目をパチパチさせて笑う。


「大丈夫ですよ」


智子は少し安心する。


「……おにぎりって言います。中に先ほどの具材が入っているので、適当に手に取って食べてください」


美里も横から声をかける。


「さっき食べたおかずたちに合いますよ」


「それは楽しみだ」


ルイは皿に並ぶおにぎりを見て、楽しそうに笑った。

つむぎと大和は隅っこから、その様子をじっと見ている。

食べていい合図を待っている顔だった。

大地は2人を見て、少し肩を揺らして笑う。

炊きたての白穀。

タコ料理。

おにぎり。

休診日の昼ごはんは、思っていたよりずっと賑やかなものになっていた。




医療ギルドでいろいろと打ち合わせを終えて、真人たちが家へと向かう。

真人、志帆、直樹、陽菜、しおりの5人は、ギルドを出て歩いていた。

訪問診療の話。

口腔機能訓練の話。

学校での口腔ケアの話。

そして、劇の話。

思っていた以上に、話すことは多かった。

真人は少し肩を回しながら言う。


「いやぁ……説明大変だったねぇ」


志帆は隣を歩きながら答える。


「でも、道は開けたんちゃう?」


「そうですね」


直樹も頷く。

訪問診療については、まだ始まったばかりだった。

けれど、医療ギルド側は前向きだった。

元職員に協力してもらうという話も出た。

施設のことも聞けた。

何もわからなかったところから考えれば、大きな一歩だった。

しおりは少し考えながら口を開く。


「その代わり説明するための事前準備が大変かもですね」


陽菜も頷く。


「そこはみんなと協力して乗り切りましょう」


「そうですね……。しかし……」


直樹がそこで言葉を切った。

4人が直樹を見る。


「しかし?」


直樹は少しだけ遠くを見るような顔をした。


「芝居ですか………」


「あ………。う~~~ん……」


4人の声が揃う。

ギルドで話に出てきた劇。

学校の子どもたちに口腔ケアを伝えるための方法。

言葉だけで説明するより、劇にすればわかりやすい。

案としては悪くない。

だが、劇未経験の職員ばかりだった。

誰が脚本を考えるのか。

誰が演じるのか。

どんな内容にするのか。

考えることは多い。


「新喜劇はよく見てたんやけどなぁ……」


志帆がぽつりと言う。

真人は苦笑する。

見るのとやるのは違う。

それは全員がわかっていた。


「ま、まぁ……とりあえず家に戻ってみんなと相談しよう。おなかもすいたしね」


真人がそう言うと同時にお腹が鳴る。

音が聞こえた瞬間、陽菜が恥ずかしそうに顔を赤くする。

しおりは少し口元を押さえた。

直樹は軽く目をそらす。

志帆は真人を見る。

真人は何事もなかったように笑った。


「さ、急いで家に戻ろう。きっと智子さんたちがお昼ご飯を準備して待ってるよ」


5人は頷いて帰路を急ぐ。

医療ギルドでの話は重かった。

だが、家に戻れば昼ごはんがある。

白穀がある。

みんながいる。

5人は家に商会の会長がいることをまだ知らない。


【夏期休診のお知らせ】

ほほえみデンタルクリニックは、誠に勝手ながら8月9日から8月16日まで夏期休診とさせていただきます。

診療再開は8月18日を予定しております。

ご不便をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。