06.今後の経営相談
真人、志帆、直樹、陽菜、しおりの5人は医療ギルドに来ていた。
陽菜としおりは初めてギルドに来る。
建物の前で足を止め、重厚な石造りの建物を見上げる。
しっかりとした造りの壁。
高くそびえる建物。
ほほえみデンタルとはまったく違う空気があった。
陽菜としおりは建物を見上げたまま、思わず口を開ける。
「なんていうか……」
「国会議事堂みたいですね」
しおりが重厚な石造りの建物を見て感想を呟く。
真人はその反応に笑った。
「初めて見るとそういう感想になるよね」
「あたしもそう思ったから」
志帆も頷く。
直樹は2人の横で建物を見る。
「医療、商業、冒険者ギルドの本部があるみたいですよ」
直樹が付け加える。
しおりは建物を見上げながら声を漏らした。
「へぇ~~~~~」
直樹は続ける。
「それぞれに関係するお店とかを出店する場合の許可を出すところみたいです。……まぁ、商業ギルドの場合は商談場としても提供しているみたいですが」
「なるほど……」
陽菜は頷く。
初めて見る建物。
初めて聞く仕組み。
医療ギルド。
商業ギルド。
冒険者ギルド。
それぞれに役割があるらしい。
真人たちは驚く2人を引き連れて、医療ギルドの本部へと足を運ぶ。
「お、インチョーたち。どうした?」
中に入ると、サムが真人たちに気づいて声をかけてきた。
真人は軽く頭を下げる。
「今日は休診なんで……」
「そうか。また歯の掃除たのむよ」
サムは笑いながら真人の肩を叩く。
真人も笑う。
サムは5人を見回してから、少し真面目な顔になる。
「で、今日はどうした?」
真人はサムを見る。
「今日は、ちょっとサムさんに今後の経営について相談が……」
サムはすぐに頷いた。
「応接室に行こうか」
サムは真人たちを応接室へ案内する。
その途中で、医療ギルドの職員も数人連れていく。
応接室に入ると、真人たちは席についた。
サムも向かい側に座る。
職員たちも同席した。
少し落ち着いた空気の中、サムが神妙な顔で口を開く。
「経営って……やばいのか?」
志帆は少しだけ苦笑する。
「いや、予約の患者さんはなんか色々口コミで少しずつ広がってきたのか……すこ~~し増えました」
「でも、厳しいんだな?」
5人は頷く。
予約の患者は少し増えた。
だが、まだ安定しているとは言えない。
歯科というものを知らない人たちに、いきなり治療を受けてもらうのは難しい。
痛みが出てから来る人はいる。
けれど、口腔ケアという考え方まではなかなか伝わりにくい。
真人は少し考えながら口を開いた。
「……なにかできることがないかって、みんなと話し合った結果……」
直樹が続ける。
「学校に通う子どもたちに口腔ケアを教えよう、となりました」
陽菜も頷く。
「子どものうちから口腔ケアをすることは将来の歯の健康に直結するので……」
志帆は淡々と補足する。
「……学校健診……とまでは言わないけど、まぁ歯医者さんではこういうことができるよって紹介できれば……」
しおりも続いた。
「あと、まぁその訪問診療とか……」
サムは5人の話を真剣に聞いていた。
医療ギルドでできる限りの協力はしている。
口腔ケアという新しい分野をいろんな人に教えてはいる。
だが、ピンと来ている人は少ない。
歯が痛くなったらどうするのか。
歯が抜けたらどうするのか。
そこまでは伝わっても、痛くなる前にケアをするという考え方はまだ馴染みが薄い。
サムは腕を組む。
「ムムム……」
応接室に重い沈黙が落ちる。
真人たちもそれぞれ考え込んだ。
その沈黙を破るかのように、ギルが口を開いた。
「……学校の子どもたちに、口腔ケアの演劇を見せればいいのでは?」
真人が顔を上げる。
「演劇……」
サムも目を丸くしたあと、すぐに頷く。
「たしかに、劇にしたら子どもたちにも伝わるかもしれない」
マイクも続く。
「歯医者さんではこういうことをするよって。最後を締めればいい」
志帆は少し考える。
「演劇かぁ……」
サムは真人たちを見る。
「マリアには俺から話をしておけば早いだろう。どうだ?」
直樹は小さく呟く。
「………劇………」
サムたちは真人たちの方を見る。
真人たちは腕を組み、それぞれに考え込んでいた。
「劇……」
「う~~ん」
陽菜もしおりも難しい顔をしている。
サムは首を傾げた。
「どうした?」
しおりは少し困ったように笑う。
「劇かぁ……」
陽菜も唸る。
「う~~~~ん。……いや、ミュージカルとか見るのは好きだけど……自分がかぁ……」
サムは不思議そうに真人たちを見る。
「劇の経験がないのか?」
真人は頬をかき、笑いながら答えた。
「ははは……」




